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未来の建設業を考える:「IT革命の本質」

「デジタルネイティブ世代」の今どきの新入社員、パソコンが使えない

 80年代半ば、新入社員が「新人類」と言われた時代があったが、「デジタルネイティブ世代」の今どきの新入社員、パソコンが使えないらしい、と言うと驚く読者も多いと思うが、今年入った社員の一例だ。
 正確にはキーボードを使ってデータ入力した経験がないのだ。今どきの学生、パソコンではなくスマホで文章を作成するらしい。スマホの「フリック入力(携帯の画面上で指をすばやく動かすことで、上下左右クリックしながら入力する方式)」で、対応しているとのこと。
 スマホの方が自動変換で文章を作成できるし、また、必要な情報を簡単にコピー&ペーストすればすぐに文書もできるので、数千字のレポート程度であれば、スマホで作成する方が楽だとの意見。卒論もスマホというツワモノもいるとのこと。
 彼らデジタル世代、生まれてからスマホしか使ったことがない者も多い。したがって、会社に入って初めてキーボードを使う若者もいるらしく、指一本の入力で時間もかかるので、パソコンが使えないとのこと。

一方、団塊の世代

 一方、団塊の世代、フリック入力はできなくても、ワープロ、パソコン、ポケベル、スマホまで使える。当然、パソコンにも対応できる。
 ITが大きく変化する時代とともに生きた世代は、やはり強い。
 ダーウィンの言う変化に強いものが生き残る「適者生存」が当てはまるのであれば、意外にも、ITが進んだ今の若者よりも、団塊の世代の方がずっとIT進化に対応できる「ITデジタル適者」と言えよう。

ITの進化と共に、設計ツールも大きく変化

 ITの進化と共に、設計ツールも大きく変化している。
 設計も烏口(からすぐち)を使って図面作成し、T定規と計算尺の世界からCADになり、今やBIMの時代と言われる。手書き時代であれば、設計者がデザイン上重視する場所を太く強調することで、設計者の意図が施工者に伝わると教えられたが、CADやBIMに変わったことで、形態や見えがかり重視になり、本来、大切にすべき線が見えなくなり、設計の意図が伝わらなくなったとの意見もある。

手書き時代を知った設計者とCADしか知らない設計者の差

 一方で、当然ながら、もう手書きに戻ることもできない。しかし、手書き時代を知った設計者とCADしか知らない設計者には、デザインの考え方が大きく違うのではないか。
 手書き時代、トレーシングペーパーを赤ペンで修正され、書き直した経験を持っている人であれば、設計図の大切さ、設計することの難しさを理解しているであろう。
 簡単にクリックすれば瞬時にスパン調整ができる今の時代とは大きく異なる。今の方が合理的である面もあるが、本当の納まりやスケール感を知らずに、あるいはブラックボックス化したパーツの組合せのまま設計することには、大いに議論がある。ものづくりの具体的なイメージが、設計者には必要であろう。
 設計でも、手書き時代とCAD、BIMを知る団塊の世代は、強いと思う。
 BIM普及を考える多くの研究者は、BIMによって施工段階を考慮した設計がより進むと予測する。
 設計者には、今よりも、さらにものづくりの知識が必要な時代になるはず。

スカイラインを開発した櫻井眞一郎氏

 スカイラインを開発した櫻井眞一郎氏は、「設計図面はその各部品の金型を作る担当者の誰もがわかりやすいように、魂を入れて線を引け」と言い続けたらしい。
 魂が入った若い設計者を育てるためには、再度、IT適者の団塊の世代の皆さんの力が、今こそ必要なのではないか。

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