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【駄文】家が買えなかったことを思い出す2月

 現実でもnoteにおきましても、「情熱の塊」のように、吠えるように熱く語る方々がいらっしゃいます。
「その志や良し!頑張ってください」
とは思うのですが、
「共感はしないから、混ざりませんよ」
と、距離を置くようにしてしまいます。価値観を押し付けられるのはスキではないのです(すいません、本文とは関係のない愚痴になります)。

 さて、本題です。ここ11年の間、2月になると思い出すのは2010年2月17日の出来事になります。その時の職場の仲間に、『俺、明後日は午後から休暇をとるから、そこに予定を入れないで欲しい」と周知していました。
 当時はアパートで独り暮らしをしていたのですが、老化が進行する親のことを考え、家を購入し同居することを画策しており、2月19日の午後に売買契約をすることとなりました。

 ところが、午後1番に入った電話で、変な運命が回り出す。
「太郎さん、人事課からお電話です」
「えッ!、俺、最近は叱られるようなことしてないよ」
と、言いつつ受話器を取ると、相手は以前同じ職場の勤務したことがある人事課の課長補佐だったので、プライベートの話かな、と推察する。
「いますぐ、2階の会議室に来てくれる。場所はわかるよね」
「人事課会議室」、通称『説教部屋』のことを知らないはずはない。
「わかりました。直ぐに伺います」
プライベートな話ではないらしい。自分への苦情か、職場への苦情か。まぁ話はお伺いしますよと、舌を出しつつ、説教部屋に向かう。扉を開けると、総務部長以下、人事課係長までの役所中枢の方々が着座している。(おいおい、どんな重要案件だよ)と思いつつ、指示されるまま総務部長の正面に座る。総務部長と話をするのは初めてであり、私のことは知らないはずである。厳かに言葉を発した。
「4月から東京に行ってもらう。詳しくは人事課の説明を聞いてください」
(行ってもらう?ですと。人事異動の内示なんだろうけど、打診じゃなくて決定なんですか)とは、口には出さない。
「承知いたしました、ありがとうございます」
立ち上がり一礼すると人事課長の指示で、説教部屋を出される。小芝居はもう終わりらしい。旧知である総務部次長のニヤニヤとした笑みが腹立たしい(この舞台はお前が仕掛けたのか)。課長補佐が追いかけてくる。
「じゃぁ、これから少し具体的な説明をするけど、時間は大丈夫だよね」
「時間は大丈夫ですが、実は、明後日、家の購入契約をする予定でした。まぁ、何とかキャンセルできるでしょう」

 前を行く課長補佐の背中を見ながら、
「これは、何人かに東京行きの人事を打診したけど、全員に断られて、俺に声をかけたということか。まぁ、構わないけど」
ということを考えていた。
 まぁ、外れ枠だろうと何だろうと、人事については異を唱えるつもりはない。与えられた場所で務めるだけ。ただ、今の職場で苦労している若い職員と一緒に苦労できなくなることには、少し胸が痛んだ。

 この時は、中古の家を購入する予定であったが、翌日不動産屋と銀行をお詫び行脚し、違約金等なく無事にキャンセルをすることができた。
「市役所なのに、東京への異動なんてあるんですか」
と驚かれたが、事情は理解してくれた。
 結果論ではあるが、この翌年3月に「東日本大震災」が発生することになるので、この時に家を購入しなくて幸運だったになる。
 時の総務部関係者、不動産関係者、そして、東京勤務を打診されつつ断っただろう職員には、今でも感謝している。ちなみに、総務部長、副市長、市長などは、当時の私の名前も顔も知らなかったと思うが、よく決裁をしたものである。
 
 この時に、人事の内示を断らなかったことは、人生の選択において大きな幸運であったと言わざるを得ない。

 この後に東京で生活した日々が、この本に収録されている「題名のない物語」のベースになっています。



 

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福島太郎
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