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次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その29「12.6. 一口 コラム 「AIは設計者を超えるか」

12.6.  一口 コラム 「AIは設計者を超えるか」

現在のAIの発達度合いがわかる米国の面白い事例を知った。インターネットの購入履歴をAIが判断し、ある女子高校生宛てにベビー服のカタログが届いた。それを見た父親が、「高校生に妊娠を進める気か」と怒りメーカーを訴えた話があった。女子高校生の購入パターンが「妊婦」のそれに類似していたため、AIが「妊婦」と勘違いしてカタログを送ったのがその真実だ。ところがその後、その高校生が本当に妊娠していることがわかり、AIの判断の方が父親よりも正しかったと言うオチがつくのだが。

このようにインターネット広告には、「行動ターゲッティング」と言って、インターネットの閲覧履歴や購入履歴から行動履歴を取得し、確実に興味・関心を抱いているユーザーに広告を配信する仕組みが構築されている。だれもが検索サイトやニュースサイトを見ていると、何回も同じような広告、例えばダイエット製品が繰り返しインターネット広告に出て来るなどの例は、この仕組みを活用したものだ。

一方で、医療分野におけるAIの進展は、人間が見過ごしていた病気を画像認識技術により発見するなど、急速にその役割の重要性が高まっている。白血病のタイプをIBMのワトソンが解析して、10分で患者を救った東大の事例など、医療におけるビッグデータ活用、電子カルテ、ICT遠隔診療などのインターネット活用は急速に進んでいる。

囲碁でも将棋でも、プロ棋士がAIに負ける時代がきている。AIの世界では、コンピューターの能力が人間を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が議論されている。

建築の分野でもAIの活用が始まっている。

グーグルから独立したFlux社は、AIによる自動設計システムの開発に成功している。構造も考慮した自動設計となっており、すぐにでもその設計図により施工できる。

鹿島のBIMを活用した自動施工計画立案システムも、AIが施工計画を立案し、迅速な施工計画策定、コスト算出につなげようというものだ。

将来は、AI自身の設計が、ディープラーニング(深層学習)などの活用により、建築関係の「賞」を獲得した過去の建築を学ぶうちに「シンギュラリティ」を超え、AIが本当に「賞」を取るようなことも考えられる。

このようなAI環境で人間に期待したいのは過去の蓄積の集大成にあるのではなく、世の中を動かすイノベーティブな設計の実現であり、ユーザーの曖昧な期待に応える建築プロセスを踏まえた設計であり、すべてが0(ゼロ)と1(イチ)でデジタル的に構築されるものではないと考える。あくまでツールとしてのAIであり、設計手法を変えつつも、本来の設計はクリエイティブな人間の建築設計であり続けてほしいものだ。


図 182 日本における媒体別広告費の推移(出典:平成27年版 情報通信白書(総務省))

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