創作ノート~TARRYTOWNが上演されるまで~第三回「TARRYTOWNを選ぶまで-聞き比べ編-」
こんにちは!TARRYTOWN翻訳・訳詞・演出の中原和樹です。
第二回の創作ノートに引き続き今回も「TARRYTOWNを選ぶまで」と題しておりますが、今回は「聞き比べ編」ということで、上演候補に挙げた作品のサウンドトラックを聞き比べた結果、どうしてTARRYTOWNに決めたのかを書いていきたいと思います。
まずは、簡単にTARRYTOWN以外の候補作品のご紹介からです。
作品を選ぶに際して公式HPなどを駆使してあらすじを見てみて、サントラを聞き比べる前に除外する作品があれば除外をします。
今回は、以下の作品をまず除外しました。
ただ、作品と出会ったご縁として、楽曲自体はもちろん聞きます。聞き比べるほどにというわけではないですが・・・。
・Everyday Rapture(ジュークボックスミュージカルであるため。僕自身がジュークボックスミュージカルを嫌っているという意味ではなく、あくまで今回の企画でやりたいと思っていたことと違う、という意味です)
・Lizzie(女性キャスト4人の作品なので)
・Murder Ballad(日本ですでにやられている作品であるため)
・Now. Here. This.(同上)
そして、以下の作品が残りました。
この作品たちのサントラを聞き比べていきます。
※実はこのミュージカルの公式HPには、珍しいことが書いてありました。そういった創り方のユニークさもこのミュージカルサントラの面白さかもしれません。
「(このミュージカルには)実は楽譜なんて存在しなかったのです!Seattle Rep での最初のプロダクションでは、私は歌詞を書き留め、時には歌詞の上にコードを書き(中略)、私たちはギターを手に取り、ピアノの前に座ってタンバリンを振り、ガレージバンドのようにその場でアレンジしたりオーケストレーションをしたりしました。」
どのサントラも現代的な楽曲たちで、それぞれ個性があり魅力的でした。ただ、私としてはこの中でやはり、TARRYTOWNが一番心に残ったのです。
TARRYTOWNの楽曲を聞いた際の印象は、
・ミステリアス
・楽曲のジャンル、雰囲気の幅がかなり広い
・三人の登場人物の掛け合いが、他にあまり聞いたことがないくらい絡み合いつつ、ポップで面白い
・ライトなナンバーがありつつ、重厚な、歌い手の力量を全面に示せるナンバーがある・全体として楽曲の持つ描写力、想像を喚起する力が大きい
ということでした。
私個人の好みとして、ミュージカルの音楽が物語を運ぶ力と、そして情景をもたらしてくれる力が大きい作品が好きということ、そしてミュージカルのみならず、作品そしてミステリアスな要素や、不条理的な要素、神話的・民族的な要素がある作品が好きということもあり、TARRYTOWNはばっちりそこにはまったのです。
そして何より、日本に紹介するという意味において、終わり方が単なるハッピーエンドではない、かつバッドエンドとも断言出来ない作品であること、民話・伝承が独特の形でモチーフになっていること作品であることなど、今まで日本であまり見たことが無い作品である、ということが一番大きい要素でした。これを日本で初演する意味・意義が必ずある、素敵なユニークな作品であると感じたのです。
こうして、作品探しの旅は一段落し、私の中で「TARRYTOWN」を上演したい!という想いが定まりました。
そして、ここからさらに長い旅路が待っているのです。
次は、海外のミュージカル作品を上演するにあたり(もちろん、日本のミュージカルを上演するでも、演劇作品でも同じですが)必要な、
ライセンス(上演権)の獲得にまつわるエピソードを書いていきたいと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
次回もお読みいただけましたら幸いです。
中原和樹
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