四連休九州の旅 ④野母商船「太古」
長崎を離れる日がやってきました。
まずは昨日と同じ長崎港大波止ターミナルへ。
乗船開始まで時間があったので、改めて護衛艦を撮影。
何回見てもかっけえ。また備讃瀬戸も通ってね。
ほどなく乗船が始まりました。これから乗るのはこちら。
九州商船のジェットフォイル「ぺがさす2」。型式名はボーイング929だしジェットエンジンで動くし座席にはシートベルトがあるので飛行機ではないかと思います。
ちなみにかつては「ゆにこん」という名で青森と函館を結んでいたそうです。今はなき東日本フェリーの貴重な生き証人だとか。
この船には予約確定後に自分で座席を指定できるサービスがありました。これを使わない手はない。
かぶりつき席確保です。思ったより窓が高くて見づらいですが、前が見えることに変わりはありません。福江港まで楽しむことにしましょう。
定刻の7時40分に長崎港の桟橋をゆっくりと離れた「ぺがさす2」は、方向転換を終えるとどんどん速度を上げ、長崎湾の中で早くも浮上航行に達したようです。長崎湾南岸の道路を走る自動車をゴボウ抜きにし、湾口の伊王島灯台を離岸後13分で通過しました。車だと長崎市中心部から伊王島に入るだけで40~50分かかるらしいんですが。
(湾口の女神大橋)
(伊王島灯台)
長崎湾を抜け出すと針路を西へ取り、五島列島へ向けて驀進。ですが、船内は音も揺れも大人しく、新幹線に乗っているときと大差ありません。目を横にやると、海面が普段の2倍ぐらいの速さで流れていきます。いやあ楽しい。
地図上はほぼ一直線に見える長崎~福江ですが、「ぺがさす2」は途中で小刻みに針路を変えます。波の高いところを避けるためとか、そういう感じですかね。
普通の船は舵を切るとカーブの外側に船体が傾くところ、ジェットフォイルはカーブの内側に向かって傾きます。やっぱ飛行機だよこれ。
※写真はいずれも福江港到着前に撮影しました。
しかし、この快適なアトラクションの前面展望を楽しめる席に座っている乗客のうち、前を向いているのは自分と斜め後ろの老紳士のみ。ほとんどの人は寝ていて、起きている人も本を読んだりスマホを触ったり。余所者からしたらなんともったいないと思ってしまうんだが、慣れている人からしたら特に気にするものではないのかも。毎日瀬戸大橋渡ってるマリンライナーユーザー的な。
小柄で機動性が高いためか、「ぺがさす2」は港に着く直前まで高速航行を続けます。不意に速度が落ちると1時間25分の航海は幕切れを迎え、五島列島の福江港に到着しました。
小腹が空いたので、少し早いですがターミナルのレストランで食事にします。
美味い。
前回の五島列島訪問時に五島うどんを食べないという失態を演じたのですが、今回は何とか挽回できました。
うどんはいいとして、今日のうちに五島からどうやって帰るのか。答えがこちら。
博多と五島列島の各島を結ぶ中距離フェリー、野母商船の「太古」です。この航路は「太古」一隻が就航しています。前夜23時50分に博多を発って宇久島、奈津島、中通島、奈留島に寄港して8時に福江港に到着すると、すぐさま折り返し準備を整えます。
10時10分。定刻に福江港を出港。結構アグレッシブな離岸・増速です。
前回の五島訪問時には「次は五島うどんを食べよう」と決意してそれは達成できたのですが、今回は前回と違い散策すら出来なかった(前回は福江市内をちょっと歩いた)ので、これはこれで心残りです。次の訪問ではちゃんと泊まって観光したいところ。
この先「太古」は中通島、小値賀島、宇久島と寄港し、博多港の到着は17時50分。ジェットフォイル+かもめや飛行機なら当然もっと早く戻れるのですが、「太古」ならではの良さももちろんあります。その最たるものがこちら。
なんと船首近くの展望ラウンジから外に出られます。不定期航路のクルーズ客船はいざ知らず、定期航路でこのタイプは非常に珍しいのではないでしょうか。
しかも展望デッキに出られるのは上り便全行程と下り便の21時45分から23時30分の間のみ。下り便では航海中まず出られません。上り便だからこそ満喫できる光景と言えるでしょう。
広い海面を一直線に進む長崎~五島航路と違い、「太古」は島の間を縫うように進みます。
いやあの、真っ正面、島なんですけど。
進行方向左前方に細い水路が見えなくもないですが、どうやらあそこを通るらしいです。
近い近い近い。
そして分かれ道。ジャングルクルーズのアトラクションじゃあるまいし。
てかどっちも狭くないですかね。
若干広そうな右側に船首を向けました。この時点ではやや速力を落としています。
いやだから正面島だって。狭いうえにすんごい曲がってるね。
陸地が近いんだよなあ。感心を通り越してハラハラするレベル。でも、もちろん問題なく通過しました。しばらく乗ってなかったので感覚忘れてたんですが、このクラスの船は結構機動力高いですよね。
見えてきました。「太古」上り便のハイライト、若松大橋です。美しいですね。
先ほど左に分かれた水道と合流すると
ここからぐぐっと右に舵を取って
若松大橋をくぐります。ここを抜けると多少海面が広くなり、水道の出口が迫ります。
若松瀬戸を抜けた「太古」は再び速力を上げ、中通島の西岸を北へ進みます。やがて最初の寄港地、青方が近づいてきました。
石油備蓄基地の横をかすめ、青方港に到着です。
20分の寄港を終えて出港。
南北に長い中通島の西岸をこの先もひたすら北上します。その途中で
???????
断崖絶壁の景色の中で出てくるには不釣り合いすぎんか??????
後で調べたら廃棄物処理施設らしい。それならこの地にあるのも納得。
その後は再び断崖の続く海岸に沿って北へ。ややあって次の寄港地、小値賀島が近づいてきました。これで「おぢかじま」と読むらしい。初見に厳しすぎる。
あんな狭い入り口でどう入るんだと思ってたんですが、気がついたらさらっと回り込んでました。すごい。
10分そこそこで荷役と客扱いを済ませ、出港します。
全長94mもあるとは思えないような小回り。この「太古」は見た目以上にぐりんぐりんとよく曲がります。高松港で毎日のようにドリフト着岸を繰り広げる備讃瀬戸のフェリーも大概すごいんですが、「太古」の入出港には驚かされっぱなしでした。小豆島航路や直島航路のフェリーと比べると総トン数で1.5倍以上あるはずなんですが、まったく大きさを感じさせません。
小値賀港からさらに北へ。その途上で、佐世保からやってきた九州商船「いのり」とすれ違います。
長崎航路の「万葉」といい、美しい名前です。
それから程なくして、宇久島に到着。道中で最後の寄港地です。
この港は、出口を塞ぐように前子島が鎮座しています。
(左前方、防波堤の奥が前子島)
どうするのかと思ったら
持ち前の旋回半径の小ささでかわしました。ちなみに肉眼で見るとこれの5倍は近く見えて、10倍ぐらいスリリングです。やっぱりアトラクションだね。
宇久港を出港したら、一路目的地の博多へ。
『世界の船旅』のBGMが聞こえてきそうな雄大さです。まあすぐそこに九州本土や平戸が見えてるんですけど。
本土に近づいてからもイベントがあります。それがこちらの
生月大橋(いきつきおおはし)
なんですが、なんか黒いな。
どうやら整備中のようです。巨大橋だとよくありますよね。これは完全な姿を拝むべく再訪フラグか。
相変わらず非常によく晴れていますが、生島大橋をくぐって玄界灘に入るころには、風がかなり強くなっていました。どのぐらい強いかというと、波しぶきで虹が見えるほど。
海面も波立っていたらしく「太古」も多少揺れました(※初日の東京九州フェリーと比べるとほぼ揺れてない)が、小さな船はもっと大変です。
うーわ……
唐津にほど近い呼子から、沖合の小川島に向かう「そよかぜ」です。ちっちゃいね。58総トンなので、1,598総トンの「太古」の30分の1ぐらいしかないですね。こういう小さい船が荒波に揉まれながら健気に進んでいるのを見ると応援したくなります。
そんな太古の道中ですが、橋や港や他の船以外にも見てもらいたいものがあります。
ご覧ください、この見事な露頭の数々!
植物にも土にも覆われず地層がむき出しになっていてですね、しかも水平なのもあれば斜めに傾いているのや縦にびしーっと割れているのやら途中から色が違うやつやらいろいろあってですよ、それがこう、いろんなところにずらーっと並んでいてですね
え?興味ない?まあまあそう言わずに。
人の手が及んでいないことに加えて砂浜海岸が少ないためか、このような露頭が至る所にあります。特に五島列島はどこででも露頭を拝めます。おかげで船内でゆっくりするつもりが全然ゆっくりできねえ。
私は露頭を見るのが好きなだけの一般人ですが、地学趣味をお持ちの方や露頭マニアの方がいらっしゃれば、この「太古」に乗ることを強くおすすめさせていただきます。ひょっとしたら地学界隈では有名な航路として知られているかもしれませんね。
加えて唐津の近くではこんな日本離れした光景も。
なにこれ素敵。
加部島の牧場と灯台らしい。九州本土にもこんなところがあるんですね。これは一度陸からも訪れたい。
玄界灘で強風と波しぶきを浴び続けながら走ってきた「太古」も博多湾に入り、ようやく穏やかな海面を進みます。目の前には福岡の街並みがみえてきました。
強風のため定刻より約10分遅れた18時、博多港に無事入港しました。
QUEEN BEATLEの姿も拝めました。この船にもいずれ乗りたいものです。
その後は多少手間取りながらもバスに乗り換え、博多駅で夕食にして、新幹線と特急を乗り継いで帰宅しました。
長崎を自力で訪れるのもこれで2回目(自力除くと3回目)になりましたが、まだまだ訪れないと行けない場所や乗るべき航路がいくらでもあることを実感させられます。複数回訪ねた長崎ですらこのレベルなので、他の土地は推して知るべし。
まあ、懲りずにまた来ましょう。次は五島の他に池島あたりに行ってみたいですね。瀬戸内海航路の生き証人である「びっぐあーす」「びっぐあーす2」にも乗りたいところです。
それでは四連休の旅行記は締めさせていただきます。
お付き合いくださり、ありがとうございました。