
未来の建設業を考える:「縮退都市の活性化」
日本人口の減少・縮退傾向
2008年以降、日本の人口は減少し、2015年には世帯数も減少に転じることが予想されるなど、日本全体の縮退傾向が明らかになってきている。
それに伴い、総務省の最近の調査(2008年)によれば、空家率も1978年の7.6%から年々増加し、2008年には13.1%に達している。このままの傾向が続けば2040年には空家率が30%を超えるとの予測もある。ただし現実には世帯数減少により住宅需要も減少するので、ここまで増えないかもしれないが、ざっくり4軒に1軒が空き家となり、地域の衰退が進む可能性は高い。
社会インフラコストの増加
一般に空室率が30%を超えると社会インフラのコストが増加すると言われている。たとえば、下水の流水量が減少することで、これまで必要なかった下水管内部のクリーニングが必要となるなどの問題が生じるなど、社会インフラの効率性低下の問題に直面するなど、深刻な事態を迎えることとなる。
都市計画の分野では、これらを見越して早くからコンパクトシティ化が望まれているが、東独などの現況を見ると、必ずしもコンパクト化が自動的に進むのではなく、いわゆる「コールド・スポット(社会資本ネットワークの一部分が未利用・低利用になる現象)」が発生し、ところどころ空き地となるような「虫食い都市(Perforated City)」の問題を生じており、都市のスラム化の要因になっている。
道路などのインフラ維持が困難に
一方、社会インフラの面では国土交通省の調べによると、全国15.5万の道路橋のうち、寿命と言われる築50年は現在8%、これが10年後には26%(約4万カ所)にも達する。首都高でも2002年度以降に見つかった損傷累計26万件のうち、9万7000件が2009年度までに補修できておらず、抜本的な大改修のためには1兆円規模改修が必要と言われている。
求められる空き家解消
縮退都市を活性化する方法はいくつか検討されているが、やはり空き家を解消していくことが必要なのではないか。空き家解消には二つの方法がある。空き家を取り壊して更地にしてしまうこと、もうひとつは空き家を利用することだ。
全国の住宅総戸数は4950万戸あるが、そのうち耐震性なしの住宅が約1050万戸、全体の約2割、5軒に1軒は耐震化されていない住宅に住んでいる。
一般的な耐震工事では一時移転が必要となったり、居ぬきの工事となるためコストの負担が大きくなったりする傾向にある。
そこで、耐震改修に際して、空き家を活用することを考えてはどうだろうか。中古住宅の流通にもつながるし、建物の強靭性を高めることにもなる。
縮退都市の活性化
首都圏近接の都市では、公共建築物の縮減や別用途としての活用事例が出ているが、市町村合併等で生まれた地方都市ではインフラの維持にも苦心している現状がある。新築から維持改修への構造転換を大胆におこなうとともに、ぜひとも、縮退都市が活性化する方法を建設業界全体の課題として取り組んで欲しいものだ。