スウェーデン留学記#4 Cooking nightという名の女子会
「同じ釜の飯を食う」
というのはいつの時代も世界中のどこでも人と人の距離を近づける特別な魔法だ。
ルンドでシェアハウスを始めてから数週間経った頃、せっかく各国からメンバーが集まってるのだから毎週日曜日の夜に料理会をやろうということになった。料理人は週替わりで交代。
日曜日の夕方になると、料理担当の子はいそいそと下ごしらえを始める。キッチンからいい匂いが漂ってくるとお腹を空かせた少女達は耐えきれずに部屋から出てきてキッチンに集まる。大抵は料理が出来上がる前にお酒があき、飲みながら各国のシェフたちが腕を振るった料理が出来ていく様を眺めた。
第一回目は、フランスの子たちが作ってくれた長ネギとチーズが入ったキッシュと、ニンジンのタルト。それとケークサレみたいな焼き菓子とティラミス。
第二回は私が前菜を担当してブルスケッタを作った。メインディッシュ担当のウィルマインがトマトとエビのパスタを作るというので、それに合う前菜がいいかなと思ったのだが、みんなは日本の料理を期待していたみたいだった。「今度はsushiとか作ってね!」といいつつ、それでも「美味しい!」と口々に言いながら食べてくれて嬉しかった。ウィルマインの料理は豪快で見ていて面白かった。エビもトマトもどんどんフライパンに放り込んでぐつぐつ煮込んだ。「レシピ教えて」と頼むと「これ全部混ぜるだけよ」と言って笑った。デザートはアメリがブルーベリー入りのパンケーキを焼いてくれた。第三回以降の話はまたいずれ。
こういう料理会の日はテーブルの上にキャンドルをたてたりして、「ここはスウェーデンだしね!」と、雰囲気を楽しんだ。スウェーデンは冬に夜が長く、暗い時間が多いこともあって本当にキャンドルが大好きな国だ。雑貨屋さんだけでなくスーパーなども年中キャンドルグッズが売られていて、種類も豊富だ。その中から使うシーンに分けて、色々なキャンドルを買っては試すのも私達の楽しみになっていた。
この料理会は住人の親睦を深めるのに大いに役立った。誰だって美味しいものを食べながら食卓を囲めば笑顔になる。同じものを食べてるという事実がなぜか心の距離を縮める。しかも集まったのはみんな二十代の女の子だから、話は自然と恋バナになった。
この恋バナは日本とヨーロッパではだいぶ文化が違い、非常に興味深かった。まず交際のスタートにはっきりと「付き合おう」と宣言する文化はヨーロッパにはない。付き合う前にキスしちゃうこともあるみたいだ。というかそっちの方が多いみたい。彼女ら曰く、そういうのを付き合う前に知ることもすごく重要だそうだ。それだといつから付き合っているのか、付き合うのと付き合わないの境界線がどこなのか分からなくならないのか、と尋ねると「まあなんとなくわかるし、確認することもある」とのこと。なんとも難しい。
恋バナの他には、スウェーデンの文化や留学生活について、各国の文化の話や、勉強の話などもした。こんな話を盛り上がってしているうちに、みんなの人柄がだいたいわかってくる。私は初めの方は英語が不自由なのもあって、普段の生活で自分からみんなに話しかけたり、会話の輪に入っていくのが怖かった。けれど、みんなが本当は優しくて楽しい人だと分かったうえでなら、話しかけるのも怖くなくなった。誰も私の英語が不自由だからと言って腹を立てたりしないし、分からなければ「あなたが言っているのはこういうこと?」と言い換えながら最後まで話を聞いてくれる。それに言語が違えど、感じていることや考えていることは案外似ていて、そういう内面の想いみたいなものは言語を超えて通じ合うものなのだとも気づいた。そのことに気づいてからは、大抵のことはたとえ滑らかに喋れなくても、伝えたいことをちゃんと伝えようとすれば、分かってくれるのだと気が楽になった。
料理会は後片付けまでが一環だ。ありがたいことに私たちが借りていたシェアハウスにはめちゃめちゃ強力で、大きい食洗器が備え付けてあった。だから、食べ終わった後の食器は何もせずにそのままその食洗器に全部放り込んで、洗剤を入れておしまい。みんな「おやすみー」と言って、各自の部屋に戻っていった。
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