美容室に行くと恋人ができるという噂

「山口さんって髪切りました？」
OLっぽい女子が会社の先輩と思わる男性と話している。
ランチタイムのコンビニエンスストア。
「そうなんだよ、やっと先週切ってきたよ」
「わたしも先週切ったんですよ」
「え？キミちゃんも？奇遇だね。だからか。いつもよりカワイイと思ったんだ」
お昼の休憩時間。
先輩後輩のやりとり。
聞いていないフリをしつつバッチリ聞いているボクも先週髪を切ったのだよ。
美容室に行った人など珍しくないのだよ、山口君。
だからキミちゃんが美容室に行ってたとしても、それは奇遇でも何でもないのだ。
激しい嫉妬心を抱きながらの接客も二人はどこ吹く風。
なんて楽しそうなんだ。
「髪型ってどんなのが好き？」
「う～ん、そうだなぁ。山口さんは？」
今、目の前のふたりは恋が始まってしまうんじゃないかってぐらい髪型トークで盛り上がっている。
「フ、フ、フ。店長、この攻撃を受けてみろ。アフタートリートメント！！」
「く！美意識高いな山口！」
「店長、お前の負けだ」
「山口、甘いな。お前は気が付いていないだろうが、ボクはパーマもかけたんだ！行くぞ！スパイラルパーマ！」
「これ。ください」
ふと気がつくとカウンターに昆布おにぎり一個置かれていた。
「坊主の男の人ってカワイイですよね」
キミちゃん・・・
女心に翻弄される山口と

店長です。