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「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その10 2. いま求められるFMBIM


2. いま求められるFMBIM

2.1 FMBIMの必要性

そもそも建築分野における施工BIMは、設計者やゼネコンの建築生産側からの活用がおもであったが、最近は、建物のデジタルデータという特性を活用して、もっと広い分野で使われるようになった。ここでは建築生産側(供給側)で用いるBIMを「施工BIM」」といい、FMで用いられるBIMを「FMBIM」と称する。たとえば、ビルのエネルギー分析、ビルメンテナンス、ビルの運用管理、空間情報の管理などの「FM(ファシリティマネジメント)分野」における活用が進む。しかし、設計や施工の生産側で使われたBIMデータをそのままFM分野で使うには、鉄筋1本、ビス1本までが必要な生産者BIMなどの詳細で膨大なデータを扱うには、専用の端末やオペレーターが必要になるなど、扱いにくい。それゆえ、建築生産者のBIMから消費者、管理者が扱うFMBIMの違いをきちんと把握し、FM(ファシリティマネジメント)を行う上で、有用なFMBIMのありよう、BIMとFMをつなげる仕組みについて、本章で述べることとしたい。


2.2 FMチームの業務

ここではFM活動とは、建物の維持管理をして資産価値を落とさないように努力する活動と定義する。

以下のような業務がファシリティマネジャーに求められる。

•       メンテナンスのスケジュール

•       建物要素およびシステム分析

•       資産管理

•       スペース管理

•       安全および緊急計画

この業務を実現するためには、以下のような情報が必要となる。

①土地情報

②建物概要情報

③都市情報

④建物要素別分類

⑤エネルギー情報

⑥清掃・警備情報

⑦予防保全情報

⑧賃貸情報

⑨工事履歴情報

⑩図面ドキュメント情報

⑪資産情報

これらの建物情報を整理するために、大いにBIMを活用できる。仮にBIMという3次元で見ることができるデータがない場合、FMで活用されるこれらの各種情報は、個々のライフサイクルステージおよび利害関係者間で相互運用性の低いアドホックな情報交換により、文字と数字で記録される。しかし、文字情報のみのデータは、結果として全体が見通せず、縦割化された組織活動になり硬直化、非効率な活動になりがちだ。

このような障害を避けるためには総合的に視覚的に俯瞰できるFMBIMが必要となる。


2.3 FM標準データベース

FMチームに必要な情報は総合的に収集され標準化したものであり、それを「FM標準データベース」と呼ぶことにする。「FM標準データベース」は、建物や部屋を構成している部位、機械の管理用情報を集めたデータベース。部位、機械ごとに法定点検・日常点検用周期その費用、修繕・更新工事費用や耐用年数・修繕周期、清掃種別や周期、警備種別やそのコストなどを文字で記述される。FM標準データベースは項目ごとに階層構造になり、階層レベルでコスト集計や点検報告書などを作ることができる。

FM標準データベースと施工BIMはオブジェクトごとに連携IDで結ばれ、FM用のBIMの情報となる。これがFMBIM。また、FM標準データベースを構築することがFMとBIMを繋ぎ、効率良く総合的なFM活動を行えるしくみとなる。


図 26 オブジェクトはIDで連携


図 27 オブジェクトの階層構造


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