思い出のままがよいことも。
アラミス ハバナ。
どのくらい昔だったかな、まだ20代のはじめ頃だったかこの香りを僕が纏っていたのは。
瓶の色や形、外箱までも大好だったのだけれど、なぜ他の香りをつけるようになったのかも思い出せない。
ハバナ、という名前も大好きで、それは大好きなヘミングウェイを思い出すからなのか。
とにかくたまらなくこの香りが、あの頃の僕は好きだった。大人っぽく、男らしい、華やかな派手な香り。
あれからどれくらいたつだろう?
あの頃夢見ていたような大人のオトコにはなれていないけれど。
ふと思い出して検索してみると、まだ売っていることも、でも1度廃盤となっていたらしいこともわかった。
外箱も瓶の形も色も変わっていたけれど。
ラベルにはあの面影が残っているみたい。
懐かしさに注文してみた。
シャワーを浴び、ハバナではあり得ないこんな寒い日にこの香りを久しぶりに、久しぶりに纏ってみた。
記憶にあったあの香りとは、あの華やかさや派手さはどこか弱く。
それでも、あぁ、こんな香りだったなと。
記憶は香りも美化していくのか。
それとも歳を重ね、あの頃のようには物事を感じられなくなったからなのか。
なんだか違うと感じるのは、香りと共に思い出してしまうあのひとのせいかもしれない。
胸の深いところへしまっておいたはずの思い出が、
少しざわついて。
ハバナへいつか旅してみよう。