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「季刊iichiko」のこと

先日、うだうだと「新聞」というものについて書きつけた。

「新聞を取り続けたい私」と「新聞を読まない私」の間で揺れ動く心を綴ったものだったが、今日久方ぶりに新聞を開いて、「あぁ、やっぱり購読はやめられないな」と思うものに出会った。

朝、出掛けに気が向いて、カバンの中に家から持ってきた日経新聞を忍ばせていた。以前は欠かさず持ってきていたのだが、気づけばいつの間にか新聞受けから取り出して、下駄箱の上に置くだけになっていたところ、不思議と気が向いてしばらくぶりに持ってきたものだ。

まず、一面のサンヤツ広告(最下部にある、出版物の広告)を見てややたじろぐ。…自分が制作に携わっている雑誌の広告が掲載されている。今日の新聞に載っているなんてことは露ほども知らなかったので、本当に偶然のこと。いきなり頭が仕事モードに切り替わりかけると同時に、何かしら因縁じみたものを感じた瞬間だった。

気持ちを落ち着けてページを繰っていくと、三面に掲載されている広告に目が吸い寄せられた。そこには「季刊iichiko」の広告があったのだ。

「季刊iichiko」をご存知だろうか。その名前からお分かりの通り、あの「下町のナポレオン」と銘打たれた麦焼酎である「いいちこ」を製造する三和酒類株式会社が発刊している、「文化学誌」だ。

酒類を製造・販売する民間企業が文化活動に携わるというと、サントリーによるサントリーホールやサントリー美術館などがすぐに思いつくが、三和酒類は季刊誌という形をとっている。
以前、何かのきっかけでこの雑誌のことを知り、数号買い求めたことがあった。実のところ、あまりに専門的すぎてなかなか歯が立たず、継続して購読するには至らなかったのだが、今日、この広告をもって思わぬ形で「再会」したことになる。やはり、当初の予感どおり、今日の新聞とは不思議な縁があったわけだ。こうした思わぬ出会いが起こってしまうから、「やはり新聞はやめられない」となる。

さて、肝心の広告の内容は…というと、公式サイトに紹介でもないかしらと思ったが残念ながらなかった。全文を掲載するのは何かとよろしくないと思われるので、初めと終わりだけ抜書きしておく。たぶん、響く人にはここだけで響くはず。

その深みへすすんでいく。
 「精神」「民族」「環境」「場所」。「季刊iichiko」はつねにこの4つをキーワードに、現代産業社会の中で見えなくなりつつある固有の文化(そこに生きる人々をとりまく自然や精神)を、もう一度掘り起こし、見直し「産業社会とのバランスのある関りを考えていく」ことをつづけている文化学誌です。
(中略)
 文化なくして科学も技術もありえません。そしてまた文化なくして経済も政治もありえません。今回の特集は文化資本の視点に立って科学技術を再考し、進むべき道を示した、これからの思考・行為のテキストとなる一冊です。爽やかで深い「いいちこ」など飲みながら、ぜひ読んでみてください。

これが、上品で奥ゆかしい雰囲気を漂わせる明朝体で綴られている。あくまで主張は控えめ。「『いいちこ』を飲みながら」ではなく「『いいちこ』"など"飲みながら」だし、「読んでください」ではなく「ぜひ読んでみてください」なのだ。

先に貼ったリンクからバックナンバーの目次が見られるのだが、やはり興味をかきたてられる論考が多い。この度の「偶然の再会」を機に、また購読してみようかと思う次第だ。

ちなみに、先ほどから「季刊iichiko」と書いているが、私が持っているのは正確には「LIBRARY iichiko」。

「季刊iichiko」は、弊社が文化広報誌として発行させていただいており、 公立図書館および大学図書館に、寄贈させていただいていることがございます。 (あいにく販売は、いたしておりません。)
定期購読ならびにバックナンバーについては、市販本として 「LIBRARY iichiko」(表装は若干異なりますが、内容は全く同じもの)がございます。

(公式サイトの「よくあるご質問」より)

こういうわけ。Amazonで「LIBRARY iichiko」と検索するとヒットするので、ご興味のある方はぜひ。

―ああ、気づけば三和酒類の人のようになってしまっている。

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秋本 佑(Tasuku Akimoto)
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