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次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その25「12.2.一口 コラム 「築土構木・経世済民」(2020年6月5日)」
12.2. 一口 コラム 「築土構木・経世済民」(2020年6月5日)
微生物・ウイルスは生まれて30億年、人類の歴史はわずか20万年。地球の歴史上では、はるか昔からウイルスは存在している。
人類は、ウイルスとの戦いの歴史だ。節分の「鬼は外」の鬼とは、「疫病神」のことで、「感染症は外に出ていけ」の意味。今季の中止が発表された東京隅田川の花火大会は、もともと飢饉やコレラによる疫病退散を祈願するため、8代将軍の徳川吉宗が始めた、と言われる。
この100年、人類は大きな疫病から逃れ、忘れかけていたウイルスの危機に直面しているのがいまだ。
これまでは都市に集まり、まさに「密」に行動することで、効率的で、生産性も高く、イノベーションを生み出し、より良い社会へと大きなビジネスを生む源泉と考えられていた。
人は都会を目指し、2018年時点で世界人口の55%が都市部に暮らすようになった。1950年には30%に過ぎなかった都市人口が、2050年には68%に達すると国連では予測している。それだけ密な空間で人は生活するようになった。
東京のGDP(国内総生産)は、106兆円(2019年)。この額は、メキシコやトルコといった「ひとつの国」と同じ規模。一方で、東京、大阪、神奈川の食料自給率は、わずか1〜2%だ。日本のカロリーベースの総合食料自給率も、わずか37%(2018年)。この新型コロナ騒ぎの中でも、食料を他府県や海外から運んでもらわなければ、食べ物を調達出来ない。それらを運んでいるのは、人だ。県や国を超えたリスクに直面しながらも、自分の仕事のミッションを果たしている。スーパーで食べ物を販売しているのも人だ。いまの世の中、ネットワークやIT、AI(人工知能)といったデジタルな世界を構築する一方、人々の働きで生活が支えられるリアル経済にこそ、本当の人のすごみを感じる。体をはって支える人の働きがあってこそ、デジタル社会が成り立つ。郵便や宅配便が支えるラストワンマイルは、新型コロナのリスクと立ち向かい運んでくれている。デジタルだけでない。リアルな人の活動が人にとって必要不可欠なのである。
建設も同じだ。職人や現場というリアルな人の働きがあって、インフラは創られ、生活空間が構築される。
「土木」という用語は、中国の古典哲学書「淮南子(えなんじ )」(紀元前 2~1 世紀ごろ)の「築土構木」に由来する。「築土構木」とは,「民のために土を盛り材木を組んで室屋を作り、人々が安心して暮らせるようになること」。
今、新型コロナウイルス対策として、「経済」対策が優先だ、と言われるが、もともと「経済」という言葉も、世を治め、民の苦しみを救う「経世済民」から引用された言葉だ。民を全力で救うことこそが、本当の経済学であり、命も救う、苦しんでいる人も救う。改めて、現場の職人をはじめ、リアルな人の働きに大いに敬意を表すべき、と感じるとともに、今こそ、民を救うべき「土木」と「経済」の力を大いに発揮し、産業全体でこの国難に取り組みたいものだ。
参考:
※1:カロリーベース総合食料自給率(出展:農林水産省ホームページ(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html))
カロリーベース総合食料自給率は、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。
カロリーベース総合食料自給率(平成30年度)=1人1日当たり国産供給熱量(912kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,443kcal)=37%
分子及び分母の供給熱量は、「日本食品標準成分表2015」に基づき、各品目の重量を熱量(カロリー)に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
※2:生産額ベース総合食料自給率:生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。
生産額ベース総合食料自給率(平成30年度)=食料の国内生産額(10.6兆円)/食料の国内消費仕向額(16.2兆円)=66%
分子及び分母の金額は、「生産農業所得統計」の農家庭先価格等に基づき、各品目の重量を金額に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
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