図書館に行った話

 日々をなんとなく過ごしているだけでも、投稿したいことは何かしら見つかるものだ。たとえ家から一歩も出なかったとしても、頭の中で考えていることはたくさんある。ただどうにも、それを頭の中から紙なり画面なりに移す気持ちの余裕がなく、11月になってしまった。
 このところようやく少し身の回りが落ち着いたので、今回、こうやって投稿できている。
 今日は、図書館に行った話。

* * *

 先日、数年ぶりに図書館に足を運んだ。友人が行くというので、せっかくならと同行したのだった。
 もう長いこと、「読みたい本は買う」生活をしてきた。本を買うために仕事をしてきたと言っても過言ではないかもしれない。図書館に縁がなかったのはそのためだ。そもそもこのところの忙しさで、まともに本自体読めていなかったということも一因ではある。
 久しぶりの図書館は、思った以上に静かだった。図書館とは言え公共の場所なのでもう少し人の話し声などがするかと思ったが、静まりかえっている。
 この静けさは、学生時代、授業と授業の合間によくキャンパス内の図書館に行き、最上階の一番奥の席でぼんやりしていたことを思い出させた。もうあれから10年以上が経ったというのがにわかには信じがたい。

 この10年、毎日をやり過ごすのが精一杯で、特に何か成長した実感もなければ、いわゆる「ライフステージ」の変化もない。身の回りに変化がないので年齢を重ねている自覚もなく、気づけば「気持ちだけは20歳代の、もうすぐ35歳の独身男」になってしまった。「いつまでも若々しい」と言えば聞こえはいいが、要するに「いつまでも大人になれない子ども」だ。

 そんなことを思いながら図書館内を回遊していると、自分の仕事に関係する分野を扱う雑誌が目に入った。「せっかく気分転換がてら図書館まで来たのに、結局目を引かれるのは仕事関係のものか…」と自分にややうんざりしながらも、手に取ってみる。すると、よく見知った人の名前が目次にあった。仕事でお世話になっている人だ。「これまでの職業人生で大切にしてきたこと」といったテーマでの寄稿らしい。
 閲覧席に座って読んでみると、とても良い内容だった。ご本人がお若かった頃に没頭した仕事からベテランとして取り組んだ仕事までを振り返りながら、「物事の本質」を見極めようとしてきた姿勢について書かれていた。
 「あぁ、自分は目の前のことをこなすだけで、本質を見極められていないな」と反省する一方で、「少しでもこの人に近づけるよう、頑張ろう」という気持ちにもなった。思えば、ご本人とは何度も話したことはあったが、こうした形で文章を読むのは初めてのこと。真摯なお人柄が伝わってくる文章だった。

 「改めて、文章というのは面白くて素敵なものだなぁ」などと考えていたら、用事を終えた友人がこちらにやってきた。ーーそうだ、そういえばこの友人とも文章を通じて知り合い、仲良くなったのだった。
 彼の文章に惹かれ、勇気を出して連絡してみた日のことを思い出しながら、図書館を出た。今日も二人でおいしくお酒が飲めそうだ。

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秋本 佑(Tasuku Akimoto)
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