ゲイと自分(1)@キプロス
旅好きということもあって海外には何度か行ったことがある。
・大学一年
ヨルダン、レバノン、パレスチナ・イスラエル(←半ば認めていない自分がいる)、そしてキプロス。
・大学二年
チュニジア、マルタ、オマーン、中国、インドネシア。
・大学三年
マルタ(2度目)、ロシア、トルコ、ベラルーシ。
その時々の自分の好みによって行く国々を選択していたわけだが、なんだか思い返すと苦いような、面白いような思い出が湧いてくる。
今回はキプロスに行った時の出来事を追憶してみることに…
……………
2017年3月13日
キプロスの東西南北をバスで駆け巡った後、日本への帰国を控えていた自分は、国際空港があるキプロス島南東に位置するラルナカにいた。
キプロスには3月7日〜3月13日と1週間滞在する予定で、北キプロス・トルコ共和国を除くキプロス全島を回り切ろうとしていた自分(バカ)がいた。実際、キプロス到着後二日目に体力ダウンして1日中ホテルで寝込んでいた。(バカ)
その1週間は、晴れの日もあれば小雨がしきりに降り続ける日もあるなど、太陽が灼熱となって照り続ける夏の地中海とは打って違い、非常に微妙な雨に悩まされる冬の地中海性気候という面倒臭い時期に逢着してしまったヨ。
13日の朝、日本へ帰国するために首都ニコシアからラルナカを目指して出発した。
帰国便はラルナカ国際空港の夕方便であったため、日中はラルナカ市内を散策することに…
事前に情報を一切手に入れていなかった自分は、市内で無料配布している各大都市の観光案内地図を入手し、そこに記載されてある名所へ行くこととした。
地図を眺めているうちに、ラルナカ市を大きく占める湖の存在に目を惹かれる。
ラルナカ塩湖(Larnaka Salt Lake)
自分の荷物を預けているホテルから6㎞くらいと表示されたので、てくてくと徒歩で歩いて行くことに。
半ばバックパッカーもどきのことを1ヶ月間やっていた自分にとってこれくらいの道のりを歩いて行くことはさほど苦じゃないと思っていた。
…しかしそれが過ち(???)だった。
…道沿いに歩き始めてから20分、後ろから一台のバンが近づいてきた。
「Yo, お兄ちゃん、どこ行くんだい。」
サングラスをかけた小太りの二十代後半と思われるお兄さんが話しかけてきた。
「ラルナカ塩湖よ」
と告げると、
「乗って行きなよ、連れて行ってあげる」
と、陽気に答えてくれた。
へへっ…さすがに怪しいゾ…とは思ったが、この先何が起こるか見届けたい若気の至りが勝っていた。
「ありがとうね〜」
と言って気軽に返事した。
一応「ラルナカ塩湖沿いにある『ハラ・スルタン・テケ・モスク』まで連れて行ってくれ」とも詳述した。
湖畔にある樹林の中で静かに佇むモスクだ。
特に行くあてもなく、純粋な興味だけが先行していた。
(実際のラルナカ塩湖)
運転中はお互いのことについて話しあった。しばらくすると湖畔沿いのモスクに到着した。
「ここがそのモスクだよ」
「なるほどね、とても助かった、ありがとうね」
そう告げて降りようとしたが、車はモスクを見事に通過してしまった。
?
何も理解できなかった。が、車は無情にも道の先を行く。
「どこまで連れて行くの」
自分は質問してみたものの、彼からの返事はごまかされ、無視された。
「車を止めろ」
強気で言ってみたら、車はようやく減速し、塩湖やモスクからはしばらくかけ離れた草原にたどり着いた。
行き止まりまで来ていた。
「何がしたいの」
薄々自分の中では気づいていたが、この結末をしっかりと見届けようと思った(錯綜)。
そうすると、彼の口から聞いたことのない意味不明な言葉が発せられた。
「ビッパ、ビッパ」
?
?
ますます意味がわからない。
さらに問い詰めていくうちに、彼は指で股間付近を指し示した。
あっ………(とっくに察したが。)
「お前とやる気はないから、モスクまで引き返せ」
脅迫気味な口調で彼にそう伝えると、彼は「わかった」とだけ返事して、来た道を引き返してくれた。
無事モスクまで到着。車から降り、ここまで連れてきてくれたことを感謝するとともに、今後一切こういうことをするのではない、と諫言した。
……………
今思い返せば案外いいやつやった。言ったことをちゃんと聞いてくれたからそんなに気分を悪くしなかった。
帰りは徒歩。バスもあったけど徒歩で帰ることにした。
今日の出来事をしっかりと反省し、今後について生かそうと思ったのであった、
が。
人生ってそううまくいかないものですね。
(続く)