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未来の建設業を考える:「古代の叡智と技術力で国を豊かに」

堺市にある巨大な前方後円墳「仁徳天皇陵(大山陵古墳)」

 古墳は、古代日本の繁栄を支え、現代の土木建築技術にも大きな影響を与えている。その代表格が、大阪・堺市にある巨大な前方後円墳「仁徳天皇陵(大山陵古墳)」だ。
 東京ドームの約10倍の広さを持つこの巨大な陵墓は、全長480m、高さ約30mにも達する。盛土は、1平方メートルあたり50トン以上の重さに耐えられる地盤を選定する必要があり、これは現代のマンション建設にも匹敵する高度な技術力だ。さらに、掘削土量・客土量は74万立米㍍、運搬土量は200万立米㍍と桁違いの大規模な土工事が実施された。当時としては、最先端の技術で大量の水量を制御した施工技術は、現代でも驚きをもって評価されるべきだろう。また、当時の陵墓は、いまのような森林ではなく、大量の石で覆われ象徴的な建造物となっていた。その葺石の数は推定540万個にも達し、その重量は計り知れない。
 大林組による試算によれば、当時の技術水準で仁徳天皇陵を建設するには、15年以上の工期、延べ680万人(ピーク時には1日あたり2千人)以上の作業員、1985年の価格で約796億円(埴輪製造の作業員と工費は除外)もの費用が必要になると試算されている。これは、現代の超大型プロジェクトにも匹敵する規模だ。
 仁徳天皇陵は、エジプト・クフ王の大ピラミッド(全長230m)、中国秦の始皇帝陵(全長350m)と並び、世界三大墳墓の一つとして知られる。

クフ王の大ピラミッド

 クフ王の大ピラミッドは、その底辺一辺が約230mの正方形、高さ147mの四角垂で、一個平均2.5~7tの石灰石の切り石230万個を、正確に積み上げている。施工も、大量の土でスロープを造りながら、大きな石を引き上げて造られたとされる。全重量は580万tにもなり、クフ王のピラミッド建設には、当時毎日2万人が働き20年を要したと言われている。単純労働力だけでも、工事費は1兆円以上にもなるそうだ。

始皇帝陵

 始皇帝陵は紀元前246年に建造が始められ、陵墓は東西350m、南北345m、高さ76mと巨大。40年近くも建設が続いたそうだ。また、始皇帝陵から東へ1.5km離れたところに、有名な「兵馬俑抗」も造られた。ただし、まだ発掘調査中で全体像はこれから。ここでも多数の労働者が動員されていたとのこと。

驚異的なマネジメント能力

 建設機械のない時代に、膨大な数の職人を統率し、これほど大規模なプロジェクトを実現できたのは、高度な技術力、緻密な計画と組織力、驚異的なマネジメント能力の賜物である。現代社会においても、地球温暖化や災害対策など、様々な課題解決には、これらの要素が不可欠である。
 仁徳天皇陵やピラミッドなどは、単なる古代の遺跡ではなく、未来を創造するための宝庫と言えるだろう。
 現代の技術と古代の叡智を融合させ、より良い未来を創造していくことが、われわれ土木建築に携わる者の使命ではないか。

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