スウェーデン留学記#2 フレンチクレープ
到着して数日後に、フランス人のアメリのお父さんが訪問してきた。なんでも娘が心配ということで様子を見に来たらしい。フランスからだと飛行機で2-3時間程度とはいえ、なんとも大切に育てられている。ちょうどホームシックになり始めたころでもあったので、内心うらやましかった。その頃日常会話に不自由ない程度の英語力はあったが、他のヨーロッパ出身の子たちの流暢な英会話には全くついていけていなかった。何とか聞くことはできても、複数人で会話していけるときに自分の意見をぺらぺらと喋れるほどの英語力はまだなかった。自由に言いたいことを言えないストレスが溜まって、いけないと思いつつもハウスメイト同士の食後のおしゃべりにもあまり参加せず部屋にこもりがちだった。
ある日私が食事をしていると隣でアメリ親子がクレープを焼きだした。アメリは自分の意見をはっきりというタイプで、身長が高めなのもあり最初は少し怖かった。そのお父さんということで少し怖いイメージもあったのだが、黙々とクレープをひっくり返している様子に興味を持たずにはいられなかった。何よりとってもいい匂い!こっそり眺めているとアメリと目が合い、「いる?」と聞かれた。思わず「いる!」と答えると、にっこりと笑い嬉しそうに分けてくれた。バターを塗り、シュガーとレモンを振りかけるのがおすすめの食べ方だと教えてくれた。これが絶妙に美味しい!レモンと砂糖の甘酸っぱさに、砂糖のしゃりしゃり感がよくマッチしていた。かなり大量に焼いていたのでこんなに食べるのかと聞くと、「まさか!」と笑った。フランスではクレープをサンドイッチのように色々挟んで食べるらしく、これからの食事のために大量に焼いてストックするそうである。お父さんも「いっぱいお食べ」とどんどん乗っけてくれた。この親子の温かさとクレープの美味しさに、ここにきて初めてほっとした瞬間だった。