「有名になったから醒めた」ってアレについて考える
考えている。
私はタイトルのそれが信じられなくて、好きなバンドやアイドル、俳優さんが有名になればなるほどただただ嬉しいんだが、どこの界隈にも必ず存在する「有名になるのが嫌」という人の心理状況について。
「共有される範囲が媒体によって広がって行くので、独占欲が満たせなくなる」という観点から語られていて、バンドマンや俳優さんなどがSNSなどで「遠くに行ったりしないから」などと言及するのも見たことがある。
ロックバンドの人は精神そのものもロックであることが多々あるので、「そもそもお前らのものじゃないから、そんなことで離れていく奴は離れていけばいい」と過激なことを述べる人もいる。
確かにその意見一理ありそうなんだが、私はもっと別のところに原因があると思う。
それは、「一方的供給の増加による疲弊」であると考えている。
我々は好きなもんでも食い過ぎると飽きる。
バンドやアイドルを黎明期から応援している人間は、供給網が少ないために自分から公式サイトを見に行き、更新の少ないSNSをフォローする。
バンドマンとか特にそうだけれど、黎明期はTwitterなどでメッセージを送ると返事を返してくれたりすることもある。
これがどんどん有名になっていくと、情報の供給量が増えていき、求めている色んな人に、求められているものを拡散するためライブ会場は大きくなるし、SNSのフォロワーも爆発的に増える。
そしてファン心理の対象である当人はコミュニケーションを一人一人に対しては取れなくなり、双方からのやりとりから一方的な情報の配信へと変わっていく。
テレビをつけていても勝手にCMや音楽番組で出てくるし、YouTubeは開くだけでおすすめにアホほど出してくる。
ファンクラブのメルマガ、CD告知、オリコンランキング、雑誌の表紙…
「離れていくこと」ではなく寧ろ蛙化現象に近いものであって、次から次に情報があちらからくるシステムが出来上がってしまったときに、「お腹一杯なんですが!」となってしまい、「醒めちゃった」となってしまうのではなかろうか?と考えている。
自分から求めて取りに行っていた情報や作品があっちから勝手に(しかも今、この瞬間、聴きたいと思っていないタイミングで媒体や人の口から聴かされてしまう状態)来てしまう社会になってしまったら、それはそうなるよな……と。
~~~✨~~~
私はその点でKing Gnu, Official髭男dism, LiSAのファンの皆さんを勝手に心配している。すこし前までMrs. GREEN APPLEや米津玄師のファンも心配であった(全敬称略)。
彼らは今後も、ファンである対象を応援していかんとする精神状態にあるだろうか……好きであればあるほど、彼らの素晴らしい作品が社会に陳腐な形で浪費されていると感じて、悲しんでしまうかも知れない。
ものまねされていたり、歌ってみたされていたり、ライブに違う角度からのファンが来て空気が変わってしまったり……ということに戸惑い、露出がふえたことにより、録画容量が足りなくなっちゃったとか。全部見るの疲れちゃったとか。
所属する界隈で、いつの間にか情報は把握していることが義務になったり。
~~~✨~~~
口ずさんでいる町中の子供は、歌詞カードをくまなく読んだわけではないかもしれないし、そこのYouTuberはDTM音源を誰かから買って、再生回数のためだけに歌ってみた動画を出しているかも知れない。
あなたが好きなアーティストの軌跡を知らないかも知れない。
しかし、流れれば流れるほど音楽を提供している側からすると嬉しいことである。
そしてその「流行っている曲」からそのアーティストを本当に心から応援していく人は確実に増える。そうして彼らが歌い、演奏していく力になっていく。
公式は活動をしている以上、細やかなところまで人々に情報を提供する義務がある。なのでRTも増えるしインスタも始めちゃう。
なので我々は、ブームが落ち着くまで上手に好きなものの情報を「遮断」して生きていく必要がある。この状況をにこにこ遠くから眺めるが吉である。
往年のファンというものは、その辺が上手いのかも知れない。様々な界隈のファンと触れあってきた経験をもとに話してしまうと、彼らは意外なことに、最新のテレビ出演情報やCM起用情報に疎いことがある(ライブ情報・リリース情報のみは死ぬほど詳しい)。
テレビやYouTubeを見すぎずに、「そういえばあのバンド今何してるかな」くらいの気持ちでいれば、「醒めた」みたいなのは多分ない。ちなみに私はそうしている。
いいタイミングでツアーがあれば行けばいいし、ほしいグッズやCDが出てたら買えばいい。
好きなものを長く、好きなまま死んでいけるようにいたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?