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親の認知症対策に『家族信託』が有効?メリットや手続き方法を解説!

現在、高齢化が急速に進行しています。それに伴い増えているのが、ご家族が認知症になるリスクです。将来自分の家族が認知症となってしまった場合に備えて、まず何から行うべきか不安に感じていらっしゃる方も多いでしょう。

そこで、親が認知症になった場合の財産管理や相続対策の方法の一つとして「家族信託」が注目されています。

今回はこの家族信託の仕組みやメリット、手続き方法などについてわかりやすく解説していきます。そしてこの記事を参考に家族信託への理解を深め、実際に将来起こりうるリスクに備えた家族の話し合いをするきっかけになりましたら幸いです。


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1. 家族信託とは?

家族信託とは、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などの財産管理を家族に託すことです。例えば不動産には所有権があるため、所有者以外が自由に使用したり処分したりすることはできません。しかし、家族信託のように所有権者は所有物の管理を第三者に委託するはできます。

家族信託は遺言書に比べ幅広い資産継承方法を選択できるため、相続発生の前後において財産の管理や処分がスムーズに行えます。また、親が認知症になった時でも資産凍結のリスクから守り、信託財産から介護費や生活費などの支出や処分ができます。

このような多くのメリットから、家族信託は高齢社会の近年とても注目されています。

2. 家族信託が注目されている背景

家族信託が近年注目されている理由として、日本では高齢者数の増加と平均寿命の増加が相まって認知症患者の人数が急増しているという事実が挙げられます。

2020年時点で認知症患者は約630万人いると推計されていました。このペースで人口が推移していくと、2025年には高齢者の方の5人に1人、2050年には10人に1人が認知症患者になると推計されています。

このような背景から、それに伴い起こり得る認知症による資産凍結問題に対する対策として、近年家族信託が注目されるようになりました。

3. 家族信託の仕組み

では家族信託の仕組みを詳しく見ていきましょう。
家族信託に携わる人は下記の3者に分けられます。

委託者:受託者に財産を託す人(預ける人)
受託者:託された財産の管理処分を行う人(預かる人)
受益者:託された財産から発生する利益を受け取る人(利益を受ける人)

委託者と受益者は兼任ができます。また、委託者は受託者の選任または解任の権利も有しています。

受託者は信託財産の名義を受け持つ人で財産管理の権限を有する一方で、下記の3つの義務を負わなければなりません。

善管注意義務
…信託された趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって、信託事務を履行する義務
忠実義務
…委託者のために忠実に責務を果たす義務
分別管理義務
…委託者から信託された財産と受託者自身の固有財産を完全に分離して管理しなければならない義務

4. 家族信託のメリットは?

家族信託にはどのようなメリットがあるのでしょうか?似たものに成年後見制度がありますが、違いは何なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

・認知症による資産凍結に備えることができる

先程申し上げた通り、近年高齢化の進行により認知症の患者が急増しています。口座名義人が認知症になると、口座が凍結されて預金の引き出しや解約が一切できなくなります。これは、認知症の方が詐欺や横領などの犯罪や口座の不正使用に巻き込まれるなどの事件を防ぐためです。

万が一口座が凍結されると、たとえ親子関係が書類上も明らかに分かるような場合でも一切引き出すことはできなくなります。ですが、家族信託を事前ににしておくことで、万が一親が認知症になった場合に受託者(子など)が財産管理を行うことができます。また、「万が一将来自分が認知症になった後は息子に財産管理を任せたい!」と考えている場合も、家族信託をしておくことで有効になります。

・成年後見制度より柔軟な取り決めができる

家族信託と似ている内容の制度に成年後見制度があります。ですが、この二つには大きな違いがあります。それは、成年後見制度は本人の判断能力が低下してから家庭裁判所に申し立てをしますが、家族信託は本人に判断能力があるうちに契約をすることができます。

また、成年後見制度は財産を管理する人(後見人等)を家庭裁判所が選任する可能性がありますが、一方で家族信託は本人(委託者)が財産を管理する人(受託者)を選任することができます。

そのため、家族信託では、成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができるといえます。

・二次相続対策もできる

家族信託は、遺言書としての機能も備えています。というのも、家族信託は事前に財産の移転先を細かく設定することが可能であるからです。

さらに、遺言書にはできない二次相続以降の相続についても「受益権の継承先」を指定することができます。それにより、委託者は第1受益者、第2受益者、第3受益者を指定することで、二次相続に限らず次の世代までも受益権の移転先を決定することが可能です。

このような家族信託の遺言書機能を利用することで、二次相続の対策、さらにその際の代までも相続対策もできます。

5. 家族信託の手続きの流れ

それでは、実際に家族信託を行うことにした場合のお手続きの流れについてご紹介いたします。

5-1. 家族間で内容の話し合い

まず最初に、家族間で家族信託の目的と内容を話し合い、合意を得ることから始めましょう。目的は、財産の所有者(委託者)に万が一のことがあった場合に財産管理を任せたい人(受託者)を決めます。

内容は、具体的にどの財産をどのくらい信託するかを決めます。決して全財産を信託しなければならないわけではないため、しっかりと話し合いで全員に合意が得られるような内容に決定することがとても大切です。

5-2. 信託契約書の作成

続いて、家族間の話し合いで決めた内容に基づいて信託契約書を作成します。契約書の様式は法律に定められているものではありませんので、話し合いで出た細かい要点なども記載をして内容にあいまいな表現や不備がないようにしましょう。

5-3. 公証役場で公正証書にする

契約書が作成できましたら、契約書を公証役場で公正証書にしましょう。公正証書化することは必須ではありませんが、後になってから当事者の誰かが「そんな契約書は作成していない!」と言い出した場合に、公正証書化されていない契約書であると証拠として不十分な可能性が考えられます。

しかし公正証書はそのような異論は認められません。そのためトラブル防止のためにも、作成した契約書を公的に証明してもらうことをおすすめします。

5-4. 信託財産名義を変更する

契約書の内容に基づいて、信託財産の名義を受託者に移します。また、不動産などの登記が必要な財産の名義を変更する場合は、信託登記を法務局に申請する必要があります。

重要なのは名義変更に変わりはありませんが、この場合は信託登記であるため、委託者の権利が失われるというわけではありませんので安心してください。

5-5. 財産管理のための銀行口座開設

信託財産に現預金がある場合は、財産管理のための専用銀行口座を開設しなければなりません。信託財産は受託者がその財産をもらったわけではなく管理をしている状態ですので、ここでは必ずお金を管理するための新しく専用口座を開設して、そこに信託財産を入金して受託者が管理を行うようにしましょう。

6. 家族信託に必要な書類

家族信託に必要な書類は、対象となる財産の価格や契約内容によって異なりますが、以下の書類が挙げられます。

  • 本人確認資料

  • 受託者と受益者の印鑑証明書

  • 受託者と受益者の実印

  • 信託する財産に関する資料(不動産の場合には登記事項証明書・固定資産税評価証明書、預貯金の場合には通帳など)

  • 戸籍謄本

7. 家族信託に必要な費用

家族信託を利用する場合の費用は、対象となる財産の価格や契約内容によって変動するため一概には言えませんが、以下の費用がかかります。

  • 公正証書作成の手数料

  • (不動産を信託する場合)司法書士への登記手続報酬

  • (不動産を信託する場合)登録免許税

  • 信託口座の開設費用

  • 専門家に依頼した際のコンサルティング報酬

まとめ

いかがでしたでしょうか。これから高齢化がさらに進行すると、家族信託の需要がさらに高まっていくことが考えられます。

家族信託は既に認知症になってしまっている場合は契約ができません。そのため、将来起こりうるリスクに備えて、早いうちから対策をとることが重要です。