クリスマスヲゲイゲキセヨ 後編
12月28日
今年最後のÖCHAKOの時間である
お日柄もよく、12月も終わろうとしているにしては随分と寒さの緩い日で、畑には雪が残っているものの、外でひと仕事するにはちょうどいい陽気だ
にしても、眠たい
あったかいと眠たくなるとかそういうのではなく、ついこの前までクリスマスケーキ製造の深夜勤務に合わせた生活リズムに整えていたのが抜けきらず、朝起きるのが辛いという話だ
しかも、主催者都合で早く出てこいという
まあ、いいや
ハウスの方では今年最終日ということで、いつもよりワイワイ和やかな雰囲気が漏れ出しているが、先週に引き続き1人畑の天地返しだ
まだ雪の残る白い面にスコップを突き立て、土を起こしていく
先週、「こういうケーキありますよね」というコメントをいただいた通り
1列、また1列と土が起こされていく様に
確かにハーフ&ハーフのチョコレートケーキサイドを想起させる
土を起こすたびに思い起こされる記憶…
物事にアクシデントはつきものだ
何事もなくことが進むに越したことはないのだが、かといって、アクシデントは決して起こらない想定でいると、何かあった時点で詰んでしまうことになりかねない
まして、今年のクリスマスケーキ要員は3人
必要最低限とかではなく振り絞って3人
社内での運用では
クリーム回し→壁塗り→絞り→仕上げ
クリーム回し
クリームを機械で5分立てしたり、そのほか雑用的な立ち回りで色々軽量など準備して、工程全体をスムーズに流れるようにする人
壁塗り
スポンジケーキにクリームを塗り、フルーツをサンドし、ケーキの本体を作る人
絞り
2種類の口金を使い分けて、ケーキの種類によってそれぞれのデコレーションをする人
仕上げ
オーナメントを飾ったり、箱に詰めたり、ラベル出しをしたりと、ケーキ製造の研修を受けなくてもやれないことはないけれど、地味に忙しい作業をする人
の最低4人でのライン回しとなっている、そのうち壁塗り以外の人が適宜手の空いたタイミングで箱を組み立てたり、箱に入れたり、ラベル貼ったり、壁塗りに入ったりとなっているのだが、足りない
足りない分は勇気で補えばいい!
なんて言っておけばなんとかなる時期も、ボクにはありました…
今はそう、後悔、未練、届かぬ想い…
物事は時間が解決してくれる
そう思うことでやり過ごす毎日
ということで、今回も人手が足りない分を時間を伸ばすことで解決しようとした結果、出勤時刻AM1時30分のところを1時前には到着して開錠しておく
本来であれば社員さんのベーカリーチーフが開けるはずだが、きっと時間通りに来る人なので待っていても仕方がない
いつもセキュリティセットをしているボクにとっては、開錠なんてお茶の子さいさいなのさ
出発の際、雪が降っていて軽く狼狽したけれど、すぐにもう1人のパートさんもやってきて作業準備を始める
勝手知ったる部外漢が何かしでかすよりかは、作業場を熟知している人が準備するのがいいだろうと思い
その間、ボクは店長に頼まれていた仕事を1つこなして、1時30分、ようやく役者も揃ってケーキ製造が始まる
入念な準備がなされていたこともあって、滑り出しは上々
ベーカリーチーフはクリームの仕込みと仕上げ、工程の最初と最後を担うことで全体の調整をしている、1番神経を使うハーフ&ハーフのカットしてトレーに乗っけるのをやってくれるのがとてもありがたい
ベーカリーパートの人は、壁塗りがメイン、慣れた手つきで次々とクリームを塗りつけていく
ボクはというと、絞りがメイン、飾り付けと壁塗りも適宜こなしていく
それぞれ開店してから毎年、経験を蓄積している3人なので、お互いを補い合う形で滞りなく進んでいくかにみられたが
アクシデント発生
壁塗り担当のクリームが溶けるという
確かにすごいベシャついてる
ボクの方のクリームは問題なく角が立つのだが
作業台向かい側の人のクリームはベシャついて、気持ち粘度の高い液体と化している
元は同じパックの、同じミキサーで回したクリームなのだから、それぞれのボールに取り分けて以降に何か違いがあるのだが、すぐには原因はわからない
ベーカリーパートさんは本来禁止であるはずの電動ハンドミキサーを持ち出してホイップをかけてもベシャベシャのまま
それで、だいたいの理由は検討がついたのだが、今それを言っても多分どうしようもない
原因究明よりもまず、作業を進めないと時間に余裕はない
ボクの方でクリーム管理をして、壁塗りに専念してもらった
ベシャついたクリームを塗られたケーキは、上から絞るクリームが滑りデコレーションし難いが、そんなことに文句を言っても仕方がない
とりあえず予定数のケーキを製造して、お片付けをしている頃に、ベーカリー部門朝番の人たちがやってきて立ち上げの作業に入る
1日目のケーキ製造はなんとか間に合った
ボクは休憩時間となるのだが、従業員出入り口や店先、店前の歩道などの雪かきをする
除雪の業者が入っているが、細かいところはこっちでやった方が確実だ
すると店長がやってきて、あれこれやって欲しいことを並べてくる
実は休憩時間中であることは、自己満足の範疇なのでいちいち言わない
部長が巡回に来るから商品棚の手直しを手伝って欲しいそうだ
休憩時間いっぱい雪かきをしてから手直しをして午前9時
開店の放送がされる頃、23日の勤務は終了
事務室に行ってタイムカードを切るとき、事務さんが心配そうに
「明日、大丈夫ですか?深夜から夜まで…」
と声をかけてくれる
24日の勤務予定は
1時30分出勤
7時〜17時まで休憩
23時30分退勤
だって、仕方ないじゃないか
チェックアウトのパートさん足りなくて、閉店業務のために最後までいて欲しいって
チェックアウトチーフのみどりさんが
そう、言うんだもん
と、口に出すことはせず
ハハハ、毎年の風物詩みたいなもんですよ
なんて答え、店を後にする
クリームがベシャついた件
アレの原因はクリームを痛めつけすぎたせいだ
クリームは機械で5分立てにして、その後ボールに移し、泡立て器で塗りは7分、絞りは8分に立ててから使う
ので、ある程度は手で回さなければならない
しかし、真夜中からの長い時間同じ作業を続けていたせいで、腕の疲れが限界だったのだろう
泡立て器を握る手の動きが明らかに直線になっていた
本来であれば空気を含ませるため円の動きでホイップしなければならない
直線の動きで泡立て器を動かすのは、空気を含ませたくない時、例えば、溶き卵の卵白のコシを切る場合だ
クリームがなぜ泡立てると硬くなるのかといえば、本来混ぜ合わない水と油がああなって…乳化状態になっているために表面張力がこうなって…けれども、クリームをいじくり過ぎたり、温度をかけてしまったりすると解乳化でそうなったり…
とにかく、小難しいことがどうにかなって…
つまり、ベーカリーパートさんの体力の限界だったのだ
時間でも解決できないことがここにあったのだ
誰のせいでもない、強いて言うなら
人が足りない
24日
この日の出勤時は雪がパラついたものの、天気自体はそんなに崩れていない
けれども、前日の降雪により路面凍結が懸念される
懸念されるが、わかっているなら気をつければいいだけの話、前日よりもゆったりと出勤する
前日と同じように早く到着して店を開錠
パートさんがきて準備を開始、この日はボクも早めに作業を開始する
同じように作業は進むが、やはり疲労は蓄積されているのか、クリームベシャつき現象は早くに起こった
パートさんは自分なりに原因を調べて、クリームを冷やすために氷を用意していたりした
しかし、クリームは容赦なくベシャついたので、早い段階からクリームの管理をボクがやることにした
ボクは日頃から趣味で泡立て器を回す機会もあるし、クリスマスケーキの自主練もしているので、ホイップする動きに関して耐久性はバツグンだ
結果、サンドするフルーツが違うものを余分に作ってしまったというちょっとしたアクシデントは起きたものの、24日のケーキ製造も無事時間内、7時までに終わらせることができた
余ってしまったカットしたイチゴを持たされ、24日深夜の部は終了
ボクはいったんロング休憩という名の自由時間で家に帰ると、6号型でスポンジケーキを焼いて、仮眠をとった
予定より早く16時に店に戻ると
まあ、クリスマスイブで日曜日となれば、そうなるよね
というレジの混雑具合をみて勤務を再開した
やることも、できることも沢山あるというのはいいことだ
少しでもお力添えになれるなら幸いである
24日夜の部を終えて家に帰ると日付もちろん25日になっている
夜の部の休憩時間に買っておいた、クリーム、サワークリーム、イチゴ、シャインマスカット、あいか、それとピスタチオを焼いておいたスポンジケーキにデコレーションする
6号型をに対してクリーム200mlとサワークリーム90gでホイップすると、壁塗りをかなり薄くしないと間に合わない
貧相な壁塗りを誤魔化すために、ピスタチオを砕いて側面に貼り付ける
好きな人にはむしろ豪華になるというデコレーションだ
6号型を8つに分けて、ホイルで包みケースに入れる
深夜3時頃、ボクはまた店に向かう
ボクはこの日のケーキ製造はないが、ベーカリー部門の2人は25日も15台ケーキを製造するため4時出勤時となっている
朝持たされたカット済みイチゴをたっぷりと挟んだ特製フルーツスペシャルを差し入れとして持っていく
ベーカリー部門が正確に何人所属しているのか把握していないが、8人より多いことはないはず
その辺りテキトーなのがボククオリティである
ÖCHAKOの時間は終始ワイワイしている雰囲気を醸している
和やかでゆったりとした空気感の中、
「後で〜」なんて悠長なことを言われたりする
そんな中、ボクはやることやって早く来た分、早く帰る
帰り際、参加者の1人から用があるからちょっと来いとばかりに名を呼ばれ手招きされるが
手を振ってもらっていると勘違いしたムーブを華麗にこなして、笑顔で手を振りかえして車に乗り込む
家に帰り、身支度を整え、スーパーに向かう
クリスマスは終わり、ベーカリー部門のヘルプに専念する期間は終わった
ならば、ここから先は年末おもてなし受け渡し、そう、みどりさん率いるチェアウト部門につくすことのできる期間だ
年末商戦はここからが本番だ