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スウェーデン留学記#37 北極圏への旅②~Gällivareへ到着!~

Lundから片道20時間の鉄道旅行を終えてようやくGällivareに到着した時、外はまだ明るかったが、太陽は今にも落ちようとしていた。この時期のGällivareの日の入り時刻は13時だ。一日のうちほとんどが夜だといっても過言ではなかった。明るいうちに急いで駅から歩いて10分ほどのPensionat Augustinという宿に向かって、雪原のような道路の上を歩いて進んだ。Gällivareの地に降り立って、私は生まれて初めてマイナス20度の世界を体感した。息は一瞬で凍り、まつ毛や髪の毛はカチコチになった。アメリとクラーラが私の顔を見て笑うので何かと思ったら、私のまつ毛が凍って真っ白になっていたようだ。「おばあさんになってる~」と楽しそうだが、二人のまつ毛だってしっかり白くなっていた。幸い風が少なく、空気が乾燥していたので全身凍えるような寒さではなかったが、時折吹く風が顔に当たると痛かった。

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宿にたどり着くと、受付のおばさんが温かく迎え入れてくれた。「どこから来たの?」と聞かれたので、それぞれフランスと日本からLund大学に留学中で、Lundからオーロラを見に来たのだと告げた。「オーロラねぇ…見えるときは見えるけれど、ここ一週間くらい見えてないのよねぇ。いる間に見れるといいわねぇ。」と心配してくれた。アメリとクラーラは電車に乗っている間に、オーロラ予報アプリをダウンロードしていたのだが、確かに我々の滞在中のオーロラ予報の雲行きは怪しかった。こればっかりは完全に運なので、天命に任せるほかない。
私達は3階の部屋に通された。部屋はぽかぽかと暖かく、木製の床に敷かれたカーペットや窓辺に飾られたキャンドル、壁に掛けられた絵が北欧を感じさせるなんともほっこりしたデザインだった。

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簡素だが居心地がよい部屋で、宿を選んで予約してくれたアメリのセンスの良さに感謝した。2階には共用のシャワールームがあり、地下にはなんとサウナがあった。いつでも使ってよいらしい。
部屋に落ち着いたとき、お昼ご飯と言うには少し遅く、夕飯まではまだ時間があるという手持無沙汰な時間帯だった。ずっと電車に乗っていたとはいえ、お昼を食べてなかった私たちはお腹が空いて仕方なかった。そこで私たちはシャンパンとお菓子をつまみつつ、ボードゲームをして夕食までの時間をつぶすことにした。アメリは部屋での引きこもり時間を楽しく過ごすべく、Pachisiというボードゲームを持参していた。Pachisiはインドの国民的なボードゲームらしく、すごろくのようにサイコロを振って、ボード上で駒を進めるというルールだ。残念ながらアメリは駒を忘れたので、ルーズリーフをちぎってお手製の駒を作った。この紙製の駒はすぐに吹き飛ぶ厄介者で、ちょっとした拍子に動いてしまうのでどこに置いたのか時々分からなくなってしまったが、初めての北極圏旅とシャンパンで陽気になっていた私達にとってそんなことは全く問題にならなかった。

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しばらくゲームで楽しんだ後、ご飯前にシャワーを済ませ、サウナを体験してみようということになった。実は宿を選んで予約してくれたアメリとクラーラはこの宿にサウナがあることを知っていた。というか、サウナがあるから選んだらしい。そんなことはつゆ知らず、二人にのこのこついてきた私にとっては嬉しいサプライズとなった。こんな寒い北極圏の土地で、本場のサウナを経験できることになるとは!
地下におりると脱衣所の奥にサウナルームがあった。中は熱々かと思ったら、そうでもなくむしろちょっと肌寒い。三人で若干震えながら木製のベンチに座っていた。しばらくして、クラーラが部屋の片隅にある手桶とドラム缶のような大きな金属製の容器に入った石の存在に気付いた。そう、本場のサウナではもちろん自分で熱々の石に水をかけて蒸気を発生させなければいけなかったのだ。今まであらかじめ蒸されたサウナにしか入ったことがなかった私達は気づかず、まぬけに座っていたわけだ。クラーラがせっせとサウナストーンに水をかけてくれたおかげで10分後くらいにはサウナルームがじんわりと暖かくなってきた。3人で水かけ当番を交代しながら、数十分ほどサウナに入っていると身体がぽかぽかになった。スウェーデンに留学中はシャワーしかないので、日本にいるときみたいにお風呂に入って身体の芯から温まる機会がなかった。久々に身体の隅々までぽかぽかになって、幸福感に包まれた。
そうこうしているうちに、夕食用にレストランが開く時間帯になった。サウナから出た私たちは、再び防寒具に身を包み、雪原に出た。寒さは増していたようだがサウナのおかげで寒さがむしろ心地よかった。宿を出て5分ほど歩いたところに、Manuellaというピザ屋さんがあったのでそこに入った。ケバブピザがおすすめらしいので、それを注文した。アメリとクラーラは二人ともトマト、マッシュルームなどが乗っているオーソドックスなピザを頼んだ。ちょっと待つと、ホカホカのピザがやってきた。ケバブピザ、確かにとても美味しい!プルコギピザが好きな人は絶対好きだと思う!アメリとクラーラはケバブピザに懐疑的だった。二人がトマトピザを一口くれたので、お返しにケバブピザも一口あげた。二人はと恐る恐る口にし、「思ったよりは美味しい。まあまあね。」とコメントした。フランス育ちの彼女たちにとっては、ケバブピザは邪道らしい。

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帰りは少し遠回りして、クリスマス使用の街のイルミネーションを見に行った。日暮れは早いけれど、Gällivareの夜はイルミネーションが雪に反射して結構明るいのである。雪に包まれ、煌々と輝く街はおとぎ話に出てきそうな美しさがあった。

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屋根や木々の枝から垂れ下がっている氷柱にそっと触ってみたり、ふかふかの雪に倒れこんで人型を作ったり、3人で童心にかえってはしゃいだ。が、ふと我に返るとサウナでせっかく温まった身体がすっかり冷えてしまっていることに気づき、慌てて宿に戻った。

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宿の1階は朝食用の部屋があって、クリスマスツリーや藁でできた馬の置物は飾られていた。お茶やコーヒーは自由に飲んでいいわよと、宿の人に言われていたので温かいお茶を淹れて飲んだ。

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部屋に戻るとどっと疲れが出た。アメリたちのオーロラ予報アプリによるとオーロラは翌の日の早朝に現れるという。私たちは急いで就寝支度をし、オーロラ探しのハイキングに出かけるまで数時間の睡眠をとった (続く)。

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