第六回「ライセンス(上演権)を獲得する(後半)」 ~創作ノート~TARRYTOWNが上演されるまで
こんにちは!TARRYTOWN翻訳・訳詞・演出の中原和樹です。
改めて、明けましておめでとうございます。
2023年の11月に上演したTARRYTOWNですが、こうして創作のプロセスを綴っていったりしながら、少しずつですが、今年もみなさまとTARRYTOWNの接点を作っていけたらと思っています。
2024年もよろしくお願いいたします。
今回も前回の創作ノートの続きとして、ライセンス獲得エピソードの後半部分を書いていきたいと思います。作者のAdamから紹介をもらい、事務所の担当者の方と繋いでもらったあと、具体的に上演権の獲得についてのやりとりを進めていく、という内容です。
前回の記事はこちら。
Adamが所属する事務所の、担当者の方への連絡先をお聞きし、「さぁ連絡だ」と、まずAdamに送った文章と近い内容を送りました。なぜTARRYTOWNに惹かれたのか、上演するためにはどうしたら良いのかという内容です。
前回のノートにも書きましたが、向こうの休暇制度(バケーション)の関係で、なかなか返信が来ないタイミングもありました。また、このTARRYTOWN以外にも先方の抱えているお仕事はたくさんあるでしょうし(マネージメント業として)、
遠方の日本で、しかも私たちの企画は商業的に大きくないカンパニーの公演であるので、こちらが丁寧に、辛抱強く連絡を取り続けて、こちらの熱意を伝えねば・・・と考えて、メールを送っていました。
担当者の方のメールもAdamと同様にとても丁寧で、かつ、事前に思っていたよりも距離が近いような、カジュアルな部分もたくさんありました。
実際に行われたやりとりは、以下のようなトピックです。
一番大きい内容は、やはり上演用の権利の獲得、つまり契約です。
先方から契約用の条項のひな型をもらい、その内容に齟齬が無いか、この契約内容で問題が無いかをチェックします。全文が英語で、かつ専門的な用語も多く、全文を理解するのにまず苦労しました・・・。
自分でも単語単語を調べていくのですが、その際にとても助かったサイトがこちら。
DeepLという翻訳サイトです。良い精度で自動翻訳をしてくれます。
ただし、このサイトに全てを頼ってしまうと、内容が間違っていた際に大変なことになってしまうので、基本的には自分の理解した契約内容のチェック用として使用しました。
・上演料の具体的な条件(トータル収入の何パーセントというのが多いようです。カンパニー規模にもよりますが)
・権利関係の明示(台本、音楽はAdamが権利を持っていますなど)
・上記に関わり、勝手な内容の変更はしないこと
・SNSなどに内容をアップすることの禁止事項
・独占上演に関する条項(この契約期間内に、該当の地域内での他のカンパニーの同作品上演を禁止する内容)
などです。
条項を確認していて感じたことは、かなり細かい部分まで具体的に明示してあること、そして、作者の権利がきちんと守られているということです。
作品上演に際して、改訂などが不可能ということではなく、作品と作者への真摯な敬意を持つことが重要であるという感触です。
そのため、契約自体は大変な作業でしたが、この時間自体は私にとっても大きな学びの時間でもありましたし、何より契約を精査しつつ、疑問点を先方に提出し、回答を得て、それに基づいて少し条項を修正していく、というプロセス自体がすでにクリエイティブでした。
そしてついに条項をお互いに確認しきり、オンライン上での署名をし(そういった署名サイトを経由して最終版の条項が送られてきました)、無事に上演権に関する契約の締結に至りました。
今回ははじめてコンタクトを取ってからここまでで2か月ほどかかっています。
その後、改めて上演用の素材(マテリアル)が送られてきました。
台本と楽譜、他サントラのデータなどです。
この瞬間も忘れられません・・・!
やっとTARRYTOWNの世界に触れられたという気がしました。
もっと細かく書いていくと、ここに書ききれないぐらい色々な気付き、共有したい内容があるのですが、すごくマニアックな(?)内容に踏み込んでいくことになるので、もし機会があれば(読みたいという希望があれば・・・)、さらに踏み込んで書いていきたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみにしていただけたら嬉しいです。
中原和樹
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