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お酒が好きだったのにほとんど飲まなくなった話

ふと、5年前とか10年前のことが懐かしくなる時がある。そんな時がたまに巡ってくる。

急に、あー飲みたいなあなんて思って「今夜ひま?」なんて連絡して、飲みに行ったりとか、
次の日なんておかまいなしに夜遅くまで飲み続けたりとか、なんでもない話をずっとし続けるみたいな、そんな日が懐かしくなる時がたまにある。

今それなんだけど、そういえばいつからわたしはお酒をほとんど飲まなくなったんだろうと思った。

お酒は好きで、
飲み始めた頃から、たぶんどれも割と好きだった。
ビールも日本酒も果実酒も、ジンは特に好きで、ワインとかウィスキーもたまに飲んで。

10年くらい前、
大学生の自分にとってはお酒=好きな人たちと集まれる場所って感じだった。
お酒が好きっていうよりも、その場が好きだったんだと思う。

一人暮らしの家の周りには、同じく一人暮らしをしている友達や先輩たちがたくさんいて、
毎日誰かと一緒に過ごしていた。

授業が終わって、「今日宅飲みしない?」って
そのまま近くの安いスーパーに行って、鍋とかタコパの材料買い出したりして、
だいたいうちがちょうどいい場所にあったからうちでやることが多かった。
みんなで作っていい感じに食べて飲んで
電車で帰らなきゃいけない人から先に帰って行く。
歩いて帰れるメンバーで、カピカピになったチータラとか残ったお酒とかつまみながら、あてのない話をする。

大学の話とか、大学では文学をやっていたから、文学論についてずっと話し続けることもあった。
もっと、出会う前の話をすることもあったし、
それぞれがぽつりぽつり話し始めて、気づくと空がもう白んで朝日が昇り始める。

ちょっと眠そうな顔で、おやすみって言いながらみんなが帰っていく。一人になった部屋でカーテンを閉めて、人がいた気配を感じながらゆっくり眠りにつく。


サークルの先輩たちとも仲が良くて、
サークルの後は必ず飲みに行っていた。

公園のそばの焼き鳥屋さんが定番で、
そこでも時間なんて気にせず、好きなだけ飲んでいた。サークルは火曜日だったと思うけど、たしか水曜日は一限から入っていたと思うけど。

店を出ても飲み足りなくて、先輩に甘えて家までついてって飲み直すこともあった。

いつも誰かの家にいたし、
いつも誰かが家にいた。

それがどれだけ心強かったかは、社会人になってから知った。高校生までは、誰かと過ごすなんてできないタイプだと思っていたのに。

当時カミングアウトはしていなかったけど、
そこを隠していたとしても、ただただ自分の思うことを話して聞いてもらえる場所が、自分にとってどれだけ大きかったか。

社会人になるとまたお酒の席も変わってくる。
最初に入った職場が、体力オバケと肝臓オバケの集まりみたいなところだったから、
仕事もハードで、夜10時とかまで仕事する上に、飲みに行くとなったらもう終電なんて気にしない、夜中にタクシーで帰ることになるか、朝方もう始発が出ていてクラクラすることもあった。

だけどその頃の自分は、とにかくいろんなことを知りたかったし学びたかったし話したかったから、飲みの場も好きで行っていた。女性が多かったし、大学時代のメンバーがみんな地元に帰っちゃっていたこともあって、職場の飲みでいろんなものを埋めていたような気もする。

その頃にはもう、当時付き合っていた人と住んでいた家に帰りたくなかったのもあったのかもしれないし…。

なんて、いいところだけを切り取って書くとこんな感じになるけど、
大学生の頃も社会人なりたての頃も、同性に囲まれていて、わたしはボーイッシュで、ちやほやしてもらえることも多かった。

それがたぶん、気持ちよかったんだろうなあとも思う。それだけじゃないけど、それは大きい。大学生の自分の肯定感はそういうところにあったような気がする。

そしてお酒を飲むのは、ひそかに好きだった人と会うための手段でもあったから。自分のことを男の子みたいに扱ってくれるたびに、自分でもよくわからない自分のことを、好きでいられたような気がする。

大学生の頃なんて、彼女もいなくて、この先自分は誰かと出会えるんだろうか、かと言って男性とは付き合えないし、みんな結婚を見据えてとか言い出す頃になっているのに、

内心、付き合っていた女性を男性に置き換えてみんなと恋バナなんてしてる場合じゃなかったし、恋愛も将来も全然わかんない中で、
永遠に続けばいいのに、と思うようなこのぐだぐだした時間をギリギリ朝日が昇るまで続けていたんだと思う。

そしてそれを、社会人になっても、運良く続けられて、定期的にお祭りがあるみたいな職業についたもんだから、余計に学生気分が抜けないまま、体力にまかせて過ごしていた。

でも終わりはくるんだよね。
明確な終わりはわかんないけど、
働きすぎてある日突然電車に乗れなくなった日とか、
当時付き合っていた人と別れて友達とも離れたとか、
友達が結婚し出して子ども産まれて急に飲みに行くなんてこともなくなったとか、
コロナ禍になったりとか、

たまたま、転職とか年齢とか世の中の出来事とか、そういうものがうまく合致しちゃって、
気づいたら全然飲まなくなった。

今の彼女とは、ほとんどお酒を飲まないけど、
一緒に美味しいものを食べるのが好きで、
旅行するのも好きで
だけど家で梅酒とかを作って楽しんだりもするし、
たまに一緒に飲む。旅先で飲むのもなんとも言えず好き。
共通の友達と飲むのも楽しいし、一緒にホテルステイする新たな楽しみもできた。

20代の終わりとともに、身体もずいぶん変わってきて、32になった今では全然体力がない。
楽しいことをする体力はあるし、
たぶんやったらやったで楽しいけど、もう夜遅くまでは外で飲めない。

今はまったりゆっくりが合っていて、
仕事でがんばりすぎるのをやめたり(できてないことも多いけど)したのと同じように、食べ方や飲み方や、人との付き合い方も変わってきた。というか出会う人も変わった。

そんなに大きな変化は起こってないような気がしていたけど、日々積み重ねていくとこういうふうに変わっていくんだなと不思議。

あの時間は最高に楽しかったけど、今はもう深入りしないみたいな。全然別の場所にあるんだなあとふと思った。

これから先どんなふうにまた変わっていくのかわかんないけど、何年先も、彼女と一緒に楽しくやっていけたらいいなと思う。今はそれが一番。

なんだかなんのまとまりもないけど、今思うことを書いてみたよ。

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