スウェーデン留学記#8 人生で初めてのカヌー
ルンド大学には留学生達を歓迎すべく、様々な交流プログラムがある。
カヌー体験もその一つだった。参加してみようと思った理由は、やかまし村に出てくるようなスウェーデンの美しい湖をカヌーで体験できるなんて最高じゃないかと思ったからだ。
誘える友達もいなかったので一人で参加して当日は不安を抱えながら集合場所に行った。けれど、それは皆同じだったようですぐに自己紹介の輪に入ることができた。
バスに乗り込んだらパキスタンから医学の勉強をしにきたという女の子と隣になった。私も生物系の研究をしているので、お互いの話をしているうちに仲良くなった。バスの走行中窓からはいくつもの風力発電機が見えた。再生エネルギーの利用に力を入れているというスウェーデンらしい光景だと思う。
バスで2時間ほど移動してようやく湖に着いた。残念なことにどこのなんていう湖なのか名前を忘れてしまった。メモしておけばよかったと今更ながら後悔している。
カヌーの乗り方の説明を受けて、どうやら綺麗な風景に浮かれている場合ではなさそうだとここで悟った。最初は川を漕いで行って最後に湖に出るのだが、経路の途中には小さな滝もあってそこでひっくり返るカヌーも多発するそうだ。スマホやカメラは預けた方がいいよとアドバイスを受け、写真を撮らないのは残念だけどスマホが壊れる心配をするよりはいいと思い、素直に預けることにした。
カヌーに乗る前にランチタイムだった。ランチはメンターの人たちが用意してくれていて、ハンバーガーやサンドイッチ、りんごやおやつを貰った。スウェーデンではどこのレストランでもベジタリアンやヴィーガン向けのメニューが普通のメニューと並行して用意してあるのだが、ここでもそれは一緒だった。ルンド大学の食堂にも必ず普通のメニューの下にベジタリアンとヴィーガン向けのメニューがある。そしてその利用者はかなり多い。私みたいな肉食は少し肩身が狭いと感じるくらいには、ベジタリアンやヴィーガン文化が普及しているのだ。
お腹を満たした後いよいよカヌーに乗り込んだ。さっき仲良くなったパキスタンの子と同じカヌーに乗り、漕ぎ始めた。最初は要領が分からずあちこちのカヌーと衝突した。さらに川の脇の木々が枝葉を伸ばしていて、うっかり脇に寄ると顔面に直撃する。なんとか前に進めるようになると、ようやく景色を見れるようになった。空が高く透明で、それを反射する川面も透き通って綺麗だ。
しばらく余裕を持って漕いでると、前の方から騒がしい声が聞こえてきた。小さな滝があるらしい。いよいよか、と心構えして間もなく私達のカヌーも流れに引っ張られてあれよという間に滝を乗り越えた。凄まじい水飛沫が上がって、パキスタンの子が悲鳴を上げた。なんとかひっくり返らずには済んだが全身びしょ濡れだ。スマホ持ってきてなくてよかったと思い、周りを見渡すとなんと川に投げ出されている人がいた。他のカヌー何台かで救助に向かい、落ちた人々を引っ張り上げていた。
そんなこんなで川をさらに進むと突然パッと視界が開け、湖に出た。これが憧れていたようなやかまし村の湖そのもので、綺麗…以外の言葉が出なかった。そして日本にいる家族と一緒に見たかったなとも思う。家族揃ってリンドグレンの大ファンなので。下の写真はカヌーから降りた後、携帯を回収して湖畔から撮った景色だ。湖畔から見ると、水面から見る景色とは違うのが残念。
そんなこんなで私の初めてのカヌー体験は終わり、ちょうどよい疲労度で帰りのバスに乗り込んだ。帰りのバスではオーストリアの子と台湾の子とも仲良くなった。その台湾の子は日本の大学を出たらしく、日本の話で盛り上がった。パキスタンの子を含めこの4人でまた会おうということになった。というわけで、私にシェアハウス以外で初めて友達ができた日となった。