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七夕、地球にいることを忘れた39分間

一日中ひっきりなしに警報を告げるアラートが鳴り響き、マンションの一室で娘とふたり、心細い時間を過ごした。娘が初めて迎える七夕、短冊でも書いてみようと思っていたのに とてもじゃないがそういう気分にはなれなかった。

そんな中、いつもなら20時すぎに帰宅する夫が今日は早く帰ると言う。「早くってどのくらい?」と聞くと「18時半」と即答した。
理由を「ライブが見たいから」と語るものの詳細を口にしなかったため、てっきりAmazonプライムやNetflixで気になるライブ配信でもあるのかと思っていた。

この大雨で家の周辺の道路は一日渋滞、仮に夫が18時に会社を出て車を走らせたとしても30分では着かないだろう。早く帰ってきてくれればそれだけ育児の負担も軽くなるため、理由はともあれ夫の帰りを心待ちにしつつ、特に時間を気にせずいつものペースで夕飯を作っていた私。19時過ぎに完成できればいいかな と思っていたところ、驚くことに夫は18時半過ぎに帰宅した。(一体何時に会社を出たのだろう……)

いつもは帰宅するなり玄関で服を着替え 念入りに手を洗い 例のウイルスの感染予防に努める夫が、今日はマスクをつけたまま猛ダッシュでリビングに転がり込み、テレビにパソコンを接続しはじめた。

ここで私はようやく夫の言う「ライブ」が「生配信」であるということを察する。誰のどんなライブなのか気になったが、手元では味噌汁が沸騰したり離乳食を人肌にあたためたり。夫のほうもテレビとパソコンがきちんと連携するよう必死で回線(?)をいじっており、聞ける雰囲気ではなかった。

時刻は18時50分。
テレビから聞こえるサウンドに思わずフライパンから目を離す。引っ越してからというもの、リビングと対面式のキッチンになったことで、料理をしながらテレビが見れることは本当にありがたい。

夫が超特急で帰宅したライブの正体とは、作曲家・菅野よう子氏率いるスーパーバンドSEATBELTSの一夜限りのライブ「YOKO KANNO SEATBELTS オンライン七夕まつり」だったのだ。

面白いことに、全世界同時配信で、かつ後追い視聴は一切できない。……ということを私はライブ終了後に知ったので、夫よ、せっかくなら教えておいてほしかった。

なにはともあれ、本当に素敵な時間だった。
あっという間に終わってしまったような気がしたが、それもそのはず、時間にして39分のライブだった。この時間設定にも驚かされる。後追い視聴ができないコンテンツで、仮にライブが3時間もあると途中離席してしまったり、時間的にお風呂に入ってしまったり、ステイホームならではの悪いところがでてくるだろう。学生の1コマ分の授業よりも短い39分という時間に魅力をたくさん凝縮して、しっかりと集中してスーパーサウンドを聴かせてもらえるとても素敵な時間だった。

中でもアンコールとはいえ「ライオン」が聞けると思わず、文字通りこころが震えた私である。

これは愛猫「シェリル」が本家を見つめる様子。

せっかくならその後ろの大きなテレビで見れば良いのに、手前のちいさなパソコンを眺めているあたりが正しく猫ちゃんという感じで愛らしい。

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あともうひとつ、バンドをやっていた身としては「ステージで行うライブ」もさることながら、一流のアーティストがスタジオに集う形で演奏している光景も新鮮だった。


最後に、驚くべきが今回の“ライブ”のテーマである。
「地球上にいることを忘れる39分間」。

そうか。あの時間、私は福岡に居たが、地球上には居なかったのだ。こころココにあらず。無論、良い意味で。

音楽に助けられて気持ちが少し軽くなった今、依然強いままの雨音を聞きながらこのnoteを執筆している。


今日という1日のしめくくりに菅野よう子さんが居てくれてよかった。ここに書いても伝わらないかもしれないから、ファンレターとまではいかなくとも もしSNSがあるなら一言感謝のリプライを送りたいほど、楽しい時間を過ごさせていただいた。

どうか1人でも多くの人が安全なまま夜が明けますように。
おやすみなさい。

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2020/07/08 こさいたろ


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