未来の建設業を考える:「欧米化VS日本化」
欧米人は「競争」好き、日本人は「協調」好き
歴史的に狩猟民族の欧米人は「競争」好きで、農耕民族の日本人は一緒に田を耕すように「協調」関係を大事にする民族だと言われている。
経済の分野ではこれまで欧米的な経済至上主義が主流で、規制緩和に基づく自由な「競争」こそが人類の繁栄につながると信じてきたところだ。しかしここに来て、極端な競争主義が良くないことは明らかになってきたと思う。むしろ、「競争」から「協調」へと動いているのが現状であろう。
建設業界も「競争」から「協調」へ
建設業界でも同じような動きが明確になってきている。
たとえば、パートナリング契約ということが英米で盛んに行われているが、そもそもパートナリング契約とは、日本の建設業や製造業で行われていた協調関係を学んだものである。英国では日本の建設産業を研究し、その成果としてレイサム卿によって、「コンストラクティング・ザ・チーム」が94年に報告され、これを契機にパートナリングが多くの建設プロジェクトで採用されてきている。
それまでの欧米の契約を前提にすれば、契約の穴を見つけ契約によりプロジェクトのクレームを行い、結果としてクレームした方がプロジェクト利益を獲得するようなことが行われてきた。確かに短期的な利益獲得にはつながるが、発注者も含めて本当に良いプロジェクトとなっているかと言えば、対立的な契約関係によりだれもが損を被るような結果となっていた。
戦略的パートナリング
それゆえ、日本的な協調関係、つまりパートナリング関係を構築することにより、プロジェクトとしての利益を全体で共有する方法が契約としてもプロジェクトマネジメント手法としても優れたものと、欧米の発注者やプロジェクト参加者から評価された結果が欧米における導入につながったものと思う。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)も、パートナリングの延長線にあり官民の協調関係を構築する仕組みである。今では、プロジェクト単位のパートナリングから、「戦略的パートナリング」と呼ばれる会社間におけるパートナリングの方が多くなるなど、組織間パートナーシップの関係を構築するようなこととなっている。英国ではパートナリング契約を取り入れることで、従来の敵対的な契約方式に比べて、30%のコスト削減や40%の工程短縮等、目に見える効果が出ていることが数多く報告されている。
日本の建設業界が築き上げた「協調関係」
一方で、日本は欧米追従とは言わないが、建設産業に吹き荒れている「競争」は行きすぎになっていないだろうか。本当に必要な品質を確保する努力のための競争は歓迎したいが、単純な価格競争は下請けへのしわ寄せにつながり、結果として日本の産業界全体を疲弊させることになるのではないだろうか。
それゆえ、米英が日本に学んだ協調関係を「パートナリング」と定義し直し、競争社会の欧米経済に取り入れた意味を、発注者も含めた日本の建設業界全体で学び直す時期に来ているのではなかろうか。
国際化に伴い日本の基準を欧米にすり合わせながらも、日本の建設業界が築き上げた「協調関係」に学び、各国の標準として国際社会を「日本化」する方法もあるのではなかろうか。