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「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その2 2. 建物のデジタル化が必要な理由とは︖
2. 建物のデジタル化が必要な理由とは︖
現代は、「ソサエティー5.0」の社会へ突⼊していると⾔われる。最初の「ソサエティー1.0」が狩猟社会、次の「2.0」が農耕社会、「3.0」は⼯業社会、「4.0」の情報社会である。それぞれにかかった時間をみると、狩猟社会は⼈類の歴史とともに数百万年、農耕社会は縄⽂時代以降で数万年、⼯業社会は数百年、情報社会は数⼗年。この勢いでいけば、次の「5.0」はわずか数年。現代社会は、ものすごいスピードで成⻑・進化していることがわかる。
現在のコンピューターの処理能⼒は、たった100 年間で1900 年のアナログ計算機の処理能⼒の3500 兆倍にも⾼まっている。天⽂学的な数値だ。⾃動⾞も⾶⾏機もそこまで発達していない。いかにITの進化がすごい勢いで進んでいるのかがわかるはずだ。
情報⾰命は着実に進んでいる。2040年には、3万円程度の携帯端末でも、5千億曲の⾳楽が聞け、3.5億年分の新聞、3万年分の動画が端末に保存できる時代になると⾔われている。
このような⼤きな環境の変化が、不動産業界、建設業界のありように影響を与えている。働き⽅改⾰、オフィス⾰命といったことが、情報⾰命と結びつき、ITを活用した新たな働き⽅へとつなげている。
これらのあらゆる活動を⽀えるのは、まさに膨⼤なセンサーで収集されるデジタルデータのり利活用が前提となっている。建物も、⾃動⾞も、すべてがデジタルデータとしてつながっていることが、Society5.0時代のありようだ。そのためには、BIMは建設業界の⽣産するためのデータではなく、Society5.0時代を⽀える「デジタルデータ」であると、再認識すべきだ。
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ソサエティー5.0に代表されるように、IT技術、AI(⼈⼯知能)技術の急速な発達、普及により、ロボット活⽤、5G(第5 世代移動通信システム)、⾃動運転、クラウドなど、⽣活のあらゆる部分がデジタル化される社会がまさに実現しようとしている。このような社会では建設の初期段階から、より詳細な建物のデジタルデータの提供を求める声が、発注者や利⽤者から、相当強くなることが予想される。
それは、次に述べるように、建物の「デジタルデータ」が社会にとって必須の情報になりつつあるからだ。
① (⼈⼯知能やロボット活⽤などのデジタル⾰新等が進む)ソサエティー5.0社会においては、不動産取引、設備機器の制御、不動産管理などを円滑かつ⾃動的に制御するためには、建物のあらゆるデータがデジタル化されている必要がある。
② スマートシティ開発のためには、⾃動運転などのため、その主要な構成要素である道路や電線などの
「インフラ」に加え、建物の「デジタルデータ」が求められる。
③ 省エネルギーの推進、ゼロエミッションの実現など建物の環境対策を強⼒に推進するためには、シミュレーション可能な建物の「デジタルデータ」が必要である。
さらに不動産業では、不動産の売買、交換、賃貸等の不動産取引、不動産の維持管理、運営及び、不動産仲介などについて、デジタル化が急速に進みつつある。不動産取引で、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の機器を利⽤して実物不動産の内⾒なしに、ブロックチェーン取引で、PCやスマホにより不動産取引、契約ができるところまで来ている。また、維持管理段階においても、ビルのあらゆるところに各種センサーを取り付け、そこから得られるビッグデータの分析で機器の不具合を予測したり、Wi-Fiによる測位サービスを活⽤し、商業施設の売上予測に活⽤したりするなど、これまでにない新たなサービスも⽣まれている。
これまで BIMの活⽤については、建築生産側の設計事務所やゼネコンの業務効率化の観点から、多くの検討がなされてきた。しかし、建物の「BIM」は、むしろ発注者や利⽤者にとって、「ソサエティー5.0」時代を⽣き残るために必要不可⽋とも⾔えるデジタルデータであると、再認識すべきだ。早期に社会で活⽤できる BIMを供給できる体制を整え、「ソサエティー5.0」構築という社会要請に応える建設産業として、建物や都市の「デジタル化」を推進したいものだ。
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本章では、「建物のデジタルデータ」が必要なことをいくつかの事例を用いて⽰したい。
①カーボンゼロ、環境対策のために「建物のデジタルデータ」が必要
台⾵が⽇本近郊で発⽣し、⼤量の⾬で河川があふれたり、強⾵で建物が被害を受けたりするなど⾃然災害の増加が続くなか、多くの⼈が地球温暖化の影響を指摘する。実際、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予測によれば、CO2削減などの温暖化対策を⾏わない場合、21世紀末までに4.8度の温度上昇となり、東京でも真冬なのに真夏⽇になる⽇が出るとの予想さえある。
こうならないため、グーグルでは都市におけるCO2排出状況を正確に把握し、対応を検討するためのシステム、グーグル EIE(Environmental Insights Explorer)を提案している。グーグルEIEでは、世界の⼤都市におけるCO2排出量を建物と⾃動⾞に絞ってシミュレーションし、その対策を都市として考えるプラットフォームを提供している。そこでCO2排出量の推定に使っているのが、建物のデジタルデータそのもの。建物を事業⽤途と住宅⽤途に区分し、それぞれの CO2 排出量を算定するのに役立てている。
環境対策でもエネルギー消費データなどの「建物のデジタルデータ」が必要となっている。
②不動産の IT 化、AI 管理、スマートビル化のために「建物のデジタルデータ」が必要
不動産業界でも内⾒や不動産取引、不動産管理の分野において、今や不動産業はデジタル化技術の導⼊に最も積極的な業界へと変貌しつある。特に、5G と呼ばれる⾼速⼤容量通信時代になるにつれ、不動産ユーザーの要望をここに実現できる環境が整うとともに、最適な温湿度環境を提供できる技術が確⽴される。
的確な不動産管理を実施するためには、場所の特定やエネルギー管理が必要となる。
そのためには、「建物のデジタルデータ」が必要となる。
③ロボット活⽤、IoT センサー活⽤のために「建物のデジタルデータ」が必要
不動産業界も⼈⼿不⾜対応は喫緊の課題となっている。特に、清掃、警備等の⼈でないとできない分野であったものも、最近では、積極的にロボットで代替していく動きが強まっている。そこでは、清掃範囲を特定したり、ロボット移動を⾏うためには、当然ながら、建物のデジタルデータが必要であり、あらかじめルートを覚えさせたり、清掃ロボットそのものに3D スキャナーをもたせて建物のデジタルデータを作るものもあるが、正確な建物のデジタルデータが予め⽤意することで、より正確で効率性を向上させることができる。
ロボットによるエレベーターの乗り降りなども、⾃動化するためには、位置情報とセンサー、Wi-Fiでのやり取りが必要となっている。
また、IoT センサーによる管理がより重要な要素となってくると、とても2Dではセンサーの場所の特定ができず、3Dデータとしての建物デジタルデータにより、センサーの設置箇所を特定する必要性が⾼まる。
アナログ作業がデジタル作業へ移⾏するなかで、建物のデジタル化が求められている。
④スマートシティを展開するうえで、「ビル(建物)のデジタルデータ」が必要
シンガポールでは政府が推し進める「Virtual Singapore」プロジェクトでは、デジタルツインと呼ばれるように、リアルな都市をデジタル化することで、バーチャルな都市を作り、個々の住宅のレイアウトや⽇照時間の提供、太陽光パネルの発電量推定、道路作業による交通への影響など、多くの都市問題をシミュレーションできる環境を整えている。マンションにズームインすると、その建物の⼤きさ、エネルギー消費、建築材料、建物の規格、部屋の価格、住⼈の数、駐⾞場の数なども確認できる。これにより、シンガポール政府は都市問題の解決や環境対策を強⼒に進めようとしている。
また、世界的にはスマートシティ構築が進んでいる。中国では、2017 年に発表された「雄安新区」において、あらゆる⾃動化技術を導⼊する構想を進めており、習近平政権の⼀⼤国家プロジェクトとして、 2050年までに広さ 1,770㎢にも及ぶ新しいタイプの都市を誕⽣させることを⽬標にしている。⼟地や建物、⾃動⾞まで、あらゆるデータがデジタル化され、それらが統合されて運⽤することで、都市の混雑や環境保全を図る全世界的な取組が、まさにスマートシティ構想だ。
このスマートシティを⽀えるのが、「建物のデジタルデータ」だ。
シンガポールではデジタルツインが実現し、道路⼯事を⾏う際は、⼯事の情報やシミュレーション結果、進捗状況などを複数の官公庁で共有できる。そのため、異なる機関が同じ場所で⼯事を予定している場合は、⼯事を同時に進めるなどの柔軟な対応が可能だ。⾞や⼈が混み合うことなく通⾏できるルートを算出することで、最も渋滞が起きづらい形で通⾏⽌めの場所と時間も決められる。また、デジタル化で、「デジタルによる設計」、「デジタルによる資産、⼯程管理」、「デジタルによるプレハブ化」、「デジタルによる建設」などの 4 要素を取り⼊れたインテグレーテッド・デジタル・デリバリー(IDD: Integrated Digital Delivery)を開発し、⽣産効率を 30%程度改善しようというものだ。
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