【企画参加】天翔ける国旗
突如として西方から侵略してきた暴君コロナ王国の軍勢の前に城は陥落し、王は行方が知れず、姫と7人の騎士団は瀕死の状態で落ち延び、森に身を隠した。
騎士団は捲土重来を期して、傷を癒しながら鍛錬を重ね武芸を磨く。姫は騎士団を支えつつ村人と交流し、圧政に苦しむ民衆の希望となった。
騎士達の傷が癒えた時、団長は戦うことを決意した。城は堅牢であり、多数の兵に守られている。奪還が困難であることは明白だが、騎士として生き、戦うことに殉じる道を選んだ。
団長が城の前に立ち名乗りを上げると、城からは大きな嘲笑の声が上がり、歩兵と騎兵が現れ、騎士団を包み込むように陣を構えた。
城の異変を感じ、騎士団の勝利を願いながらも、村人は日々の営みを続けようとしていた。
が、城から兵が出た同じ時、村の広場に疾風とともに、1羽のグリフィンが舞い降りた。その足に携えているのは、王家の剣。
天を見上げるその姿は、村人に問うているようにも見えた。
「皆、立ち上がる時ではないのか」
一人の勇猛なる者が近づき剣を手にした。
グリフォンは大きく声上げた。その声は村の心を震わせた。
「姫のために」「騎士団のために」「未来のために」
波紋のように広がった志は村人を動かし、1つの塊となり、翼に導かれて城に向かう。
騎士団を囲み、嘲るようにして攻め込もうとしていた敵将の馬が、天から襲ってきた爪に視力を奪われ、嗎とともに大きく体を揺さぶり将を振り落とした。そして突然の暴風雨が城を襲い戦局を一変させた。
若き騎士ザッキーは機を逃さず正門に向かい、命を燃やし尽くすような奮闘を見せ、活路を開いた。
将を失った敵兵は、戦うことを放棄し散り散りとなり、守備兵たちは裏門へと走る。遠征を繰り返しながら、侵略を続けることを望む者は少なくなっていた。
城に掲げられていた旗が墜ちた。
新しい旗が掲がるのを見届けるかのようにして、グリフィンは西の空に姿を消した。
周辺の国では、未だ暴君コロナ王の軍が猛威を振るい、平和な世界は遠い。しかし、小さい光は確かに大地を照らした。
『その後も、我が国はコロナ王国の軍を連破し、大陸に平和をもたらしたということさ。そして、その時の騎士団長が新たな王となり、今の国旗にしたのさ』
村外れの老人から、話を聞いていた子どもたちは大きく頷き、老人に確かめた。
「だから、国旗に剣とグリフィンが描かれているんだね」
老人は答える代わりに、小箱からお菓子を取り出し、小さな手に渡した。
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【以下、補足です】
橘鶫さんの「企画参加」、二本目となります。一本目は少し反則気味のエッセイという「物語」でしたので、二本目は少し反則気味の「創作物語」にしました。
「どっちにしても、反則かーい!」
ということになります。今回は「かなりベタなファンタジーのあらすじ」という旧作のリライトなのです。いやぁ、大人というのは、色々と狡いことを考えるものです。嫌ですねぇ。
ただ、一度は終了したこのお話を、蘇らせる機会をいただけたことは、書き手としては、嬉しく有難いことでした。企画しイラストを提供していただいた橘鶫さんにあらためて御礼申し上げます。
そして、「蘇る」ということですから、不死鳥の画を基に創作するという企画と趣旨が合うと考えています。
「え、グリフィンとフェニックスって、同じ生物じゃないの?!。それじゃぁ、趣旨が合わなくなるじゃないですか。それは、失礼いたしました」
というオチまでが、一応のネタになります。
本来の企画はこちらになります。いやぁ、楽しませていただきました。