「今って…本当のたるみじゃないんでしょ?」

昔キャバクラで働いていた。

その頃仲良かったレイちゃん(仮名)は元気がよく明るいビールが大好きな女の子で、そのレイちゃんには癖のあるお客さんが1人いた。

名前を田中(仮名)とする。

田中はなぜかキャバクラのぜんぶを知っているかのような立ち振る舞いで、仕事ができない嬢のことをとても嫌っていた。
うわっつらの会話を嫌い、愛想笑いを嫌う田中。そして勝手にドリンクを「おねがいしまーす」と黒服に頼むような客だった。

レイちゃんのことを神のように崇め、田中を接客中のレイちゃんは田中が望むシゴデキ嬢を演出する為になぜか綾波レイのように淡々としたキャラになる。いつもすぐ爆笑をするレイちゃんなのに。
最高のプロ意識だ。

そんな田中にレイちゃんの仲良しという理由で場内で呼ばれることが多かった。
レイちゃんが被りの席に行っている間二人きりになり、お酒を作りながらなんとなくの世間話をしていると田中はふいにGACKTのように脚を組み、手を口元にもっていきながら「今って…本当のたるみじゃないんでしょ?」と聞かれた。

何言ってんだ?
まあ多少は違うかもしれないがそこまで作ってもいないので、そんなことないですよ~!が正しい答えなのだが私は愛想笑いをやめて真顔で答えた。

「ハァ・・・バレちゃったか・・・」と私は答えた。
かぶりの席で大笑いしているレイちゃんを指さしながら
「じゃあさ、あそこで接客してるレイちゃんも本当のレイじゃないこと理解(わか)ってんだ?」と続けると

田中は真顔で、でも興奮した様子でコクン、と頷いた。


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