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スウェーデン留学記#36 北極圏への旅~オーロラを探しに①旅立ち編~

時期が前後してしまうが、話は11月に遡る。スウェーデンなど北欧で冬を過ごすとなったら一度は見に行きたいものがあった。もちろんそれは、かの有名なオーロラである。
ルンド大学でも留学生用にオーロラ見学ツアーが開催されていて、大人気だった。オーロラは見たかったものの、申し込むとなったら知らない人々と一緒に回るわけで、少々人見知りの私はなかなか重い腰をあげることができなかった。万が一友達ができなかったら暗く寒い北方の地で一人寂しくオーロラを眺めることになるのではないか、そもそも長い道中誰とも喋れない寂しい境地に耐えられるのだろうか、とぐるぐる悩み、結局ツアーには申し込まなかった。

オーロラを見に行くのは諦めようかと思っていた頃、なんとハウスメイトのアメリが「オーロラ一生に見に行く気ない?」と誘ってくれた。話はサクサクまとまり、アメリとクラーラと私は12月15日から20日までの一週間弱、スウェーデンの北部のイェーレバレという町に旅行することになった。イェーレバレは北緯67˚の北極圏に位置し、秋から春頃までオーロラが観測できる地点である。
気の置けないハウスメイト達と旅行に行けるとなったら、ワクワクしかない。12月初旬に学期末のテストを終えた私はいそいそと旅行の準備に取り掛かった。まずは何といっても防寒具だ。普通のダウンなんかでは-20˚の極寒を乗り切れるわけがないと考え、スキー服、ニット、厚手のタイツを日本から送ってもらった。次に問題なのは、靴だ。私はスニーカーしかもっていなかった。アウトドア派のアメリは雪山ハイキングに出かけたいと言っていたので、雪の中をぬれずにザクザク歩けるブーツが絶対に必要だった。そこで、ルンドの靴屋を巡り、スノーブーツを探した。困ったのはサイズで、スウェーデンの大人サイズはどれも大きすぎて履きこなせなかった。何軒か回ってようやく、私の足にぴったりの子供用ブーツを見つけた。店員さんも雪山ハイキングには申し分ないですよ、と太鼓判を押してくれた。質が良いブーツは1万円くらいするが、これは子供ようなので半額の5000円ほどで購入することができた。

大満足の買い物を終え、その他ニット帽などの小物も揃え、いよいよ12月15日がやってきた。
夕方の4時半頃に帰省予定ののシモーネとともにルンド駅に向かった。外は真っ暗で、駅近のオフィスビルはクリスマスツリーのイルミネーションで輝いていた。4人とも試験が終わった解放感と、これからの旅行への期待感でとんでもなく高揚していた。駅に着くと、記念写真など取りながらストックホルム行きの列車の到着を待った。まもなく列車がホームに入り、シモーネとはここでしばしのお別れをした。

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ルンドからイェーレバレまでは、途中ストックホルム、Bodenを経由してなんと20時間も鉄道に乗る。ストックホルムまでの5時間ほどはおやつを食べたり、話をして過ごした。ストックホルム近郊まで来たというところで、雪の影響で列車に遅れがでた。乗り継ぎに間に合わないのではないかとひやひやしたが、なんとか間に合う時間にストックホルムに到着した。このあとBodenまでは12時間も夜行列車の中だ。駅で夕食を買わないと空腹のまま夜を超すことになるので、ストックホルム駅で大急ぎでマックに飛び込んだ (夜10時に空いているお店はマックくらいしかなかった)。ここで軽食を買い込み、大慌てでBoden行きの夜行列車に乗り込むことができた。
私にとっては生まれて初めての夜行列車である。ストックホルムからBodenまでは、バルト海北部のスウェーデンとフィンランドの間にあるボスニア湾沿岸沿いを北上していく。窓からの景色を楽しもうとも思ったが、最初外は真っ暗でほとんど見えなかった。それでも暗闇に目が慣れてくると、ストックホルムから離れるにつれて徐々に町の明かりが減っていき、人口が少なくなっていくのが目に見えるようだった。人が全く住んでいないかのように真っ暗な沿岸が続くこともあり、時折光が密集した小さな町や工場地帯が目の前を勢いよく過ぎていくと、かろうじてボスニア湾沿いに点々と存在する人の暮らしの気配を感じとることができた。

そうこうしているうちに睡魔に襲われ、アメリとクラーラにたたき起こされて次に目覚めた時、辺りは息をのむくらい美しい銀白色の世界になっていた。もう町も人の気配も全くない。一面の雪と針葉樹林の世界だった。3人で思わず歓声をあげた。
12月16日の朝11時、ようやくBodenに着いて列車を乗り換え、2時間ほどでやっと目的地のイェーレバレに到着したのだった (続く)。

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