田口さんの「だんご」のこと
田口さんの「だんご」である。
何のことかと言うと、短編映画のことである。
「だんご」というタイトルの映画に、ちょっとだけ出演させてもらっている。
ことの始まりは、数年前に、群馬県の高崎で行った、ワークショップであった。
高崎電気館という映画館をお借りしての、ワークショップで
その映画館を使って、俳優たちが、好きに撮影したものを、私がその場で編集して
それを、その映画館で上映する、という、世にも不思議なワークショップであった。
そこに、田口さんが参加していた。
それから、しばらくして、田口さんが、シナリオを書いてきた。
映画を撮りたいのだと言う。
内容はこうだ。
沖田が、数人の俳優に拉致監禁され、映画に出演させろと、脅されるという、内容だった。
私は断った。
嫌だったからだ。
それから、彼は、私の監督した「おーい!どんちゃん」を、何度も観に来た。
地方まで来た。
おそらく一番観ている客だと思った。
彼は諦めなかった。どんな映画ならいいのか?と言われて、困った私は、田口さんと、映画「だんご」に出演している、川瀬絵梨さんと、三人で、酒を飲みながら、内容を話した。
その結果、伊勢神宮にお参りにいく兄弟の映画はどうだろう、となった。
酒の席だから、実現するか知らなかったが、それから、またすぐに、田口さんが、シナリオを書いてきた。
私が、刑務所から出所して、弟役の田口さんと、ロードムービーみたくなる映画だった。伊勢神宮は、カケラもなかった。
私の名前は健。刑務所から出所してきた、健だという。
車の中に、二人の男と、一人の女。どこかで観たことある気もしたが、忘れることにした。
田口さんは、そうして、一人でスタッフを集めはじめ、ロケハンをし、そして、本当に映画を作った。
もう私は逃げられなかった。
現場には、初心者の監督と、出来損ないの俳優が、並んでいた。
現場で、私が何か言うと、彼は、「もうわからないよ!」と頭を抱えた。
大きな体を小さくして、赤くて眠たい目で、私を見た。
そうしてできた映画が、どういうわけか、映画祭で、上映されることになった。
埼玉の、SKIPシティーという、国際映画祭のコンペだという。
人生は不思議だ。
自分、不器用ですから。
田口さんが、なんだか、いろいろ賭けて、作った短い映画だ。
私は、映画に出たお礼として、真っ白なスニーカーをもらった。
だから、私は、上映の時、その真っ白なスニーカーを履いていこうと思う。
ぜひ、観たい方は、川口まで、お越しくださいませ。
7月 15日、18日、とのことでした。