見出し画像

転職してからの日々 11月

11月1日(金)
前職を退職してちょうど一年経った。
飯田橋の小さな出版社に今年の4月にアルバイトで入社して、そのまま7月に正社員登用されて4ヶ月。出版社の営業として少しずつ環境に慣れてきたのでまた日々のことを綴っていこうと思う。

前段として、定職についた日からの4ヶ月間のことをかいつまんで説明すると次のようになる。
8月末に発売された『改訂新版 東京わざわざ行きたい街の本屋さん』という本の編集サポートがアルバイトの主たる業務だったので、8月に入ってからはその新刊の営業で都内の書店を回っていた。書店営業は初めてだったが書店営業を出迎えるプロではあったので、書店営業としてあるべき姿を想像して書店さんを廻った。
出版社に入社して分かったことだが、営業職といっても仕事は書店を回る営業だけではなく、営業のための準備をしたり経理処理をしたりと、書店に営業でいかない時間のほうが実は長い。これは小さい出版社だからかもしれないけれど。
街の本屋さんの販促としてイベントの準備に追われてもいた。何十枚とパネルを作成していた。印刷した紙をノリパネにきれいに貼ってパネルを完成させるのだが、パネル作成が採用試験に出されたら間違いなく合格するだろう。様々なことに追われてあっという間に4か月が経った。
そうして季節は変わっていく。

11月2日(土)
奥多摩ブックフィールドに参加してきた。
今回はコンテンツがたくさん組まれていて1年で一番盛り上がる日になるはずだった。が、あいにくの雨模様でちょっと興が削がれた。
奥多摩ブックフィールドは東京の西の端にある古書店で、前々から気になっていてタイミングが合ったので9月にふらっと寄ってみて、そのときに主宰のどむかさんに今日のイベントを紹介されたのだ。
本好きで少しやんちゃな感じの大人が山奥に集結していてなんだかおもしろかった。

11月3日(日)
昨日とは打って変わって天気が良く、久しぶりに荒川の土手まで行ってきた。あそこは空が広くて気持ちがいい。自転車で遠出したくなった。
紅葉狩りに自転車で行くか。

11月5日(火)
連休明けで細かいタスクが詰まっていて、メモ帳に書き出したそれらのタスクをひとつ終わったら斜線を引いて、ひとつ終わったら斜線を引いてと繰り返し、明日に回せるもの以外はあらかた片づけた。
帰りにコートを一着買った。スーツを着る文化に慣れていないので、スーツに合うアイテムを少しずつ買ってはいるんだが、なかなかの出費だ。
まともな大人に擬態するために必要な経費だと思って諦めた。

11月6日(水)
イベントの実施に向けて書店様と打ち合わせをしてきた。柏の葉にいたときには時々イベントを開催していたが、収益よりも集客を優先させていたので、今日のようにしっかりプラスになるようにどのようなイベントにすればいいのかを話し合うことができてとても有意義だった。
なんとか実現させたい。

11月7日(木)
今日と明日の二日間、丸の内BOOK CONという丸善丸の内本店が主催する、一般のお客様向けのイベントに弊社も出展している。今日は売り子として精いっぱい接客に勤しんだ。明日も同じ場所で開かれる。
対面接客はやはり楽しい。

11月8日(金)
昨日に引き続き丸の内に出勤。
弊社のブースはオアゾの1階にある広場の入り口にあるので、通行人からの視認性は非常に高い。しかし丸善の中に配置されている版元と違って本を買いに来た人が目の前に来るわけではないので、いかにして本に(このイベントに)興味を持ってもらえるかが鍵になる。
今回イベントに出店するにあたり、社内のデザイナーさんにお願いして丸の内周辺のお散歩マップを作成してもらった。このお散歩マップを配布することでブースへの誘導を促すわけだ。
このマップ配布作戦は好評だった。こちらから話すきっかけを作れたし、貰った人も使い道があるので喜ばれる。おかげさまで今日は昨日より配布できた。
神保町の時のような阿保みたいな売り上げにはならなかったけど、人の前に出て販売をすることで会社の認知度が少しでも上がってくれたら嬉しい。

そして今日は『東京のおいしいボタニカルさんぽ』発売日だった。
アルバイトで入社して初めて関わったのが『東京のおいしいボタニカルさんぽ』で、この本と和氣さんの本がなかったら今の俺は居ないわけで、丸善さんの旅行ガイド売り場で平積みされてるのを見て嬉しくなった。

11月9日(土)
川越の『コネコノヒタイ』という絵本屋さんに行ってきた。
きっかけは神保町ブックフェスティバルで、ライツ社の高野さんに紹介してもらった江口ノリコさんの原画展が開催されていることを知ったことで、これも何かのご縁だと思い行ってきた。
店主さんや遊びに来ていたお客さん(フランス語の翻訳家の方)と色々話ができて楽しかった。おふたりとも『わざわざ行きたい街の本屋さん』をお持ちで、いつもリュックに忍ばせていたこの本が名刺代わりになった。
共通の知り合いがいたりしてあちこちが繋がってることが分かり面白かったな。

11月10日(日)
先日の丸の内BOOKCONで、旅行好きなお客さんが弊社のブースに来てくれた。お客さんの好みに合うと思ったので『街の本屋さん』を勧めて、それと合わせて旅行書を多く揃えている街々書林さんを紹介した。
そのお客さんは本を買ってくれて、なんと次の日にその街々さんに行かれたそうで、店主の小柳さんさんからお礼の連絡が届いた。
紹介したお店にすぐに行ってくれたお客さんにも、そのことを教えてくれた小柳さんにも感謝しかない。なんだか嬉しかった。

11月11日(月)
今日から3日間、BOOK EXPO(書店大商談会)に合わせて関西出張だ。仕事で関西に行くのは8年ぶりとなる。
「すーさん、もう文具はええやろ」
とその当時の上司に声をかけられたのが2016年10月のこと。(異動か)と察するくらいにはCCCの働く環境に慣れてしまっていたが、枚方蔦屋書店を立ち上げて半年、一年で一番売り上げが見込まれる年末商戦を待たずに異動することになるとは夢にも思わなかった。
あれから8年。帰ってきたぞ関西。

今回の出張では、EXPOでお会いできなさそうなお店を回ることを念頭に置いていた。営業で訪問できる書店は限られてしまうので、本部の方と交渉できそうなチェーン店は個別訪問よりも本部対応を優先させる。とはいえ今の関西の潮流を知っておきたいので回れるところは視察をしておく。

1日目はこんな感じで書店を回ってきた。
大垣書店京都本店
大垣書店烏丸三条店
ふたば書房御池ゼスト店
京都岡崎 蔦屋書店
丸善京都本店
京都 蔦屋書店
枚方 蔦屋書店
TSUTAYA香里園店

関西の蔦屋書店にはどこの店舗にも知り合いがいるので、転職したことの報告も含めて全店顔を出した。枚方はTSUTAYA枚方駅前本店のころに一緒に働いていたスタッフさんがまだ何人か働いており、久しぶりに顔を合わせることができた。担当社員はBOOK担当の仲間だった後輩で今日はお休みだったので、注文書をスタッフさんに託した。
しかし枚方蔦屋書店はどんどん変わっていくな。
T-SITEの模型の中に、発泡スチロールで作った什器の模型を立てて入り口からの見えかけをシミュレーションしたり、1階、3階、4階、5階に分散させた書籍の売り場のゾーニングを考えたり、毎日戦場にいるような気持で立ち上げた売り場が3階に縮小集約されていくのを見るのは少々さみしいものがあるが、今いる人たちがその時々で売り場を変えていくのがお店の本質だと思うので、老兵は何も言わない。

枚方の次に立ち寄った香里園店はちょうど今日リニューアルオープンで、2階にシェアラウンジと三井住友銀行が出来ていた。丹精込めて作りこんだコミック売り場が今は銀行の窓口になっておる。。。何も言うまい。。。

11月12日(火)
BOOK EXPOに参加してきた。2016年に書店員として参加して以来実に8年ぶりだ。しかも今回は出展者側として。
大阪は東京の商談会に比べるとホーム感があっていい。あちこちから書店員仲間が弊社のブースに立ち寄ってくださり、東京の会場であった孤独感を味わうことはなかった。久しぶりにあった皆さんにお互いの近況報告をし、商品を紹介して、今後は新刊の案内を送ることを約束した。

商談会終了後、商談会に一緒に参加していた上司の峯尾さんは日帰りだったため大阪駅で解散し、せっかく大阪に来たのだからと中崎町にある書肆アラビクさんに寄ってきた。
アラビクの店主森内さんもOSKメンバーの一人だ。一時期OSKの開催日を水曜日にしていたのは水曜日がアラビクが休みだったからで、それを知っている人は少ないかもしれない。
広報担当だった今井さんは店長になっていた。
3人で話していたら楽しすぎていつの間にか閉店時間を過ぎていた。森内さんと今井さんからいろいろと話を伺ったが、梅田の再開発によって北ヤードが盛り上がっている反面、茶屋町からは多くのテナントが撤退していてやばいという話が一番記憶に残った。同じ業界内でパイの食い合いになっているのは書店業界だけではないようだ。

11月13日(水)
今日は大阪市内を回ってきた。寄った書店は以下の通り。

TSUTAYA BOOKSTOREリライズ
MALZEN&ジュンク堂書店 梅田店
ヴィレッジヴァンガード梅田ロフト店
紀伊國屋書店梅田本店
ブックファースト梅田2階店
梅田 蔦屋書店
紀伊國屋書店グランフロント大阪店
有隣堂グラングリーン大阪店
ジュンク堂書店大阪本店
TSUTAYA EBISUBASHI
丸善高島屋大阪店
旭屋書店なんばCITY店
ヴィレッジヴァンガードなんばパークス店
正和堂書店

営業で回るというよりも視察して現状を把握するほうが多かった。近いうちにまた関西に行くことがありそうなので、今回視察した書店で気になったところは再度行こうと思う。

11月14日(木)
今日は下北沢のヴィレッジヴァンガードを訪問してきた。ヴィレヴァンに相性がよさそうな著者さんの本の紹介で伺ったが、担当者様がお休みだった。明日出勤されるとのことなのでまた明日伺いますと言伝をお願いして退出。
明日は実のある話ができるといいな。

11月15日(金)
昨日に引き続き下北沢のヴィレッジを訪問。ヴィレッジヴァンガードの中の人たちは、自社のことをヴィレヴァンとは呼ばずヴィレッジと呼ぶらしい。先日アラビクの森内さんから教えてもらったので早速そう呼ぶことにする。
今日は担当のHさんが出勤されていたのでご挨拶をした。バックヤードから顔を出されたHさんを見て「あ、この人知ってる人だ!」と気づき、Hさんは業界の超有名人で逆になんで気が付かなかったんだ、と内心焦った。
Hさんには来年発売予定の本について案内を差し上げた。ヴィレッジの方と面識を持てたことは大きい。

11月16日(土)
今日は一日家でのんびり過ごした。

11月17日(日)
天気が良いので立川の国営昭和記念公園に行ってきた。
紅葉の季節はおでかけが楽しい。

11月18日(月)
システムの説明を受けに外出し、その足で錦糸町のくまざわ書店を訪問。旅行ガイド担当のKさんがいらっしゃったので新刊の案内をする。ちょうど平台に置くものを何か探していたようで、「ちょうど相談したいことがあったのでよかったです」と言われたことが今日一番嬉しかった。
少しずつ顔が見える相手が増えていくことがまた嬉しい。

11月19日(火)
午前中にフェア用のパネルを何枚か作成して、倉庫に送った。
午後は他の版元さんと打ち合わせが2件。1件目の商談が終わったあとに「実は元書店員でして、関西では貴社の◯◯さんにお世話になっておりました」と言うと、「あ、やっぱり。もしかするとTSUTAYAにいらっしゃいました?」と返された。
SNSを実名でやっているのでそういうことはある。だからこそSNSの投稿は注意しているつもりだが、不意にこういったことが起こるのでほんと気を付けよう。びっくりした。

11月20日(水)
今日は東海道線沿線を訪問。
茅ヶ崎から始まり、川上書店さんと長谷川書店さんで新刊とお薦めの本を紹介し、それから横浜に向かってひと駅ごと進みながら書店を回ってきた。
雨の中外回りするのは初めてで、傘を開いたり閉じたりするのは結構手間がかかる。冬場はコートも着脱するのでスマートな手順を会得したいものだ。

夜は横浜で開催された「本にかかわる人の交流会」に参加してきた。会に参加される方々とはほとんど初対面で、とても緊張した。
気心の知れた仲間内で楽しそうに話している方たちを遠めに見ながら、OSK(大阪書店員懇親会)に初参加される書店員の方たちが会にそっと馴染めるような雰囲気を我々古参メンバーは作れていただろうか、と昔のことを思った。
自分から話しかけるのは苦手なので、何度も会に参加されている作家さんたちの中で少々気後れしながらそっと端のほうでジンジャーエールを飲んでいたが、それでも少しは話ができ、なんとか場に馴染むことはできた、かもしれない。次に開催されるときにはもう少し話ができる人増えるかな。今日ご挨拶した作家さんの近刊は買って読んでみようと思う。

11月21日(木)
昨日の交流会に『街の本屋さん』持ってけばよかったかもな。弊社の名前知られてなさすぎな現実を知ったわ。 むしろOSKの方が知られていたと言う…

11月22日(金)
夜、業界の忘年会に参加。書店員時代にお世話になった方と何人か久しぶりに再会。版元の営業になったことを報告。繋がりは大事。

11月23日(土)
今日は勤労感謝の日。
勤労感謝の日は、俺にとっては働ける場があることに感謝する日だ。そして仕事がなかった期間も支えてくれてた妻や、応援してくれた方たち、社員に引き上げてくれた社長と上司にも感謝してる。

今週仙石にオープンした「旅と暮らしの本屋 アンダンテ」さんに行ってきた。当然のことながら産業編集センターさんの本が在庫の多数を占める中、弊社の本も何点か置いてくださっているのを発見。
『東京わざわざ行きたい街の本屋さん』は面で置いてくださっていた。有り難いことだ。
棚は旅に行きたくなるような棚がメインで、目的買いするようなガイド本はレジ前にまとめられていた。
自転車とラーメン好きの私にぴったりな本を購入。石田ゆうすけさんの本は相性が良いみたい。
今度は営業でお伺いします。
セレクトされたお店にどれくらい自社本を提案できるかは腕次第といったところだろうか。

11月25日(月)
自分用に営業管理シートを作成した。訪問した先で話した内容を書店ごとに残すもので、カレンダーと連動させてどれくらいの頻度で訪問しているか後からわかるようにしている。
8月から本格的に書店営業を始めたので、8月に遡ってノートやGoogle keepに残したメモをまとめているがなかなか終わらない。ただ、頭の中を整理するのにも役立っている気がするし、こういった作業は苦にならない。

11月27日(水)
池袋にある版元さんと打ち合わせ。
商談が進み、だんだん打ち解けてきたころに「実は元書店員だったんです」と打ち明けると、「もしかしてTSUTAYAの方ですか?」と返された。今月これで2回目。どうやらTwitterで名前を見たことがあったそうだ。
Twitterは自分の発言に責任を持つつもりで本名でやっているので、まあそういうこともあるけど、あんまり変なこと呟けんな…

商談が終わった後、ジュンク堂書店池袋本店にPOPを届ける。
いまだに旅行ガイドの担当の方に会えていない。また近いうちに訪問しよう。

11月28日(木)
東京堂書店に企画の提案を持っていく。
来年実現できれば良いなと願う。

11月29日(金)
午前中は会議に参加し、午後は伝票入力。伝票は溜めてしまうと破壊力が増すので少ないうちに対応すべし。

11月30日(土)
リアルでもTwitterでもつながっている書店員の方が主宰された「ゆるっとPOP会」に参加してきた。書店員向けの集まりだったけど、弊社の販促にも役立つと思い参加したのだ。
今書店の現場では、POPをつけたり独自の仕掛けをしたりすることが難しい店舗が増えてきている。どうしても経営目線で見ると費用対効果はどうなんだ、と見られてしまうからだ。
私も書店員時代には、POPを作って売り場に設置すること自体が目的になってないかは気にするようにしていた。Twitterなどで見かける他店の売り場がそう見えることが度々あったからだ。
POP作成と現場のモチベーションは実は密接に繋がっていて、自己満足まで没入しないようコントロールしつつ、POP作成に自由度を持たせることは売上貢献になっているのではないかと考えている。
自分が担当していた店舗では割と自由にさせていたけど、そうではないお店(会社)で働いている書店員の苦しいつぶやきを見ると何とか手伝えることはないものかと思ってしまう。
そんなことをつらつら思いながらアジの立体物を作っていた。

いいなと思ったら応援しよう!