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未来の建設業を考える:「建設業のビッグデータ活用」

各産業で進むビッグデータの活用

 「ビッグデータ」という言葉が流行っている。
 千葉市ではナビで得られる自動車の位置情報を分析することで交通事故の起きやすい交差点の改善を図ったり、埼玉県では本田技研と共同で車の膨大な走行データをリアルタイムに分析し、最速ルートを提案するシステムを構築したりするなど、自治体における「ビッグデータ」や自治体が持つ膨大なデータを利用した「オープンデータ」活用の取組みが始まっている。
 民間企業でも、カブドットコムではツイッター等のソーシャルメディアにおけるキーワードの発生頻度と株価動向の相関関係を分析し、株取引に応用する試みを行っているし、楽天では数千万人の会員の属性や購入履歴から、顧客特性に応じた広告等を配信し、購買率を数倍に上昇させることに成功している。
 海外の大学病院では新生児治療において一人一人の新生児のデータを収集し、平均データから成る基準モデルを構築し、最適な治療を行うなどの実績をあげている。

橋梁モニタリングシステム「BRIMOS」

 このような「ビッグデータ」の活用が広がる中で、東日本大震災において、首都高速の安全確保を確認したシステムをご存知だろうか?
 首都高の一部ではあるが、変位計、傾斜計、振動計、加速度計などのセンサーが首都高の橋梁部分に取り付けられており、橋梁モニタリングシステムBRIMOS」というシステムによって、地震後のセンサーが正常に働いたことで安全を確認し、円滑な避難誘導につなげたそうだ。これもビッグデータの活用の事例である。
 すでに平成24年2月に完成した「東京ゲートブリッジ」では、BRIMOSのような振動センサーを設置して橋の破損状況を逐次データとして把握することで維持管理につなげる活動を実施していたり、過積載の遠隔監視などに役立てたりしている。

インフラ部分におけるビッグデータ活用

 インフラ部分におけるビッグデータ活用については、まだ取組が始まったばかりであるが、笹子トンネルの天井崩落事故に見られるように橋梁やトンネル、上下水道と言った現況インフラの状況を把握することが早急に求められている。そのためには、公共投資の一環として全国すべての橋梁や高速道路へのセンサー設置を積極的に推進すべきである。
 建設プロジェクトにおいても、職人の動きをプロットすることで安全管理に応用したり、トラックの動きをシミュレーションしたりするなど、様々な形でビッグデータの活用方法が考えられる。ICTの活用により、現況を把握し投資効率や作業環境の改善につなげることが、今こそ求められている。インフラの老朽化対策、国の強靭化のために、ぜひとも、積極的な「ビッグデータ」の活用を政府として進めて欲しいものだ。

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