未来の建設業を考える:「中国建築の光と影」(2010月04年25日)
中国超高層ビルの火災
上海には、60m以上の高層ビルが5000棟以上あり、うち100棟は100mを超える超高層ビルが建っている。その上海で、先月(10年11月)、上海中心部の28階建て、教員向け高層住宅で大規模火災があり、100人以上の死傷者を出す痛ましい事故が発生した。原因は、無資格の溶接工による溶接火花が外壁改修用の資材に飛び火し出火、次々と工事用のネット等を伝わって高層階に燃え広がったもの。同時に、初期消火の遅れや高層建物の消火用の消防車が少ないなど、消火体制の不備が指摘されている。
前々から、コンクリート工事にぼろ布を混ぜたりしてごまかすような「おから工事」に見られるように、ずさんな工事や安全性に問題が多いとの意見があったが、はからずもそのことが証明された形となった。
「農民工」の問題
無資格の溶接工に見られるように、中国の建設現場では職人の質の問題が大きい。特に、2億人以上とも言われる「農民工」に問題があると言われている。農民工とは、農業戸籍を農村に残しながらも、主に非農業に従事するものを言い、主に建設業や製造業に従事している。ただし、低賃金かつ重労働という環境で、労災や医療保険などの適用もなく、単純作業を行っているのが現状。当然、資格等もなく仕事をしているため、仕事に対するモチベーションが低い。農民工の所得上昇のためには、建設に関する資格や技能レベルの向上に向けた取り組みが必要不可欠である。
1700人に1人が億万長者といわれる中国
ところで、低所得者の農民工が大勢いる一方、資産1000万元(約1億5000万円)以上のいわゆる億万長者が83万人、1700人に1人が億万長者といわれる中国。建設業界にも、景気が良い話が次々と出てきている。建設業界にも、景気が良い話が次々と出てきている。
超短工期の超高層プロジェクト
その一例として、中国のチャレンジ精神に敬意を払う建設プロジェクトの一例を紹介したい。15階建てのホテルをたった6日間で完成させるという超短工期、超合理化された建設プロジェクトが、中国湖南省の長沙市で建設された。なんと、基礎ができるまでに46時間、外壁などの外装、内装ができるまで90時間、すべての工事をわずか136時間で完成。その建設プロセスはYouTubeで、動画で確認できる。映像によると、一様、各種部材についても、実大試験を行った結果の採用をしており、正直、よく研究していると思う。単なる工期だけでなく、中身も研究されていて、鉄骨は従来の6分の1の重さ、気密性、防音性は従来の5倍、窓ガラスは従来の3倍の強度を保つプラスチック製。空気浄化システムもとりいれ、95%以上の浄化効率があり、排出される空気は取り入れた空気よりも20倍清潔とのこと。
どちらが本当の中国の建設業界を表しているのかは、わからない。しかし、品質、コスト、工期の建設三大要素に加え、安全を管理することが、建設プロジェクトを成功させる要因と言われているが、巨大中国市場においても、いかに工期や安全といった点でレベルの高い管理を行えるかが、やはり重要な課題である。
それらの課題について、日本の経験や法制度を持ち込む余地は大いにあるのではなかろうか。大きな中国建設市場が正しい方向に進むためにも。
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