見出し画像

What are you like?/まなホム

「キーモットさんって、どんな人ですか?」

いらっしゃいませ。
え、ホームズさんですか?
うーん、そうだなぁ。真面目な方ですよね。
え?あぁ、性格がじゃなくてですけど。自分の信念にって意味で。
後、取捨選択がはっきりしてる方っていうイメージもありますね。
男女関係なく物事をはっきり言うのは善し悪しがあるっていう人もいますけど俺は好ましいと思っていますよ。
困ってる人がいれば手を差し伸べて、あぁ、そういえば俺もこの街に来た日に世話になったんだけどあの時はずいぶん助かったなぁ。
多分、パーソナルスペースがめちゃくちゃ狭くて受け入れる器がすごく大きい人ってイメージもってる人、多いと思いますよ。

パン屋のキッチンで生地をこねながら光芝さんは私の質問に答えてくれる。人の口から聞くモト君の印象は自分が知っているモノとそうでないものが入り混じっていてどこかくすぐったい。言葉の端々に相槌を返したくて仕方ないけれど、自分の今の姿を思い出して踏みとどまった。
「いいことばかりですね。他の方から聞いてたイメージと違うなぁ」
勿論光芝さんの言ってることは本当で、口が悪いという最大の欠点を観なければという話ではあるんだけど。暗にそのことを含めて言葉を返せば光芝さんは苦笑いを漏らして焼きたてのパンとカフェオレを差し出してくれた。

他の人が言う事も大体想像がつきますよ。
でも俺は俺目線で見るあの人の事、結構好きなんですよね。
お仕事をしてる姿とか、直接見ることはあまりないですけど100件の検挙とか並大抵の努力で出来る事じゃないですし。
最近なんて彼女のために手作りでケーキを作ったりして、そんな姿見てると思わず応援したくなってしまうんですよ。

眉を下げて困ったように笑う光芝さんにありがとうございます、と告げて店を出る。私の背を追うように聞こえた言葉にばれてたか、なんて苦笑いを漏らして。

「またどうぞ。ケーキ喜んでくれたってすごい喜んでましたよ。今度はお二人で来てくださいね。」

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

「キーモットさんって、どんな人ですか?」

それ、僕に聞くんですか?
うーんそうだなぁ…北仲間、それから子供みたいな人、ですかね。
救急隊にキーモットさんの恋人がいるんですけどこの間ちょうど僕含め3人でいる時にキーモットさんが拗ねちゃって子供みたいな拗ね方するんだなってびっくりしたんですよ。
まぁカップルの喧嘩に巻き込まれたくなかったんでイチャイチャしないでくださいって言ったんですけど、あとで彼女さんに謝られました。
でも、後々思ったんですけど2人とも仕事中とかオフで遊んでるときと声のトーンっていうんですか?話し方が全然違ってちょっと面白いなって。
救急隊ってそれこそ他にも恋人いる人が何人かいるし、それこそ街に行けばそういう人って沢山いるんでるけど仕事バリバリ!!な人ほどギャップがすごいですよね。キーモットさんがああなるのなんか意外でした。

病院の前のベンチで座って休憩していたマグナム先輩はカルテを書きながら私の質問に答えてくれる。その中につい最近あった出来事が含まれていて、思わず謝りそうになってしまった。暫く何も言えずにいたらあぁ、とマグナム先輩が声を漏らしてなんだろうとそちらを向けばスマホを見ていた。どうやら何か連絡があったらしい。

市民の方はあまり知らないかもですけど、仕事中のキーモットさんかっこいいですよ。
てきぱき指示出すしギャングとの抗争中も市民を巻き込まないように駆けまわったり。
ノンデリだから余計なことすぐいいますけど、そんなの気にならないくらい頼りになる人だと僕は思ってます。

「なんだか、意外ですね。」

そうですよね。そうだと思います。
僕ら救急隊より警察って市民の方と仕事中に会う機会ってそうそうありませんし、何なら注意されるって嫌がる人もたくさんいます。
でもあの人たちがいて、守ってくれてるの忘れてほしくないって僕は思ってますよ。

少し寂しそうな横顔をしたマグナム先輩に礼を告げて立ち上がる。そう言えばとマグナム先輩な言ったのに振り返ればそこにはいたずらっぽく笑う少年の顔があった。

「彼氏のかっこいいところ知りたいなら、警察に聞いた方がいいですよ。愛未さん」

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

「キーモットさんってどういう人なんですか?」
え?何?あの人また何かやらかした感じ?
ごめんね、俺が代わりに謝ったとこで何だけど…あれ?違う?えっと、なんだっけ?
あぁ、ホームズ先輩についてだっけ?
うーん、なんていうんだろ、住民の人はあんまり俺達と関わることないし、ホームズ先輩口悪い上態度も悪いからあんまりいいイメージ無さそうなんだよねぇ
あんなだけどすげー先輩なんだよねぇ。
書類仕事は苦手だけど、現場での指示能力とかハンドガンだけで現場制圧したりとかするから俺びっくりしちゃってさぁ。
ん?意外?まー、何も知らない人たちから見れば無茶振りするだけの人に見えるよね~
分かるわかる、めっちゃわかる。俺もなんだこの先輩って思ったもん。
でもさぁ、すげー地道な努力できちゃう人なんだよねぇ。普通の人だったらくじけちゃいそうなことでもできちゃう人でさぁ…
俺も頑張らないとなって思うんだよ。だからさ、まぁあんな人だけど嫌いにならないでやってよ。

「嫌いにはならないですけど」
最初の話かけ方が悪かったのか、苦情だと思われてしまったらしい。改めてどういった人なのか聞きたかっただけだと言うと胸をほっとなでおろしていた。煉さんのパトカーはモト君のとは違う、確かコメットと呼ばれていたもので煉さん自身は最近レースでも時折見かけるしモト君のことも含め今後話す機会が多そうだななんてこっそり思った。私がパトカーを見ているのに気づいたらしい煉さんがそういえばと口を開く。

俺さ、直属の上司っていうとレム先輩なんだけど、ホームズ先輩も実は教えるのめっちゃうまいんだよね。
こいつ、コメットって言ってめちゃくちゃ運転しにくいんだけど、ホームズ先輩のアドバイスで随分運転しやすくなったからさ。
最近は彼女さんと北でゆっくりしてるみたいだけど、ほんとあの人の事ちゃんとみて、好きになってくれる人がいてよかったよ。

「…ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる。煉さんは通報が入ったようで慌ててパトカーに乗って去っていった。さて、次はだれに聞こうかな

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「キーモットさんってどんな人ですか?」

キーモットさん、ですか?それ、つばめに聞いてます…?
うーん、そうだなぁ。一言で言っちゃえばめんどくさい、ですかね。
つばめのか、か、彼氏のノビー君の同僚の愛未ちゃんの彼で、ノビー君と愛未ちゃんが来るずっと前につばめはこの街に来て、キーモットさんとはまぁその頃からの知り合いではあるんですけど、とりあえずデリカシーをお母さんのおなかに置いてきたんじゃんじゃないですかねっていうくらい失礼な人で、セクハラ魔です。
女の子とみれば誰にでも声かけて事件に巻き込まれてるイメージがあります。
まぁ警察の仕事はやってはいるんでしょうね…この間速度制限で止められたし…
切符3回切られちゃうと免停になっちゃうんで気を付けないといけないんだけどそう言うタイミングにかぎって見つけてくるっていうか、そういう意味で仕事はできると思う。
気に食わないけど。

「仲は良く無い感じですか?」
オーダーしたものを作っている間、つばめちゃんは少し不機嫌そうにぼそぼそ言葉を紡ぐ。なんで不機嫌なのかちょっとわからないけれど少し待っていればお待たせしました、と奥からつばめちゃんが出てきてトレイにクリームソーダ、オムライス、それにカップケーキが並べられる。出されたものを自分の荷物に移していたら請求書が提示されたので支払った。それと同時に大きなため息が聞こえて顔を上げる。どうしたのかと視線を上げれば嫌なものを見るような視線で此方を見ていた。

いいですか?
あんなですけどキーモットさんには恋人がいます。
だから変なちょっかいかけようとしてるならやめてください。
正直キーモットさんがどうなろうが知ったことじゃないですけど、愛未ちゃんが悲しい思いをするのは許せません。
あんなクズでクソでどうしようもない奴でも、大切な友達の…、っていうかもしかしてこういうのって逆に良くない?!うぅ、一応愛未ちゃんにメールしとかなきゃ…

そう言ってスマホを取り出したつばめちゃんが止める暇なくメッセージを送る。あ、と思ったときにはポケットにしまったままにしていたスマホにメッセージの受信通知が入っていた。あまりにもタイミングがよかったのもあってつばめちゃんの視線が私に向く。
ポケットからスマホを取り出して付けたままだったサングラスを外せばつばめちゃんが顔を真っ赤にして声にならない悲鳴を上げた。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

「キーモットさんのことってどう思いますか?」

え?何?俺に聞いてる?
どうって言ってもなぁ、めんどくせーとか厄介だなぁとかそんな感じ。
なんでそんなところにってのもよくあるから出来たらあんまりかかわりあいになりたくないなぁって。
良い奴なんじゃないの?俺の事信用して、あんなバカみたいな約束を律儀に守って・
舐めてんのかよって思ったことも多かったけど、あいつなりにまっすぐ向かい合ってくれようとしてるの別に嫌ではないし。
俺がこんな仕事して無くて、あっちも他の仕事とかしてたら普通に飲みに行ってたりもしてたんじゃないかって思う

「やっぱり、犯罪してるとあの人って面倒だなって思うんですね。」
ぽそりといえばギラリとした視線が私を睨みつけすぐにお茶らけた用に笑い、なぁんだ知ってたのなんて笑ってポケットに手を入れようとした瞬間、カウンターにいたすずめちゃんとジャクリンがこちらをじいとみていた。私の視線が自分に向いていないのを気づいたらしい君トスさんもつられてスズメちゃんを見て小さくため息を吐いた。ポケットに入れようとしていた手をテーブルの上で組んでへらりと笑って見せる。

何もしないよ。何もね。すずめちゃんの前で犯罪したくないし。
あぁ、それで、キーモットね。
またなんであいつの事なんか聞くんだか。記事にでもすんの?物好きだなぁ。
あーっと、…まぁね、俺らからしたら警察何か基本全部面倒でしかないよ。
んで、キーモットとレムは相手するのも面倒。だってさぁ、キーモットは丸腰で前出て話しよう!なんて言ってくるしレムは特攻してくるし。キーモットが撃たれれば銃撃戦が始まって厄介なレムが出てくるんだぜ?
自分を犠牲にするのに抵抗ないくせに射撃の腕も運転スキルもある、その上レムはヘリの運転もできるだろ。
どっちにしても相手なんかしたくないね。これで満足?

こくりと頷けばため息を吐いて猫カフェから出ていった。途中すずめちゃんを見てけれど何も言えずに出ていった背中を見送る。犯罪者に話しかけたのは失敗だったかもしれない。緊張していたせいか握りっぱなしになっていた手のひらを見て小さく息を吐いた。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

「キーモットさんの事、どう思います?」

あぁ、君かぁ。聞いてるよォ?
ホームズ先輩の事嗅ぎまわってる女がいるって。
何が目的?僕らもねぇ、大事な先輩の情報ペラペラしゃべるほど暇じゃないんだよね。
君に喋っちゃった煉君には注意したけどそもそも禍根絶たないと意味ないなって思ってたからさぁ。
そっちから来てくれてありがたかったよ。
んで?言えないの?ん?最近色々事件会ったの知らない?
おかげでこっちもぴりぴりしてるんだよね。
目的と、そもそもその変装も取って、取らないんなら公務執行妨害も、…って、え?あれ?
君、救急隊の…?

「すみません、愛未です。…キーモットさんにはいろいろお世話になってます」
帽子とサングラスを外す。帽子の中にしまい込んでいたポニーテールとマスクをしたままとはいえ顔が見えるようになって安心したのかレムさんの体から力が抜けたのが分かった。レムさんのステッカーが貼られたパトカーにお邪魔して猫カフェで買ったハンバーグとクリームソーダをお詫びにと渡す。運転席でぐたりと座る小さな姿に申し訳なさが募った。

つまり何?ホームズ先輩がどんなふうに思われてるか気になって聞きまわってたってこと…?
変装してたのは彼女だってばれると聞きたいことも聞けなさそうだから、と…僕ピリピリしてたのバカみたいじゃん…あーもー…
はいはい、ホームズ先輩ね…でももう煉君から聞いたんじゃないの?
横暴でちゃらんぽらんで女の人大好きで犯罪者の誘いにもひょいひょい乗っちゃう人。
バカだよねぇ…もうちょっと考えればいいのにさ。事件起きてる現場にも手ぶらで行こうとするし。
先に行った先輩が現場で倒れてるの結構心臓に悪いんだよね。

レム君の言葉にこくりと頷く。同じ公務員同士だからダウン通知とか見えてしまう分、すぐに現場に駆け付けられなくてやきもきしたのは一度や二度の騒ぎではない。
「キーモットさんと話してると、いつも皆さんの事褒めるのに、自分の話ってあんまりしてくれないんですよ。だから他の方から聞いてみようかなって。」
ポケットに入っていたキャンディを手のひらにおいてやればレム君は目をまん丸にして私を見てそして恥ずかしそうに鼻のしたを擦ってへらりと笑った。

「そりゃ、自慢の仲間だからね、僕ら!」

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

「あれ?愛未ちゃんじゃん。仕事は?」
「あ!モト君だ!もうお仕事終わってるよ~」
あれから病院に戻ってカジノまで散歩がてら歩いていたら後ろから見覚えのある
ステッカーの張られた車が近づいて、私の横に止まった。窓が開いて中からモト君が話しかけてきて足を止める。のっていいの?と問えばいいよ、と帰ってきたのでそのままお邪魔した。
「カジノでいい?」
「うん!今日ね、色んな人と話したんだ~」
「あぁ、今日事件って事件もなかったもんね。救急も暇だったんだ?」
「そうそう。だからお散歩溶かして飲食店とかもいっぱい行ったよ~」
「楽しかったんならよかった。僕も今日さぁ」
普段一人で動くことが多いんだけど、今日は何かと人と一緒にいることが多くていったい何だったんだろうなって笑うモト君の横顔に心の中でごめんって謝る。でも、モト君がどんな風に思われているのか、どれだけ大切にされているのかわかってちょっと楽しかったなんて。駐車場から二人並んでカジノに向かって歩く。モト君、自分ではよく僕嫌われてるから、なんていうけど嘘じゃない。なんて
「モト君」
「んー?って、ひぇ、な、なに?」
「んーん。何でもなーい!」
後からモト君の腕に飛びついて引っ付いたまま歩く。今日こそラッキーホイールでいいのが当たるような、そんな予感がした。

いいなと思ったら応援しよう!