短編小説。ゴリラのゴロウ。
淡い桜の花が舞う春の日、16歳の女子高生のミツキは動物園を訪れていた。
ミツキはゴリラ「ゴロウ」という名前の個体に目を留めた。
ゴロウはミツキの父親に瓜二つの顔をしていて、ミツキはその姿に驚きと感動を覚えた。
ミツキの父親は去年、不治の病で亡くなったばかりだった。
ミツキは毎日のように動物園を訪れ、ゴロウの前で過ごす時間を増やしていった。
ゴロウもミツキに興味津々で、ミツキが来るといつも大きな目でミツキを見つめていた。
ある日、ミツキは動物園でゴロウが病気になっていることを知った。
ミツキは心配でたまらず、ゴロウの前で涙を流した。
ゴロウもまたミツキの姿を見て、心配そうに鳴き声を上げた。
ミツキは自分の気持ちを抑えきれず、ゴロウの病室を訪れた。
ゴロウは弱っていたが、ミツキの姿を見るとゆっくりと近づき、手に優しく触れた。
ミツキはゴロウの目を見つめ、心の中で「ゴロウ、大好き」とつぶやいた。
すると、ゴロウはミツキに寄り添い、優しく頭を撫でる仕草を見せた。
ミツキは驚きながらも幸せそうな笑顔を浮かべ、ゴロウに感謝の気持ちを伝えた。
ゴロウはミツキの手を舐めるような仕草を見せ、寄り添ってくれてミツキは嬉しかった。
その後、ゴロウの容態がますます悪化し、ついには亡くなってしまった。
ミツキは深い悲しみに包まれ、動物園を訪れることもできなくなってしまった。
ゴロウがいなくなった動物園は、ミツキにとっては空っぽで寂しい場所になってしまった。
しかし、ある日、動物園で友達になった女性の飼育員から連絡があり、動物園に呼ばれた。
ミツキは戸惑いながらも動物園に行くと、そこには新しいゴリラの赤ちゃんがいた。
友達はミツキに微笑んで説明した。
「この子はゴロウの子供です。以前、ゴロウは別の動物園にいて、その動物園で子供を作ってたんです。それで、昨日からウチの動物園に新しいゴリラとして引き取ったのです。ほら、ゴロウに似てるでしょ?」
ゴロウにそっくりでした。
ミツキは目を疑いましたが、赤ちゃんゴリラはミツキに、にっこり笑いかけていました。
ミツキはゴロウの血を引く子供がいたことに感動しました。
名前は「ゴロスケ」というようです。
ミツキはゴロスケを見守りながら、動物園に通うことにしました。
数年後、ゴロスケは立派な大人のゴリラに成長し、ミツキも大学生になっていました。
ある日、ゴロスケの前に立つと、彼はミツキをじっと見つめました。
そして、ゴロスケはミツキに微笑みかけ、手を伸ばしてミツキに触れました。
ミツキは涙を流しながらゴロスケに感謝の気持ちを伝えました。
「ゴロスケ、あなたがここにいてくれて、本当に嬉しいよ。」
すると、ゴロスケはにっこり笑って、ウホウホと言いながら胸を叩いて喜びました。
それ以降もミツキはゴロスケに会いに動物園を訪れ、彼との絆を深めていきました。
ゴロスケもまたミツキを大切な存在として認識し、いつも彼女を見守っていました。
ミツキはゴロウがいなくなった悲しみを乗り越え、新しい幸せな出会いを見つけたことに感謝し、ゴロスケとの時間を大切にしました。
ミツキは動物園での日々が自分自身を成長させ、新しい経験や学びを得る場でもあることに気付きました。
そして、ミツキは大学卒業後、動物園の飼育員として働くことを決めました。
動物たちとの触れ合い、世話を通じて、動物たちの幸福と保護に尽力しました。
特に、ゴロスケとの絆は深まり、彼はミツキの大切なパートナーとなりました。
ミツキの情熱的な働きぶりは評価され、動物園の中で重要な役割を果たすようになりました。
ミツキは動物たちのために新しい施設の設計や環境改善にも取り組み、動物たちの生活をより良いものにするために努力しました。
そして、ミツキの情熱と努力が認められ、動物園は国際的な動物保護団体からの認定を受けることになりました。
ミツキは感謝の気持ちでいっぱいで、ゴロスケも彼女を誇らしげに見つめました。
ミツキは今でも動物園で働きながら、ゴロスケや他の動物たちとの絆を深めています。
そして、ゴロウの思い出は彼女の心の中でいつまでも輝き続けています。