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「大きな家」と「どうすればよかったか」


・配信されないドキュメンタリーを劇場に観に行く


インフルこじらせて白目むいてたときだったか、ラジオを聞いていたら斎藤工さんの声が聞こえてきた。
好きなラジオ番組に好きな俳優さんが出ていて嬉しく思い、そのまま聞いていたら映画「大きな家」の話をしていて、それが内容、上映方法あわせてとても興味深く、是非観たいと思った。
ドキュメンタリー映画なのだが、出演者の様々な事情、プライバシー保護など配慮し円盤化、配信予定がなく、上映館も限られており、観るハードルは高かったが好きな配信者のたろちんさん(膵臓ナシ精子ナシ糖尿アリ)が「人間は死ぬので、はやく大きな家とどうすればよかったかを見なきゃ」という内容をつぶやいてて、そうだよな~~~!!!!!!!と思い、ガッツを出してみてきた。どちらも観てきたのだが、観る前は「どちらもドキュメンタリーだし、同じような感情になるかな?」と思っていたが、観た後の感情はどちらかといえば真逆。

※以下ネタバレ注意

・大きな家

とある児童養護施設。様々な子供達、関わっていく大人達、それぞれの年齢、事情、感情に寄り添ったドキュメンタリー
ラジオでも語られていた、「カメラをむけて様々な事情で写れない子達もいるし、顔にモザイクや黒線を入れられることはプライバシーを守る役割がある反面、傷つけることもある。出演者たちに必ず配慮をし、誹謗中傷も勝手な詮索もせず、感想は配慮した内容をお願いします」というのが印象に残った。
劇場でもあらためて、細かく丁寧な注意喚起、というか、お願いのチラシをもらった。
故に詳細な感想はぼやかして書きますが、10代前半の男の子4人が連続で紹介された時、それぞれの性格、抱えているもの、境遇…などが違っていて、とても考えさせらました。同じ施設にいて、近い存在のようで、まったく違う人間だから、抱える気持ちも事情も違う。

両親を失った子供が同室の子供と喧嘩したとき、「アイツは親がいるんだから、アイツが出ていけばいい。自分には帰るところがないんだから」などの愚痴を言い、施設の方に「そういう簡単な問題じゃないんだよ」と嗜められ、幼さ故か、同調してもらえない事でへそを曲げるシーンがあった。
その後、別の子供が誕生日が近いという事で施設から3000円入った財布を渡されて、自分でプレゼントを買いに行き、「これじゃあ●●は買えないなぁ、でも当日お母さんと会うから。その時良い奴買ってもらうから」と言っていたが、その日、母は来なかった。

どちらのほうが良い、ということも、どちらのほうが悲しい、ということもないのだ。視認化できないものは本人しかわからないから比べるものじゃないのだ。
他にも様々な年齢性別の子供がそれぞれの気持ちを抱え、この空の下で生きている。
寂しさは劇薬。それを埋めてくれるものにはすぐには出会えない…とか、
家族ではないです、実家ではないです、と言う子供達 それにもそれぞれの考え方があり
逆に、卒業した子供だけが、「家族」という言葉を肯定していたのがとても印象に残った。帰る家、として、大きな家を認識していて、とても優しく美しい終わりだった。

・どうすればよかったか

真面目で優秀で面倒みのよかった姉が、両親の影響から医学部に進学した彼女がある日突然、人が変わった様に発狂してしまいうが両親は「隠す」という選択をしてしまう。唯一「このままで良い訳ない」と説得を続ける弟である監督が、両親に治療を訴えるがとりあってもらえない。状況は悪化していき玄関に鎖と南京錠をかけられる。監督が数十年にわたり記録した映像作品

これを「絶対に見たいぜ」と思ったのは統合失調症の症状に近い様子の友人がいるからだった。映画を見た後ではちょっとまた友人の印象は変わってくるが、久しぶりに友人と会った時の私の感想は「もうこれは無理だ」だった。

病名は友人からの自己申告で、私は素人なのでその判断はできないが、久しぶりに会ったその友人はもう以前の友人とは違う人間になっていたし、「友人」という関係性では介入できる問題では無い、と強く思った。
もう団体行動は不可能だったし、二人きりで長時間彼女と接する事にも耐えられないだろうと感じた。

鬱で病院に通っている友人もいるのだが、その友人とは、距離感をはかりながら、相手の気分や体調を尊重しつつ、微力でも寄り添う関係性を続けていけたらな、と思ったが、統合失調症(と思われる様子の友人)はそれとはまったく次元違うもので、かなり、意思の疎通が無理、と思った。

これは家族でなければ介入出来ない。と思ったので、この映画は絶対に観たい、と思ったのが、きっかけです。

映画で姉が占いに激ハマりしていたところで、私の友人も
また占いに激ハマりして、朝起きたら長文のラインが30件とか来てた事もあった、というのを思い出した。
私の星が金星にはいるのでなんとかの気流が活発に…ピュンピュンで…など、全然わからなかったが、とにかく熱意はすごかった。
そういったラインを色んな人にして関係性を終わらせまくっていたのも、手紙のシーンで思い出したりした。

一緒に映画館に行った友人にも、身近に同病の知人がいて、お互いに思う事はそれぞれあったのだが、出た感想は病気のこと以上に「家族のこと」ばかりだった。

父親のこと…医師として研究者として輝かしい功績を残し、葬式の辞すら論文の事を話し、姉の受験勉強を結果が出てない故「頑張ってない」と言い、この状況下でも家族に裕福な暮らしを与え、閉じ込めている中年の娘を小さな子どものような態度で接する姿…
母親のこと…全ての決定権を夫に委ね、娘の世話に半生を費やし、息子に説得されても耳を貸さなかった、その真意が聞けないまま痴呆が入ってしまったこと…

姉を外に連れ出し病院に行く、という息子に対し、母は「そんなことをしたらお父さんは死ぬ」と言い、父は「お母さんが嫌がったから娘より妻を優先した」と言う

私は独身なのでどうしても監督、弟の立場で感情移入してしまい、最後にみんな車椅子になった時、あんなに「お前には関係ない」「お前が口出す問題じゃない」といった態度だったのに、結局世話になるんじゃないか!!!!!とか、なんで耳傾けてくれなかったんだよー!!などを思った。
姉の葬式のシーンの父のスピーチで「ある意味では充実していた人生」と言い、棺桶に姉に(恐らく強いて)書かせた論文を一番いい位置に入れていたのを見て「『父親』という業~~!!!!!」と失神しそうになった。

ありスパですごく明快に語源かされていて、流石です!!!!!!!!になった。父親の言葉に対しての「世代」「価値観」というものなど…

「見に行かなきゃ。人は死ぬから」という破壊力のある言葉で映画館に向かわせてくれたたろちんさんの感想も良かった。

色々感想を読んだけど男性と女性で結構差が出てたのもおもしろかった。
多かれ少なかれ、「父親に抑圧されたという実感がある娘」の経験がある女性の感想はかなり共感して読んでしまった。

・配信をしないという選択と時代性

昨今、「すぐに配信されるから映画館は高いしいいや」と言われ映画館が大ピンチと言われてるが、ドキュメンタリー映画で被写体のプライバシーを守り、誹謗中傷から守る、というのは「逆に」でもあり「たどり着いた必然」でもあるな~~と感じた。ネットで見れるようになるというのは、スクショを貼られ、動画を転載される事からもう逃れられない時代になっている。

すごく良いな、と思ったし、もっと映画館に行こう、と思った。被写体を守るのはもちろんだけど、映画館も守られていくと嬉しい。

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太郎
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