よりみち
用事も済んだし、子どもとの面会も、急になると遠慮してしまったので、特に滞在する理由もないのだけれど、せっかくなので、丸1日道草を食むことにした。
いや、前回、畑多楽縁がどうこうって書いといて、今日ちょっとした企画やる日だから、昨日の時点で急いで帰れば間に合うじゃんって話なんだけどね、まあ、いいんです。
じいちゃんばあちゃんが元気だった頃に良く連れてもらっていた「国立科学博物館」。
また行ってみたい。と思いながらもなかなか行かず。子どもたち連れて行ってみたい。と思ってたら、離れて暮らすようになってしまって行く機会を無くした。
そんなこんなで、約30年ぶりとなる。
「いんよう!」と大きく描かれたTシャツを着て京成の電車で上野駅を目指す。
記憶の中の科博には何やら屋外に、圧力で水を飛ばす装置があったりしたのだが、当然のように無くなっている。懐かしいと感じたのは、外のクジラと日本館の建物の雰囲気と、大きな振り子くらいなものだった。
まして、最後に来たのが小学校低学年なものだから、恐竜の骨格標本とか、ボタン押すと何か起きる展示に「おお!すげ〜!!」ってなってる記憶しか無い。
常設展を端から順番にちゃんと見て回った。途中昼休憩を挟みつつ、5時間かけて、地球館地下3階に降り立つ。
これは順番間違えたな。
展示室に足を踏み入れるなりそう確信した。
よりにもよって1番小難しい原理原則の解説をしている展示を相手に、ボクの頭は疲れ切っていて展示内容の理解を拒否していた。最後の、日本科学史における偉人たちの成果や名言を展示するコーナーがあったのだが、これはもう素通りした。
無理です。勘弁して下さい。
今度は平日のちびっ子たちが少ない日に来たいな。と思いながらも、重たくなった頭を引きずりながらも、大満足で科博を後にした。
さて、せっかく上野まで来たのだし、もう少し足を伸ばして1度は行っておくべきだろうところに向かった。
高円寺は『小杉湯』だ。
山手線で秋葉原に出てから総武各駅に乗り換える。いろいろ道に迷うボクだけれど、この辺はもう迷うことは少ない。
『小杉湯』は、社会的処方の書籍にも紹介されているし、何より、あまのさくやさんに再三オススメされている。この機を逃すわけにはいかんだろう。
「まちカドかがく」と描かれたトートバッグには、ちゃんと、タオルとパンツと「匙に救われたシロナガスクジラ」が描かれているTシャツを入れてきてある。
小杉湯は思ってた以上に、昔ながらの風呂屋って感じだった。常連客っぽい人たちが、それぞれお作法がある感じに譲り合って、そう広くもない湯船で疲れを癒していた。
ボクは頭と体を洗い、汚れを落とした上で1番人の少ない湯船に足を突っ込み、後悔した。
あっつい。
ボクはねこ舌で、熱いお風呂も苦手な方だ。にもかかわらず、1番空いていたからという理由で、1番グツグツいっているお湯に突撃してしまった。
背中がチクチクする感覚に身悶えしながら、肌が熱さになれるのを待った。よく見ると、それこそベテランっぽい人が顔を真っ赤にして入っていた。と思ったら、立ち上がり、1番狭い湯船に向かって行った。
なるほど、あそこが水風呂か。
その様子を先に見ていたらこのようなことにはならなかったろうに…と思うも、後の祭りというものだ。
急な温度差というのも苦手なので、水風呂は避けて、たった今2人出て行った隣の白濁した湯船に入り直すことにした。ボクにとってはちょうどいい、ややぬるめのお湯。入浴客が少ない風呂屋なら、長湯していただろうな。
しかし、最初のあっついお湯にやられてのぼせてしまいそうなのと、人が多いところが苦手な方のボクは少し早めに入浴タイムを切り上げた。
高円寺の駅前商店街は、八百屋も肉屋も魚屋も、古着屋雑貨屋金物屋、狭い道路になんでもある、ちょうど夕飯前の人通りが多く、風情あるモッチャリ感に満ちたいい空間だった。
やっぱ、こういうとこに風呂屋ってのは、なきゃあいけねえや。
ボクの実家のあたりにも、せっまい公園を中心に、八百屋も肉屋も魚屋も、お惣菜屋に豆腐屋に、酒屋駄菓子屋文具屋と、少し離れて風呂屋だってあったんだけど、まあ、今となっては思い出の中だ。それこそ、30年は昔のはなし。
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