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どいつもこいつも“でえく”
近頃は腕のいい“でえく”ってのをすっかり
耳にしなくなった、なんてね。
“でえく”が世の人様の前に初めて出たのが
文政7年。時の将軍は11代家斉。
勝海舟が数えでいうところの二つ。
まだヨチヨチの頃ですな。
その頃からどんどんどんどん“でえく”っての
が広まったんですと。
なんだか思いのほか新しい気がしねえでもねえですがね。
この“でえく”ってのは、
どいつもこいつも分け隔てることなく
いっちょ抱き合おうじゃねえかってなことを
声高らかに叫んでるんでございますな。
でもね、ここんとこの流行り病で、
「おらっ、抱き合おうじゃねえか」なんてこたあ、
なかなかできない世の中になっちまいましたがね。
やっぱり“でえく”がねえと年は越せねえなってね、
あたしゃ思うわけです。
この師走はどうなんですかねえ、“でえく”の方は。
江戸っ子なもんでね、訛ってしょうがねえや。
伝わりやしたかね、“でえく”のはなし。どいつにもこいつにも。