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未来の建設業を考える:「ダイナミックな建設企業へ」(2024年02月05日)

車載蓄電池

 いま、EV(電気自動車)の車載蓄電池において、世界的に劇的な変化が起こっていることを、みなさんご存じだろうか?

三元系リチウムイオン電池

 従来はレアメタル(希少金属)と呼ばれる、「ニッケル・マンガン・コバルト」の3つの希少金属を蓄電池の正極に使う「三元系リチウムイオン電池」が主流であった。中国政府もレアメタル独占のため、アフリカなど世界各国の市場を飛び回っている、というニュースを聞いた読者も多いと思う。

リン酸鉄リチウムイオン電池

 ところが、である。
 ここにきて、昨年(2023年)上期の中国のEV蓄電池市場が大きく変わった。コスト的にも安く、安全性も高い「鉄」を利用したLFP電池と呼ばれる「リン酸鉄リチウムイオン電池」が市場シェアを急速に拡大し、なんと、レアメタルを用いた三元系電池の2倍の市場シェアを獲得するに至った。対前年比の伸び率を見ても、三元系電池がわずか6%程度の伸びに対し、LFP電池はなんと60%近い伸びとなった。
 わずか数年前まで、多くの世界的企業が、レアメタルの価格は高くこそなれ、安くなることはないと認識し、競ってレアメタルの奪い合いをしていた時代が続いていたことが思い出される。
 一方、日本の多くの主要蓄電池メーカーは、日本の自動車メーカーがEVの航続距離を競っているため、いまだにエネルギー密度の高い三元系電池に、多額の投資や多くの人材を投入し続けているのが現状だ。

変化を嫌う日本企業の特徴

 ここに変化を嫌う日本企業の特徴が出ていると感じる。日本の半導体産業と同じようにならないことを祈るばかりだ。
 ところで、変化に対応した世界的企業が積極的に多額の建設投資を行っているのが、いまの建設市場だ。
 中国の世界的な蓄電池メーカーCATL(寧徳時代新能源科技)は、1兆円を投じて、ドイツに東京ドーム50個分の新たな大型蓄電池工場の建設に着手した。
 半導体の分野では、世界最大のファウンドリー(半導体の受託生産)企業であるTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)が、2兆円とも言われる第二工場の建設計画も進むと聞く。

建設市場のダイナミックな変化

 これら建設市場のダイナミックな変化に対し、建設業界として、一品生産、手作業の良さも残しながらも、より一層のロボット活用やAI、ITを活用した生産・管理方法の導入により、これまでにない画期的な工期短縮や高い生産性、品質管理能力を生み出すような独自の建築生産プロセスの構築が求められる。
 強いものではなく、環境の変化に対応したものが生き残るように、多くの日本の建設企業がガラパゴス化することなく、技術力を高め、世界で通用するダイナミックな企業として発展していく未来に期待したい。

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