スウェーデン留学記#34 聖ルシア祭
北欧では聖ルシア祭という伝統行事がある。北欧のクリスマス期間の始まりに位置づけられ、冬至にあたる12月13日に行われる。教会でロウソクの冠をかぶり、白い衣装を着た少女たちが歌を歌いながら行進するというものだ。ロウソクの火は太陽の象徴で、北欧の寒く暗い冬を明るく照らすという意味合いがあるそうだ。「ルシア」というのが「光」という意味らしい。そもそもクリスマス自体、本来は北欧のヴァイキングか冬至の頃に行っていた祭が後にキリスト教の生誕祭と混合されたものだ。だから、北欧諸国にはキリスト教が伝来する以前の、古来のクリスマスの慣習が色々残っている。聖ルシア祭もその一つだから、クリスマスの「起源」とも言える伝統行事だ。
ルシア祭の写真はスウェーデンに行く前に何度も見ていて、いつか見てみたいなとは思っていた。ただ教会で行われるキリスト教の行事だから、実際に見に行けるとは思ってなかった。ところがその当日の朝、アメリがバタバタと支度をしていてどこに行くのかと聞いたら、友達とルシア祭に行くと言う。地元の人ばかりが集まるであろう教会の行事に入り込んでもいいのだろうかと聞くと、「えっ、別にいいでしょ。教会なんだから信仰があれば誰でも入れるんじゃない?私もキリスト教信者だし。一緒に行く?」と誘ってくれたので、急遽参加できることになった。
ということで、朝真っ暗なうちにアメリとその友達と自転車を漕ぎ、ルンド大聖堂へと向かった。アメリの友達とはハイキングに出掛けたことがあり、半年ぶりの再会だった。大聖堂の前には大きなもみの木が飾られていた。教会には、やはり地元の人達がぞろぞろと入っていて、厳かな雰囲気だ。自分一人では絶対に入れなかったであろう。でも入り口に行くと何か聞かれることもなくすんなりと入れた。
電気がついてない教会の中でしばらく待つと、ルシア役に選ばれた少女達の清らかな歌声が聞こえてきた。教会の後ろの方から、ろうそくの冠をかぶった少女たちが次々と行進してくる。
私自身、想像以上に寒く暗いスウェーデンの冬に気が滅入っていた時期だった。高らかに響く少女達の歌声とそれを真剣に見守る人々からは太陽の再来への切なる「祈り」が感じられた。ああ、今日が冬の底で、これを機にまた徐々に陽の光が戻ってくるのだなという希望を感じるとともに、皆同じ気持ちで太陽をこんなにも切実に待ち望んでいるのだなという安心感を覚えた。外はまだ真っ暗な朝、少女達の歌声と煌々と燃えるろうそくの火は私の心も照らしてくれた。
このルシア祭に欠かさないのが先日ご紹介した「ラッセカット」というなの黄色いS字型のサフランパンなのだそうだ。やっぱり黄色いサフランパンと日本の冬至の黄色いカボチャと黄色い柚子からは、太陽への切望という共通点を感じてしまう。
夏から始まった私の留学もそろそろ折り返し、と寂しいような気分にもなった日となった。