#1 不思議!虫茸!
虫から出ているキノコが見たい、と父と母に熱望したことから僕の探索が始まった。
幼少期に児童公園で倒木から生えているキノコに不思議な感覚を覚えたのをうっすらと覚えている。それは後に分かったことだが、サルノコシカケという硬いキノコであった。
それ以来僕はキノコの魅力にとりつかれ、毎日のようにキノコを探しに山に行ったものだ。「なんでキノコなんかねぇ」と父と母は周囲の人たちに話していたし、周囲の人たちも「キノコってあのキノコ?なんでぇ?」ちょっと変わった子供と思われたのかもしれない。
いつしかキノコの仲間である冬虫夏草を見つけたいという欲求に駆られていた。
当時、小学2年生だった僕は虫からキノコが生えるというありえないような奇妙な物に関心を持ったに違いない。
しかし、冬虫夏草を見つけることができるのは夢のまた夢であると思っていた。
初秋の頃、タマゴタケという真っ赤なキノコが群生している所に出くわし、毎年のようにきっとそこにはタマゴタケが生えるのだろうと家族で狙って行ってみた。小学2年生の秋だった。
タマゴタケ
タマゴタケはその年見られなかったが、他にキノコはないか、とうろついていると・・ビックリした、もしかしたら、いやまさか・・心が震えた。
真黒な針金がすぅっと伸び、その先にはそう、線香花火が終了間際の状態、鮮やかな朱色、手を伸ばしてみるとカメムシがついている!
これが冬虫夏草との初めての遭遇である。
キノコの図鑑を何度も何度も見ているうちに、いつか虫から生えている冬虫夏草を見てみたい、見つけてみたい、と思っていた。
カメムシタケとの出会いはまさに青天の霹靂であった。
カメムシタケ
冬虫夏草とは、冬虫夏草菌が生きている虫に寄生し、その虫を殺して虫の体内にある栄養分ですくすくと生長するという、何とも虫からすると残酷極まりない菌である。
しかしどんな虫でも寄生するではなく決まった種のものに寄生するという事が分かっている。
キノコの仲間である冬虫夏草は虫から発生する茸、虫茸である。
冬虫夏草菌が殺してしまった虫の事を宿主、又はホストと呼ぶ。
カメムシタケの宿主はカメムシの成虫、クサギカメムシやハサミツノカメムシ、ツマキヘリカメムシ等が多く、約四十種からの発生が知られている。
昆虫学者達はカメムシを探すには、カメムシタケを見つけろ、と言うらしいが、確かにその通りだろう。
各種林内地上に五月から十月に宿主が落葉に埋まった状態で発生。
最も普通に見られる種類の一つで頭部は鮮やかな色であるため発見も容易。特にイタドリ群落下では群生する。
僕の冬虫夏草LIFEはこのように始まった。
この冬虫夏草LIFEでは今にいたるまでの成長と様々な冬虫夏草との出会いを書いていこうと思う。
最後まで読んでくださったみなさんありがとうございました。
次回は、僕が人生で2番目に見つけたさらに不思議な冬虫夏草について書いていこうと思う。