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「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その9 II. 建築生産の「施工BIM」 からビル管理で活用可能な「FMBIM」 へ


II. 建築生産の「施工BIM」 からビル管理で活用可能な「FMBIM」 へ

1. 「施工BIM」 と「FMBIM」 の違い

1.1 施工BIMとFMBIM

BIMは建物の情報を作り出し整理し分類するツール(道具)だ。建物を生み出すには設計者が設計を行い、施工者が工事を実施して完結する。この建築生産に使うBIMを「施工BIM」と呼ぶ。情報は設計・施工時に生まれ建物が竣工完成に近づくにつれ、詳細化し、膨大なデータへと変化する。

それと同時に設計者、施工者はBIMを使いながら部位や機器の情報を整理する。情報は設計時から徐々に密度を高め施工のできる情報へと成長密度が高まる。これに使われるのが「施工BIM」だ。設計を川上、施工を川下という習わしで考えると、川の流れにたとえて、情報は川上から川下へ成長しながら整理されながら流れていく。「施工BIM」は建物を構成している要素の特定とその組み立ての情報を管理する。施工BIMは建物を作るための道具となる。一方「FMBIM」は物や機器の確認が主な目的。建物を構成する物の場所やそれらの数・広さ・状態などを確認するための道具となる。「FMBIM」は建物を長持ちさせるために清掃、点検などの保守管理をする道具でもある。また、緊急事態の際には何がどこで使用可能か、またどこが安全かといったことを確認する道具にもなり得る。


表 4 施設を管理するために必要な情報

施工BIMとは設計、施工を行うための生産情報をオブジェクトの属性とし、FMBIMは建物の資産管理、維持管理活動(O&M(Operation & Maintenance)など)を対象とした情報を持ったオブジェクトで構成されることを理解してほしい。ここでは、FMのO&MでBIMが活用できるためには、各々モデルはどのように設計されるかについて、述べたい。


図 23 施工BIMの情報とFMBIMの情報

従来のFMBIMはFMステージでBIM情報を使ったとしても、BIMモデルとFMモデルで必要とするデータの種類(スキーマ)が一致していないために、ほとんど価値を見出さないと言われる[2]。従来のFMBIMはBIMモデルからFMモデルに情報を交換する方法が明らかに欠けているため。情報管理プロセスとしてBIMはライフサイクルの全てのフェーズをサポートできる共通データの環境を提供できる。その中で、FM活動の主体は、①運用と保守の決定、②設備投資とライフサイクルコスト、③スペース計画と効率化、④緊急時とその計画、⑤環境の管理、⑥データ管理と分析・予測・評価を行う目的を有する(第3章参照)。

これらの分野の情報はBIMのなかで整然と分類されたデータでなければならない。分類方法としては、建物を構成している要素を機能別や階層構造に分類することだ。

注)スキーマ:BIMモデルを構成する部位・機器を整理した情報やFM活動を行うために整理された対象や、活動を記述したデータベースを指す。


1.2 施工BIMとFMBIMのすり合わせ

BIMモデルとFMモデルのシステム同士が効率的な情報交換をするためには、BIMを構成している要素にFM情報の要件を特定する情報が含まれていることが重要。これらの要件は建物のライフサイクルに必要なFM分野で使う情報でなければならない。BIMモデルは実際のビルの設計から施工の情報で構築されている。

一方、FMモデルは、修繕、保全、運用などの管理をするための情報で構築されている。しかし、BIMに施工BIMFMBIMの情報を全て載せると、膨大なデータ量になります。FMモデルに使われる情報は標準データベースとして別に構築する方が良い。その場合、施工BIMとFMBIMを繋ぐ役目が「連携ID」だ。連携IDはFM分野で管理対象となる部位、部材、設備、備品に付けられる。

これからしばらく、FMBIMについて述べたい。

建物は柱、梁、壁、床、天井、電気機器、空調機器、衛生機器、搬送機器、防災機器、パイプやダクトなどからできている。その数は1万㎡の建物で、目視できる数は平米あたり5〜7点ほどになる。

つまり全部で5万〜7万点にものぼり、これを維持管理することが求められている。

これらを管理するには膨大な情報処理を必要とする。また、BIMはこれらの情報に加え、視覚的、感覚的にわかりやするするために用いられる。下図は構成している主な部品と、機器のリストさらにそれらを組み込んだBIMモデルを示している。


図 24 施工BIMが持ち多様な情報(部材・部品等)

1.3 施工BIMをFMBIMに変更する

施工BIMは設計・施工をするために構築されたモデルであり、モデルの要素はFM活動に役立つ空間、部位、機器に分類されなければならない。しかもFM活動は個々の対象に対し重層している。

部屋の維持管理には点検、清掃、警備、保守、修繕などいろいろな活動をしなければならない。たとえば、その部屋の空調機に対しても、点検、フィルター交換、保守、測定、修繕などの管理や保守が必要となる。

したがって、施工BIMのモデルを使ってFMモデルにするためには、施工BIMのオブジェクト情報にFMBIMで必要な情報を加え、不必要な情報を削除しなければならない。そのためには、施工BIMとFMBIMを結ぶ「連携コード」が必要となる。


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