しっとり
炭団に火をつける。香木を焚く。炭団の匂いは私にとって沈みの香り。曇り空も相まってしっとりと気持ちを落ち着けてくれる。
昨日は始発から二番目の電車に乗り、私は山に向かった。
つらいことがあっても来週山に行くためなら、と鼓舞している。私を山に連れてってくれる人がいる。本当に有難い出会いで、今年のハイライトの一つだ。
山のグループにも勢い余って登録した。まだ参加をしたことがないけれど、登山が自分にとってすごく身近な存在になってきた。人見知りだから、一人で登山するつもりでいたが、1000メートル超えるところは不安感があるので山に連れてってくれるひとは大変貴重な存在。
昨日訪れた山は、温泉地で、元・恋人と月に一度通っていた街にある。見る景色、匂い、雰囲気。彼はどうしてるのかな、、と切なさがよぎったが、山の山頂からみた景色は、元・恋人とは一度も見たことがない景色だった。波の干渉のように過去の思い出と今日の登山で打ち消せるかな。
年内は、その方に会えないと思って、ささやかなクリスマスプレゼントをお渡しした。その方は超がつく真面目な男性で、女性とデートとかプレゼントとか今まであまり関連がなかった雰囲気の方で、クリスマスプレゼントなんて、未だかつて貰ったことがない…と非常に驚いていた。その驚き方に、こちらも驚いてしまったけれど。彼は会社を辞め、これから自分一人で仕事をしようとしている。ところで何歳なのだろうか、まあいいけれど、私より10歳くらい上のような気がする。
私広報担当になりますねといって、電車をおりて解散、彼は5時間以上かけて帰路についた。
山の道具、装備も一気に増えた。母が大昔、山ガールだったためかなり装備を持っている。もう使わないからあげるよ、と母のストック、服、靴下を譲り受けた。低山登山の本も買い、登山系のアプリを導入、SNSを発信をし知らない登山愛好家たちから「いいね」とコメントをいただく。私の知らなかった世界が一気に拓けた。
知らない世界が拡がる時って本当に楽しい。
今日出かける予定もあったが、無理をせず、登山疲れをとろう、と療養することにした。ランチでパスタを作り、昨日の写真を振り返り、淹れてもらった珈琲が美味しかったことを思い出してにんまりし、お香を焚く。
登山や、香りや、ファッションの沼にずぶずぶと入ってしまい、単館の映画館に毎週通い。恋人がいた時間と、恋人がいない時間とが、鮮やかなコントラストになった。男の人に依存していないタイプだと思ってたけど、意外と、私は恋人がいるいないで、纏うもが変わるのかもしれない。
今日は一人でしっとりと珈琲をおとす。しっとり思考の土曜日。
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