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未来の建設業を考える:「設計品質・施工品質」

デザインされた学校は、子供たちの学習意欲をかきたてる

 「我々はすばらしいデザインが利益をもたらすことを知っている。デザインされた学校は、子供たちの学習意欲をかきたてる。良いデザインの病院は、患者に健全な肉体と精神を取り戻させる。デザインされた都市計画は、地域コミュニティを創造する。」これは、英国ブレア首相が、公共デザインに関する講演の中で言及した一節である。首相自ら、設計について強い関心を示し、良い設計が文化や都市の発展に不可欠であることを指摘していることに驚嘆する。

設計品質が重要視される英国では

 設計品質が重要視される英国では、DQI(デザイン・クオリティー・インジケーター)と呼ばれる評価手法を導入している。DQIは使い勝手、建物性能、環境へのインパクトなどの要素によって、設計を評価するもので、設計中、施工中、完成後など建築のプロダクトプロセス毎に評価可能な仕組みとなっている。これを導入することで、品質の目標が設定でき、「設計品質」と「施工品質」のそれぞれの目標が一致した状態で、建築生産を進めることができる。

一方、日本の建築産業では

 一方、日本の建築産業において、最近生じている竣工後の建築物の欠陥を目の当たりにしたとき、必ずしも理想的な「設計品質」と「施工品質」の関係になっていないのではないか、との疑問が生じる。これまでは、設計品質の低下を施工品質や施工能力でカバーしてきた。一方で、低い施工品質を高い設計品質や工事監理能力でカバーしてきたことも事実であろう。しかし、社会環境の変化もあり、それぞれの実施主体の中で責任と権限を明確化するあまり、チームとしての補完能力が著しく低下しているのが現実である。最適な品質を確保した建築物とするためには、製造プロセスにおける上下関係として生じる設計者、施工者の位置付けではなく、発注者、設計者、施工者それぞれが真のパートナーとして、モノづくりに参加できる組織の創造が必要不可欠である。

「設計品質」と「製造品質」のコラボレーション

 製造業では、設計と製造をコンカレントに進めることで、製造コストを考えた設計としたり、大胆な設計を実現するための製造方法を編み出したり、「設計品質」と「製造品質」のコラボレーションと、製品のプロダクトプロセス全般に責任を持つプロジェクト・マネジャーの導入により、イノベイティブで高い品質の製品を生み出すことに成功している。

プロジェクト・マネジャーの導入

 建築産業においても、顧客に対して信頼性の高い建築物を供給することが、産業としての責任である。そのためには、品質を高めるための設計者、施工者それぞれの責任と協調により、「設計品質」と「施工品質」の融合を図ることが必要である。さらに、プロダクトプロセス全般に責任を持つ者を明確化したうえで、生産物としての建築物の品質を向上させることが重要である。

建築物やデザインの重要性

 品質の向上を通じて、近い将来、建築物やデザインの重要性を強く感じる日本国首相の存在につながることに期待したい。

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