(株)ゆめみの勉強し放題制度を私的な理由で使って粘土をこねてきた(後編)
せっかちな人のための前編要約
なんかガチの凄い先生による面白そうな彫刻教室があったので潜入してきました。
・娘たちの画が上達して最近生意気なので黙らせるために(会社の)金を使って殴って父親の威厳を取り戻したい
・実際に潜入してみたら受講者も皆ガチの人たちばっかりだった
・犬童美乃梨はいいぞ
・何の説明もなく30分でここまで作れる俺って天才じゃね?
一度壊して片桐先生のライブスカルプティングを見学
何でも作るよ。とおっしゃる先生に与えられた無茶振りは、
・人間を襲って噛み付く凶暴なマグロの魚人
40分後
、、、すげぇ。
それを踏まえて、イメージが残っている間に、先程のものは壊してから、二度目の作品制作。
30分後
他の人はみんな背中をえぐった胸像にしてるけど、背中も作るよ。
その後何度か講義と造形を繰り返して1日目が終了
表情に関しては老人の顔として先生に手直しして頂いたものの、1日目でここまでできちゃったらあと2日も必要なくね??
ただ、筋肉の付き方がよくわからなかった部分があるので、一日目に帰ってから資料を探しなおす。
8時半から始まって18時半頃までみっちり粘土と向き合って身体はガタガタだった。
二日目
一旦全リセット
自分でも3日間という全体のペースに対して髪の毛やひげの枝葉の造形を急ぎ過ぎとは感じていたので、一旦ハゲに戻す。時間はたっぷりある。
ハゲに戻して、耳も落として初めて見えるバランスの悪さ等もあったので、スカルヘッドを見ながらガシガシ直す。
ただ、左は片桐先生の修正の入った顔、右はそれを見て真似た顔。
先生の手が入るたびにさっきまで完成かと思っていた顔がまだまだリアルになっていく。筋肉もまだまだ盛っていくよ!
筋肉モデルを見ながら、背中の造形に入る。
こだわりは山のように盛り上がった僧帽筋、その鍛え上げた肩に乗せるのは何だい?日本かい?
狂気の始まり
それは、バング師匠の頭の骨格を矯正していたときに急におこった。今冷静に考えると、禿頭のテカリ具合と粘土のテカリ具合がマッチしていたための錯覚だったのかもしれないが、たしかに私はその声を聞いたのだ。
「そこそこ。そこを掻いてくれ。。。」
それまではただの命持たぬ粘土の塊だったものが、ちっちゃな愛しいおじいちゃんに変わった瞬間だった。えっ。なにこれ。ヤバい。
一度はもぎ取ってしまった耳をつけたあとに再度造形中。ちっちゃいおじいちゃんの耳かきをしている感覚と必死に戦っているWebエンジニアの写真。
「おじいちゃん。ここ、痛くない?大丈夫?」
再度植毛して、ひげをつけて2日目は終了。
終了時に片桐先生に、
「うん。明日は筋肉を直そうか。」
と言われる。
ん?筋肉?バング師匠の筋肉のどこに問題が?師匠にあまりにも失礼ではないのか?!
この時点で体力的にはヘトヘト。家に帰り着くまでが長い。だいぶバング師匠の迫力にあてられたようだ。
三日目
見てるようで見えていなかった歪み
いよいよ最終日。もうほぼ魂が入ったと言っても過言ではないバング師匠に対して片桐先生が何をできるというのだろうか。
もう皺とかのディティールを詰めていってもいいんじゃね?
「目にリアリティーがないね。目玉から作り直してみようか。」
先生のお手本をもとに何度も作り直すのだが、どうもしっくりこない。正面から見て正しい位置にあるのだがずっと違和感がある。ふと、下から見て初めて気がついたのが、左右の顎の歪み。
顔全体の歪みにずっと気が付かないままディティールを詰めていた。この歪のせいで目の位置も定まらなかったようだ。耳の位置もぜんぜん違う。
残り時間はあまりないがここは思い切って大手術。
左の耳を削って顎を大胆に削り直してから目を作り直すとやっとしっくりと来る場所に目が収まった。ハゲモデルのうちにこれに気づいておくべきだった。基本大事。
筋肉の大手術
「そういえば、そろそろ筋肉を直そうか。」
「はい!お願いします!(、、、バング師匠の筋肉に手を入れるなんて、まぁお手並み拝見。)」
「三角筋の付け根は左右で同じ位置になって、大胸筋の筋が伸びる先はコッチだね。そして大胸筋も全体的に丸みが出る。」
「ほら。全体的に粘土を削ってボリュームは減ってるはずなんだけど、正しい位置に持ってくると、ボリュームが出るんだよね。」
「背中は、肩が外旋しているので、肩甲骨の位置が多分ここらへんに来て、その分、こちらに筋肉が盛り上がる。すると、、、」
えっ何これ凄い?魔法?背中の筋肉が一斉にダンスをはじめたよ!!!
『、、、バング師匠、今まであんな不甲斐ない背中を背負わせていて申し訳ありませんでした、、、。』
解剖学重要。わいはバング師匠の背中をずっと追いかけていたつもりで、全然別のものを見ていたようだ。
最期の時間
シワの造形のレクチャーも受けて、
「おじいちゃん、先生にこんなに綺麗にしてもらって。良かったねぇ。」
と声をかけながら全身を磨き続ける。3日目ももう夕方。我々二人に残された時間はもう短い。
「肩も随分凝ってますねぇ。どんな仕事されてはったんですか??」
スリスリ。スリスリ。
すればするほど筋肉にテカリが出て輝き始める。
気がついたらうちのおじいちゃんの筋肉が彫刻教室参加者の中で一番光り輝く筋肉になっていた。
完成
最終的に完成したバング師匠がこちら。
凄い、、、。が、これって、片桐先生の作品であって私の作品と言っていいのかという疑問がつきまとう。
いや、髪の毛とか、先生の手は一切入ってない私のオリジナルだし、、、。
先生が手直しした部分の上に多大なる背徳感を感じながらも私が手を入れてたのでむしろそういうプレイじゃないかっていう感じの。
例えるなら、ワンオフの芸術作品を作家さんに発注して、その作家さんの目の前で「うん。ここが気に入らないからこう変えるね。」と素人が勝手に手を加えるという背徳感を楽しむロールプレイ。
ただ、それを踏まえても試してみたいことややりたいことを自分なりに盛り込んで全部試すことができたので満足。
筋肉爺さんに対する造形をしてほしい方、筋肉x爺さんの魅力を一緒に語りたい方、是非とも声をかけてください。
なんせ、最初がこれだったからね。レベルアップはしてる筈。
懇親会
最期に3日間を戦った他の参加者の皆様との交流会。
3日間を戦い抜いた身体はボロボロですが、おビールをいただくことでかなり回復します。おっさんの身体はそういうふうにできています。
ビールの力を借りて、コミュ障なので3日間あっても一言二言しか話せなかった方々のお話を色々伺う。なに?人形造形作家としてお弟子さんもとってる方だったの?とか。
しかし皆さん、この業界で生き残りたいとか、明確な目的意識があって、本気度合いが違う。みんな凄い人たちばかりでした。作品も皆さんすげぇ。
その中で自分は自分の職業には全くつながらないただの趣味として来て良かったのかな?って、先生にずっと接待してもらってただけじゃなかったのかとの自問自答、、、。
、、、ただ、私には私なりの譲れない理由があったんですよね。
ここで、初心に戻りましょう。私がこの教室に通った理由、それは、
娘たちの画が上達して最近生意気なので黙らせるために(会社の)金を使って殴って父親の威厳を取り戻したい
つまり、初心の謙虚さを取り戻した上で、地下格闘技会のチャンピオンの言葉を借りて言うと、「仮に娘が世界一画が下手な生物なら自分は世界で二番目に下手でも構わない」わけですよ。
目的に優劣はない。他人との比較ではないんですよ。
その結果と、この3日間の集大成として、今、我が家のリビングにはシルバーファングこと、バング師匠の胸像が鎮座しています。
戦士の帰還
「ジャーン!!これ、3日かけて、作ってきたよ。凄いだろ!」
「ふーん。」
おしまい。
2日後
何故か同じ会場に足を運んで居る私がいました。
To Be Continued...