未来の建設業を考える:「ホームドクターの確立を目指して」2011年2月21日
維持修繕工事の重みが高まっている
昨年末の国土交通省の建設工事施工統計によれば、日本の建設市場における維持修繕工事の割合は、90年度が14%、98年度が18%、08年度には25%と、年々増加し続けている。新設工事の減少が続く中で、維持修繕工事の重みが高まっている。海外の維持修繕市場は、イギリスが43%、フランスが46%、ドイツが53%と、およそ建設市場の半分が、維持修繕工事で占めるまでになっている。日本はまだ25%であるから、まだまだ成長の余地が大きな市場であると言えよう。
先の国土交通省の調査によれば、完工高500億円以上の企業の維持修繕工事額の割合が全体の15%であるのに対し、完工高1億円未満の企業では49%と大幅に高く、小さい企業ほど、維持修繕工事への依存が大きい現状が見て取れる。
悪徳リフォーム業者の問題
一方、維持修繕工事については、比較的参入が容易であることから、特に住宅等の改修で手抜き工事や耐震補強と称して不要な過剰工事を行うなど、悪徳リフォーム業者の問題も顕在化している。
英「カウボーイ・ビルダーズ」の問題
イギリスでは、こういった悪徳業者を「カウボーイ・ビルダーズ」と言って、社会問題化している。新聞やテレビ等でも、「カウボーイ・ビルダーズの見極め方」とか、「カウボーイ・ビルダーズを探せ」という番組で、床暖房の配管工事に来たけど、温水が通らないまま3年以上も放置された例など、この種の経験談は数多く報道されている。
むしろ、正当な業者に会うことが少ないような印象もあるような報道ぶりだ。
イギリスの商業組合の調査によれば、実に国民の半数以上が、カウボーイ・ビルダーズを誤って選定してしまうのではないかという不安を持っていると言う。これに対して政府は、施工業者をランク付けするなどしているが、参入業者も多く、なかなか機能していないようだ。
「ホームドクター」の確立へ
そこで、これらの悪徳リフォーム業者を排除するためにも、「ホームドクター」を維持修繕市場に確立させることを提案したい。
「ホームドクター」とは、欧米の医療の分野では一般的であるが、たとえば、イギリスでは自宅近くの医者の中から近所の評判などをもとに、かかりつけの医者を登録する制度を指す。これらの医者はひとまず何でもこなすことができるので、GP(General Practitioner(一般開業医))と呼ばれる。イギリスではいきなり大病院にかかることはできず、緊急の場合を除いて、必ずGPの紹介状が必要となっている。その意味で、GPは、信頼できる医療の相談相手というところだ。
これと同じ仕組みを建設市場でも確立できないか、というのが提案の趣旨である。
すでに維持修繕市場の多くを中小企業が担っていることもあり、より信頼のある市場とするために、地場の工務店や設計事務所を「ホームドクター」として登録することで、無料法律相談ではないが、信頼される相談相手となることはできないだろうか。
当然ながら、費用はすべてオープンプライスにして対応するとともに、「ホームドクター」の評価がホームページ等で簡単に比較できるような仕組みも必要であろう。まず手始めに、耐震改修の相談日を定期的に設けるなどの措置も考えられよう。良き建設(ホーム)の相談相手(ドクター)となるためにも。
いずれにしても、今後、更なる拡大が予想される維持修繕市場においても、建設産業の信頼がきちんと確保されるような取り組みが望まれるものである。
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