第四回「ライセンス(上演権)もとを探す」 ~創作ノート~TARRYTOWNが上演されるまで
こんにちは!TARRYTOWN翻訳・訳詞・演出の中原和樹です。
前回までの創作ノートで、TARRYTOWNという作品に出会い、この作品を上演したい!と決めるまでをご紹介してきました。
今回の創作ノートは、自身のオリジナル作品を上演する場合でない限り、日本の作品・海外の作品問わず上演に際して必ず必要となるプロセス、「ライセンス(上演権)の獲得」にいたるまでのエピソードを書いていきたいと思います。
著作物を創作した人に与えられる「著作権」、その中のに上演権というものがあります。ライセンスの獲得は、平たく言うと、上演したい作品の著作者に上演の許可を取るという作業のことです。
私自身は著作権などの権利関係のプロフェッショナルではないため、この創作ノートで著作権自体を掘り下げることはしませんが、実演家にとって大変重要な事柄であるため、よく調べたりします。
こちらのサイトが大変分かりやすく、参考になります。
日本でいうとJASRACが良い例だと思いますが、海外ミュージカル作品の場合も、著作者(作家・作曲家)がそのまま著作権を自分で管理していることは稀です。
著作権自体は著作者が所有していますが、管理運用、つまり今回のような上演権の交渉・契約などは法律の専門的知識が必要であったり、時間的にも作業的にも煩雑であることが多いため、エージェント(代理人)や著作権管理会社が行うケースが大半です。
そのため、上演したいミュージカルの作家や作曲家だけではなく、その作品の権利(ライセンス)を誰が(どこが)管理しているかを調べるところから始めます。
日本でも上演されていたり、名前を聞いたことがあるような大きな(ヒットした)ミュージカルは、たいてい大きな管理会社のもとで権利が運用されています。
以下は代表的な管理団体です。WEBサイトを訪問すると、その団体の管理している作品の詳細(キャスト数、上演時間、あらすじなど)が載っていることが多いので、調べものとしても参考になるサイトたちです。
【MUSIC THEATER INTERNATIONAL(通称MTI)】
【Theatrical Rights Worldwide】
【Concord Theatricals】
【BROADWAY LICENSING GLOBAL】
検索サイトで「作品名、musical、license」などと入力すると、上記した団体に管理されている作品の場合、検索結果でその団体へのリンクが出てくるので一発で分かります。
その場合はそのサイトに飛び、上演に際して必要な情報(会場、客席数、チケット代、上演期間・回数など)を入力していき、先方から回答を待つという作業となります。先に大まかな上演料の見積もりが出てくるサイトもあります。情報を入力してすぐに上演料が分かるので、予算の参考となります。
さて、今回のTARRYTOWNの場合・・・
実は上記の団体の一つもヒットせずという結果でした。
TARRYTOWNのライセンスで検索をかけると、すぐに出てくるのは作者のAdamのサイトです。
これはもしや・・・
TARRYTOWN自体は上演回数も少なく、
大きな劇場での上演もなされていない新しい作品なので、
権利はもしかしたら作者が運用しているのかも・・・
という考えが頭をよぎりましたが、さらに別の言葉で色々と検索をかけ続けてみました。
(rights, performance, licensing, fee, などなど)
ですが、なかなか有力な情報が出てきません。
こうなったら出来ることは一つだけです。
Adamのサイトにcontact(Adamに連絡が出来る)ページがあったので、
そこに直接文章を書き、送ることにしました。
「私は日本の演出家です。あなたの創り上げた素晴らしい作品であるTARRYTOWNを、ぜひ日本で上演したいと思っています・・・」
(もちろん英語です!)
ここから、Adamとのエキサイティングなやりとり、そしてライセンスの契約締結までの長い道のりが始まりました。
次回はこの続き、Adamとのやりとりや、彼のエージェントとのやりとりの結果、どのようにライセンスを獲得したかを書いていきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
次回も読んでもらえたら嬉しいです。
中原和樹
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