スウェーデン留学記#20 シェアハウスでお寿司パーティー
Sushiブームはヨーロッパでも健在で、留学中会う人会う人私が日本人と知るや否や「I love sushi!!!」と訴えてきた。スウェーデンのスーパーのお総菜コーナーにも必ずと言っていいほどsushiが置いてあり、ハウスメイトの中にもちょくちょくそれを買ってきてる子達がいた。スーパーで売られているこういうsushiのネタは十中八九マヨネーズがかかったサーモンで、他にキュウリやサーモンが乗っていたり、照り焼きチキンが乗っていることもあった。
わざわざここで買わなくても、帰国後に美味しい寿司を食べればいいやと思っていた私は、あまりsushiを買わなかった。それを不思議に思ったハウスメイト達に「日本人はあまりsushiを食べないのか?こんなに美味しいのに!」と問われ、寿司の美味しさなら私の方が知ってる!と、内心ムキになった私が勢い余って「そのネタのsushiなら自分でも作れるし…」と思わず口走ってしまったのを彼女たちは聞き逃さなかった。
「えっ、マジ??寿司って自分でも作れるの???作ってるところ見たい!食べたい!!作って!!!」と懇願され、シェアハウスでは急遽寿司パーティーを開催することになった。
実はスウェーデンに旅立つ前、素晴らしいセンスにあふれている友人が「きっと向こうで寿司パーティーやるから」と言って、なんとしゃもじと巻きすの携帯セットを餞別に贈ってくれていた。これらが活躍するときは早速やってくるとは。
せっかくもらった巻きすを使いたくてたまらない私が「握り寿司じゃなくて、巻き寿司でもいいか」とハウスメイト達に聞くと、「それがsushiなら、”巻き”であろうと”握り”であろうと構わない」とのことだった。
困ったのは具材だ。日本みたいにマグロとかアジとか、ネタになるような鮮魚がスウェーデンのスーパーに売っているわけもなく、使えそうな魚はスモークサーモンくらいだった。それに、ハウスメイトの中にはベジタリアンの子もいたので、野菜のみの寿司も作る必要があった。
悩んだ末に、ネタにはオーソドックスにサーモンとアボカド、卵焼きを選定した。ベジタリアンの子にはサーモンを使えないので、彩りが悪いなと思っていたら、クラーラが「きんぴら入れたら?あれ美味しいし、きっと気に入ってくれるよ」とアドバイスをくれた。クラーラは以前私が作ってあげたきんぴらを試食してから、きんぴらの大ファンになっていたのだ。ということで、ベジタリアン寿司にはサーモンの代わりにきんぴら人参が入ることになった。
寿司だけでは物足りないかもということで、シモーネがサラダを、リアンヌがデザートのクレープケーキを作ってくれた。サラダには、アボカド、ひよこ豆、玉ねぎ、トマトなどが入っていて、ビネガーとオリーブオイルで味付けしてある。クレープケーキは、薄っぺらいオランダ風パンケーキを一枚一枚焼いたあとに、間にイチゴクリームをはさみながらミルフィーユ状に重ねていくという、メインの寿司以上に手の込んだケーキだった。その他に買ってきたフォカッチャも添えて、和と洋が入り乱れた食事が出来上がった。
みんな大喜びで食べてくれて、私はほっと胸をなでおろした。具材が入手できなかったせいもあるが、明らかにスーパーのsushiよりも寿司っぽくない見た目になってしまったので、内心ドキドキだった。きんぴらの方も好評だった。ただ、きんぴらはちょっと食べにくいのが難点だった。アボカドが被ったが、サラダも美味だった。だが、個人的に一番美味しかったのはクレープケーキだ。ミルフィーユ状に重ねることで、一枚一枚焼いたのを食べた時とは別の食感が生まれ、イチゴクリームの甘酸っぱさも相まって最高のハーモニーを奏でていた。
見た目はスーパーのsushiに劣るが、みんなでワイワイ言いながら寿司を作ったのは心に残る思い出だ。うちわがないので、下敷きを使って順番に酢飯を扇いだり、卵焼きの余った切れ端を美味しそうにつまみ食いしていたハウスメイト達の笑顔が印象的だった。巻きすを使うのは皆初めてだったそうだが、案外上手に使えていて、それも嬉しそうだった。こんな経験ができたのは全て、私にしゃもじと巻きすを贈ってくれた友人のおかげだ。多分彼女の目にこの記事が留まることはないだろうが、ここに感謝の意を表したい。
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