売約済み販売車両Z1000製作模様の紹介です(1)
タサキチューニングで実際に販売したカワサキZ1000の製作模様を紹介します。この車両は売約済みです。
当社では古いバイクを販売するときに、お客様が希望された販売コースに合わせて(フルレストアコース、整備+部分レストアコース、旧車バイクチェック仲介コースがあります)作業し販売しています。
今回は今一番ご注文が多い、実際に販売した整備部分レストアコースのZ1000の作業模様を数回に分けて紹介します。
当社ではかなり前、15年ぐらい前からでしょうか、実際に販売した車両の作業模様を写真とデータで詳しく残しています。写真は通常1000枚~2000枚ぐらいです。
これはお客様にご自身の買われたバイクがどのような整備を施されているか知ってもらうためと、当社が過去どのような作業をしていたかを詳しく残して、新たに車両を製作するときの改善に役立てるためです。
今回から実際に撮影したその写真を紹介していきます。全てを紹介しているときりがありませんので、そのうちの代表的な写真に説明を付けて完成まで。
まだこの車両は完成していません。
この写真のZ1000をベースに重整備+部分レストアを施しています。
皆さん勘違いをしやすいのですが、フルレストアを施す場合よりも、整備+部分レストアで販売するときは、より程度の良いベース車両を使用する必要があります。
フルレストア車に比べこのコースの一番のメリットはズバリ価格で、車種にもよりますが、200万円ほど金額がさがります。ただZ1などはあまり金額面で大きな差を出せないためフルレストア車の方が良いです。
ご覧のようにとても程度の良い車両で、(国内新規登録するためキャブだけ仮のFCRを取り付けています)一般的な旧車販売店ではこのような車両に少しだけ手を加えて整備済み!なんて言いながら販売しているわけです。それでは本来の調子で、トラブル少なくというわけにはいきません。
なんせ40年~50年も前のバイクですから。
当社ではどうしているかといえば、必要な部分全てに整備を施すためエンジンも車体も全てばらして整備します。
まずはエンジンから。エンジンを降ろしてフルオーバーホールします。
エンジン分解洗浄後です。このZ1000はとても状態が良くご覧のようにとてもきれいです。レストアするにしても整備するにしても、その完成形に合わせた状態のものを仕入れる必要があります。
ですが、どのように作業をするにしてもなるべく余計な手間、つまり修理がなるべく少なく、欠品が少ない物をベースにすることができるだけ金額を抑え、できるだけ良い旧車バイクに仕上げるために必須なことです。このことが解っていない人(店)が実に多い。
シリンダーをライナー打ち換えボーリング後。上面は修正面研を施してあります。上面も下面も削りすぎると良くないので最低限のみ。カワサキZ系はスズキ、ホンダ製のこの頃のバイクよりライナーの圧入部分が緩くなりやすいのでライナー打ち換えボーリングは必須の作業です。
使用するピストン。先ほどのシリンダーはこのピストンに合わせてボーリングされており、ビトーR&D製鍛造ピストンになります。メーカー曰くコスワース製ピストンと同じ材料を使っているとのことで高耐久高品質のピストンです。
ヘッドのオーバーホールをします。シリンダーとは違いルーティン通りとはいかないことも多く、都度状態に合わせて臨機応変に作業します。今回のものは状態が良いので大丈夫ですが。
IN側ポート。作業前。純正はポート内に写真のようなでこぼこがあります。このZ1000のそれは普通ぐらいです。状態はご覧のように良いですね。後でこのでこぼこは取り除きます。
今回の車両はFCR35mmのキャブレターを使用します。
この関係でインシュレーターは大径タイプを使用しますから、インシュレーターを仮付、白く見える段差がある部分に印を入れ、この後削り取ります。抵抗にならないよう、不自然にならないように削り取る必要があり、きちんと作業するにはここだけでかなり時間が必要です。結構力も要りますから腕もパンパンになったりします。
ポートのカーボン落とし後。でこぼこも取り除いています。これはEX側。
これはIN側。今回はここだけガイドを交換するため、すでにガイドは抜いてあります。先ほど紹介したインシュレーター部の段差も削り取っています。
同じくIN側。程度が良く、このZ1000は先ほどの1本以外はガイド交換の必要がないと判断したためこの写真は抜いていない状態です。
燃焼室側からの写真です。ポートの写真はとても取りにくいので、こんな感じでご勘弁を。IN側。
EX側。EX側はポート内に出ている純正バルブガイドが抵抗の大きい形状ですので、抵抗が少なくなるように先端をややテーパー状態に削ってあります。耐久性を落としたくないため長さは換えていません。IN側は元々テーパー状態になっているためそのまま。
これは燃焼室の写真。ポートも燃焼室もこの状態に仕上げるのはとても大変です。組んでしまえば見えなくなる部分ですが、すべては長く調子の良いオーバーホールエンジンに仕上げるためです。
作業後全体の写真。この後、抜いてある1本のみバルブガイドを入れます。
通常バルブガイドを交換するときは8本全部変えることが多いです。修正の面研はヘッドの作業が終わったら施します。
この部分にバルブガイドを入れます。
ボアゲージで内径を測定。
私の汚い字ですいませんが、今回は1本のみの交換なのでこんな感じで記録してます。数値からもとても程度が良いのが解ります。
これが圧入するバルブガイドです。
圧入後。ヘッドに熱を入れて膨張させてから圧入してあります。
ポート側からの写真です。この後ハンドリーマを通します。
暗くて見えにくいですがハンドリーマを通しているところ。
こんな感じで記録を残します。IN側なのでそれほど大きいサイズのバルブガイドを入れる必要はなく、今回は12.055のサイズを入れました。
無理に大きなものを入れるとヘッドにクラックが入ったりします。(そういうミスや他にもバルブガイド関連は大変多くミスを見かけます)
ここまで作業が済みましたら、ヘッドは修正面研に出します。これはいつも頼んでいる腕の良い金属加工屋さんにお願いしています。
続きは後日。