創作サイト・コミュニティとしてのSCP財団(SCP-JP)解説
"SCP Foundation"、あるいは"SCP財団"について、ネットで活動しているみなさんは見聞きした経験が少なからずあると思う。ゆっくり解説やネットロアに興味のある人なら、解説記事や動画を通じてその世界観や成立経緯についてある程度知識をお持ちのことだと思われるし、動画投稿サイトやSNSでコメント欄をのぞき込む人なら、そこに「SCPじゃん」「収容違反」「アイテム番号: SCP-XXXXXXXX」といったクソリプがついている光景を飽きるほど見てきたはずだ。
まあしかし、「SCPって結局なんだよ」という疑問については、Wikipedia・ピクシブ百科事典・ニコニコ大百科・アニヲタWikiに解答を丸投げすることにし、サイトメンバーによる解説としてはケモノイさん(wikidot名: v vetman)の以下の記事に譲ることにする。
ここでは表題で明示するように、SCP財団日本語版サイト(SCP-JP)について、これからサイトで記事を書いてみたい・読んでみたいという人や中の人は何してるんだという疑問をお持ちの人に説明していきたいと思う。
シェアードワールドとSCP
SCP-JPについて説明する前に、シェアードワールドについて説明しておきたい。
シェアードワールドとは、複数の作家の作品群によって構成される架空の世界を指す。日本人になじみ深いもので言えば、スターウォーズはジョージ・ルーカス監督作品以外にも様々な作家作品によって世界観が構築されている。H・P・ラヴクラフトを起源とするクトゥルフ神話は様々な作家によって構築されているし、"クトゥルフ神話TRPG"はこれらの世界観をベースにした様々なシナリオが多数存在し、それぞれに影響しあっているだろう。アイドルマスターや東方Projectも一次創作を核に、二次創作作品が世界観を相互に拡張している。
SCP Foundationもシェアードワールドの一つであるが、これらのシェアードワールドとはいくつかの差異が存在する。
第一にSCP Foundationにおいては、"正史/Canon"は存在しない。Canonとは、日本語では"正典"を意味する。ここから転じて、英語圏の創作ファンコミュニティでは、公式設定/一次設定を「カノン」と呼んでいる。
先に紹介した作品群は元となる版権作品が存在し、スピンオフ作品やファンフィクションとは明確に"上下"が存在する。しかし、SCPFにおいては「公式」は存在しない。シェアードワールドの構築者であるサイトメンバーとその作品は全て並列なのだ。これには「カノンは存在しない」という定型文が存在する。
第二に作者のヘッドカノンの自由。ヘッドカノンとは、「元の公式作品で描かれてはいないが、ファンには信じられている『二次設定』」のことである。
日本で言えば、ねぎを振り回す初音ミク・やたらめったら語尾に"ぜ"をつける霧雨魔理沙・性格の黒い天海春香・くいしん坊の絆星あかりみたいなものである。これらはまだ普及した、あるいは部分的に公式に反映された設定ではあるが、「公式ではない」「基本設定ではない」などと多くの人に許容されない設定も数多くある。しかし「カノンは存在しない」SCPFでは、好きな設定を採用して記事を書くことができる。
第三に読者のヘッドカノンの自由。各読者は作品を読んで自由に自分なりの解釈をし、それをもとに自分のヘッドカノンを構築し、それを表明することが認められている。つまり"解釈違い"の存在が広く認められているのである。SCP-8900-EX『青い、青い空』の「元の世界の色が白黒だったのか、現在の我々には認識できない色だったのか」という議論には、著者の見解が存在するわけであるが、これを否定するのも自由である。
またサイト上では、自分のヘッドカノンに沿わない記事にマイナス評価をすることも認められており、オブジェクトクラス・セキュリティクリアランス・機動部隊や研究員の存在など多数の読者のヘッドカノンで共通する設定にそぐわない記事が、後述するVoteに基づく低評価削除によって削除されることで、シェアードワールドとしてのまとまりを維持しているわけである。まあ、面白さでぶちのめすことも可能であるが、往々にしてそういった記事は読者が躓くような点を、適当な背景・描写でカバーするのが上手いわけで、こうしてSCPFの世界観は拡張されてきた。
SCPのジャンル
実は"SCPFは怪奇創作である"という説明は、現在では適切ではない。
4chanの /x/ (超常現象板)を発祥とし、クリスピーパスタの系譜に当たるSCPFという世界観は、現在に至るまで拡張を続ける過程で、ホラー以外のものを多く取りこんできた。まず、SCP Foundationという設定がもとより持っていたサイエンス・フィクションのエッセンスが取りこまれ、様々な作者と読者を取りこんだ結果、SCPFは、「SCP財団が存在する架空世界」を共通項に著者の描きたいものを詰め込んだ宝箱になったのだ。そういう点では総合創作ともいえるだろう。
全部ある。架空史もあるし、ポリティカル・フィクションもある。だがそれでもなお、SCPFのコアはホラーとSFであり、定期的に回帰しているし、多くの読者の共通の嗜好でもある。
たまに「昔の方が良かった」という読者をみるが、このようにSCPFは、変容によって読者と世界観(及び書く余地や著者層)を拡張し、流行も流動させてきたわけで、これにはこれでメリットがあったわけである。
「EN(本家)の方が云々、JPは[罵倒語省略]」という読者については、ENで奮わない記事がJPで伸びたり、JPでそこそこ人気なカノンがENでは受け入れられなかったりする事象はあるとはいえ、翻訳文特有の質感への個々人の好みや、訳者が翻訳すると選択した時点でかなり品質が保証されているという点を勘案して頂きたいというのと、上のようなジャンルの「無節操」な拡大は、先人であるENの方が一歩先を行っていることを申し上げておきたい。
なお、後述するが「CC BY-SA 3.0」または「CC BY-SA 4.0」に適合しない作品はサイトには投稿できない。適切な手順に則った引用やパロディは可能であっても、版権作品とのクロス2次創作の投稿は不可能である。2ちゃんねるやPixivで楽しんでほしい。
Voteに基づく低評価削除とディスカッション
新人が心配しがちなのが、Voteに基づく低評価削除とディスカッションだ。
サイトメンバーは記事に対してUp Vote(+1)あるいはDown Vote(-1)をする権利を持つ。削除のガイドラインに基づき、合計で-3以下になった上で、削除通知から72時間の間その状態を継続するとその記事は削除される。ディスカッションとはページ毎に設けられるディスカッションページにおいて、記事に対する意見を表明できることを指す。面白かったと具体的な感想を述べることも出来るし、自分がDVを入れた理由を著者に伝えることで改稿や次作の糧にしてもらえるのである。
これらはSCP-JPという創作コミュニティとしては非常に大事なプロセスである。Voteによる低評価削除と批評はサイト全体のクオリティを一定以上に保ち続け、継続的な改善に寄与しているのだから。
しかし正直なところ、低評価削除や評価の悪い自記事のディスカッションに目を通すことは心理的に負担がかかるものでもある。SCP-JPを貴方の創作の場とするには向き不向きがあり、他の小説投稿サイトとは比較検討・取捨選択すべき点でもある。
これら反応に心ないものを危惧する人も少なくない。しかし、Voteポリシーや批評に関するポリシーにおいては、著者や記事の内容以外に基づくVoteに対する制限があり、助けとなる内容を含み無作法をせず開かれた精神でコメントをすることを要求されている以上、それを心配する必要はない。サイトルールにおいても攻撃的な行動・態度・個人攻撃・煽り行為は禁止されており、もしこれを逸脱していることがあれば、スタッフからの注意が飛んできて、目に余るようであればスタッフの合議の下で警告・BANなどの処分が下される。
要は、記事に対する批評を、貴方自身に対する批評・批判ではないと割り切っていられるか否か、繰り返し挑戦できるか否かが、SCP-JPが創作者としてのあなたに適したサイトであるか判断できる点なのだ。
実際、著者の多くは最初の数記事を低評価削除された経験がある。かくいう私も、心が砕かれかけた。その反面初めて記事が生き残った時の喜びはえもいわれぬものであり、次の作品を出す原動力になった。勿論、処女作で高評価を叩き出すひともいないわけではないが、こういう時はかなりのプレッシャーがあり、その後の作品が処女作の評価を超えられないと、「処女作の壁」が心の中に立ちはだかってくる。処女作が生き残るか否かは、一長一短でもある。
批評
批評もSCP-JPのクオリティコントロールと新人の補助を担っている。
批評とは、投稿前に他のサイトメンバーに、その作品の良い点と悪い点を指摘してもらうプロセスのことである。SCP-JPではSCP-JPサンドボックスⅢにてそれが行われる(同サイトは下書き用サイトでもある)。初心者はこの批評を通すことで、ここが面白かったという意見を得たり、誤字脱字がある・文意が取りがたい・矛盾しているといった瑕疵を修正することができたり、練りこみが足りない、面白いと感じる点が薄いといった指摘を得ることができる。
なお、批評においても心ないものを危惧する人が少なくないが、攻撃的なものはサイトルールで禁止されているため、先述したように記事に対する批評を、貴方自身に対する批評・批判ではないと割り切っていられるか否かが、肝要だ。また、批評を行うのはあくまでアマチュアであること、そして作品の執筆は執筆者に委ねられていることを考えると、批評はあくまでも執筆者が自身の作品を投稿してもよいという納得を得たり、踏ん切りをつけるためのプロセスであることも忘れてはならないだろう。
さて批評を貰えばいいとはいうものの、批評で満足のいく意見が得られないこともある。サイトメンバーも増えたので、批評者のなり手も不足しつつあるのは事実である。こういう時多くのサイトメンバーは、TwitterやDiscordを活用して批評を募集するだとか、フォロイー・フォロワーに批評を頼むといった選択肢をフル活用していく。
エッセイ
エッセイはSCP-JPに投稿される記事ジャンルの一つであり、エッセイには様々なサイトへの貢献を得意とするサイトメンバーによるハウツーが含まれている。その中には執筆を対象にしたエッセイも数多く投稿・翻訳されており、執筆や改稿をする際の方針を定めることにも役立ってくれるだろう。勿論先に読んでおき、消化することができれば執筆の大きな助けになるので、余裕があれば各種エッセイの読破を勧める。
またエッセイには執筆以外にもコーディング、アートワーク、議論、モデレーションなどの言及したものも存在しており、これらはSCP-JPでサイトメンバーとして活躍していく際の多彩な道を示してくれる。エッセイを書く側に回る人々が増えることを私は心待ちにしている。
投稿フォーマット
SCP財団には様々な形式の文芸作品が存在する。大まかにはSCP/オブジェクト報告書・Tale・GoIフォーマット・アートワークである。
新人の多くは報告書の作成を目標としているわけだが、実は人には得意なフォーマットが存在している。知り合いに言わせれば、「SCPは書くことや型が決まっているからこそ、書きやすい」らしいが、その逆もあるわけである。そういうわけで私はSCPの下書きをぶん投げ、Tale・GoIF著者になった。
SCPが書けないときは他の形式も検討して欲しい。書けるものを見つけられることは自信になる。あとでチャレンジしてもいいのだ。
・SCP/オブジェクト報告書
オブジェクト報告書はSCP財団の最大の特徴である。「アイテム番号: SCP-XXXX」から始まり、財団が収容する異常物体の性質やこれまでの経緯などが、報告の形式で語られる物語文だ。
なお、最近は「アイテム番号: SCP-XXXX」から始まっているものの、会話や手記・手紙で物語を進行させる記事も存在する。"Tale的なSCP"だ。大抵は大長編であるため、参考にすることは容易ではない。
・Tale
Taleは概ね普通の短編小説だ。特に決まったフォーマットはない。Tale投稿ガイドに言わせれば「Taleは自由!」なので、ジャンルも形式も様々である。
愚直に活字で勝負するもよし、報告書フォーマット等を混ぜ込んでもよし、演出やイラストを入れることも可能だ。ニュース記事やネット掲示板、Twitterを模した記事もある。
・GoIフォーマット(GoIが分からないなら飛ばすべし)
GoIフォーマットは、要注意団体の作成物の形式をとった作品。
設定として、要注意団体とは異常物体に関連する集団として、"財団"の監視対象となっている存在である。世界オカルト連合であれば、異常物体の追跡・破壊・交戦・監視記録があり、プロメテウス・ラボであれば、新技術の開発に際する申請書、マーシャル・カーター&ダーク株式会社であれば、商品の入手経路や販売状況の記録がある。
GoIFの作成には、当該要注意団体に対するかなりの知識が必要とされ、なかなか取りつきづらい形式ではある反面、それを有する場合は"書き上げること自体は"難しくないと私は認識している。
・アートワーク
アートワークは、イラスト・音声・動画といった作品である。大半はイラスト。
なお、アートワークの投稿環境が整えられたのは近年であり、制度・文化面においては未発達である。悪質な「批評者」やネットストーカーなどに対抗してきた過程で、批判・批評をひっくるめて(個々の線引きは恣意的・曖昧になりがち故仕方ないが)、これらをあまり許容しない日本のイラストレーター文化の性質と、Voteによる作品削除文化はなじみがたい。とはいえ、サイトメンバー側にイラストのシビアな批評基準などは小説と違ってないので、評価がUVやNVによって消されづらいことは告白しておく(Twitterのrkgkの殆どはステキだとみんな思ってるだろう、そういうことだ)。
それと周知の事実だが、物書きはファンアートを書かれるとメチャクチャ喜ぶ。そしてSCP-JPへの投稿は本人の目につきやすい。
・翻訳記事
翻訳記事は、日本語版以外のSCP Foundationサイトの作品を日本語に訳した記事である。SCP-JPになくてはならないジャンルだ。
現在SCP Foundation国際コミュニティは、公式支部だけで13言語圏に渡る巨大コミュニティである。ここから生まれる記事たちを翻訳し、またクロスリンクし合うことでSCPFの世界観は拡大されてきた。正直なところ、翻訳及び利用は"EN/本家→各言語支部"が主流で、ENに各支部の設定が持ち込まれることは稀だが、日本の事例としては大日本帝国異常事例調査局などに、日本発の要素である要注意団体"蒐集院"が取り入れられている。最近はCN(中国語)・KO(韓国語)・ZH-TR(中国語繁体字)との交流も盛んだ。
翻訳を目的に活動している人も多く、また彼らの場合は、いざ自分で記事を書く際に、多数の記事を訳した経験を生かすことができるというのは利点である。
Wikidot構文
SCP-JPのホストサイトであるWikidotには、"Wikidot構文"と通称される、演出機能が存在する。
ハーメルンにも色付きテキストやテキストサイズの拡大、画像配置といったCSSを活用した機能(特殊タグ)があるが、Wikidotのものはさらに自由度の高いものとなっている。CSSやHTML、SVGを活用すれば、文字の修飾に留まらず、ページテーマやフォントの変更やインターネットサービスのデザインの再現、動くイラストなど多彩な表現が可能だ。以下にいくつかの事例を用意した。
これらはちょっと極端な事例なので、もっと応用可能な事例が見たいというのであれば、WikidotシンタックスやSCPスタイルリソースを参考にしてほしい。またSCP-JPの周辺コミュニティには「構文勢」と呼ばれる、構文の開発・改造を趣味とするサイトメンバーも数多くいる。彼らの手を借りるのも一つの選択肢であるが、あくまで趣味であること、彼らも友人を選べることは念頭に置いておいて欲しい。
著作権とライセンス
SCP-JPでは作品投稿に際して、CC BY-SA 3.0またはCC BY-SA 4.0という特殊なライセンスを使用している。ここでは簡単な解説にとどめるため、SCPを使った創作をする際はSCP-JPのライセンスガイドと画像利用ポリシー、(そして出来ればクリエイティブ・コモンズジャパンの公式サイト)を必ず読んで欲しい。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)の利点は、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で自由に再配布やリミックスなどをすることができることだ。
またサイト・著者とライセンス整備者を分離することで、創作者はライセンスの恣意的な運用による表現の制限を心配せずに済むとともに、自分の作品に対する利用許諾を逐一出す手間を省くことで、ただただ自分の作品のn次創作が出るのを楽しむことができる。
(なお、ホストサイトであるWikidotの規約上、SCP財団のサイトには、露骨な性的表現を伴うコンテンツの投稿は制限されている)
SCP-JPに投稿される作品は、CC BY-SA 3.0(あるいは4.0)で公開される。CC BY-SA(表示-継承)では、同ライセンスを付与された作成物を自由に複製・再配布可能で、営利非営利に関わらずリミックスや改変、他の作品に利用することが可能になる代わりに、同作成物を利用する際は作成者等の適切なクレジットを表示し(表示)、同作成物を利用して新たな作品を作った際は、利用者の貢献部分を含めて同じライセンスで公開しなければならない(継承)。
そのため、(先の繰り返しにはなるが)創作者はSCP-JPに作品を投稿する時に、ライセンスに従う限りはSCP-JPに投稿されている他の作品の要素を自由に使用できるし、逐一著者に利用許可を取る必要はない。ときたま、"元記事の著者に許可を取った方がいいのではないでしょうか"という質問はあるが、アドバイスや感想を受け取られるかもしれないという利点はあるので、報告はして損はないというだけの話である。
そして最も重要なことは外部のコンテンツを挿絵等に利用する際はCC BY-SA 3.0(あるいは4.0)に適合する規約で公開されているものでないといけない(引用を除く)ということである。世の中には"フリー"と称するメディアが多数存在するが、これらの多くはCC BY-SA 3.0には適合しない。写真AC、いらすとや、ぱくたそ、全て利用規約を照らし合わせればNGである。適合するメディアを探す際はCCSearchやWikimedia Commonsを利用すると良いだろう。また同じCCLの場合は以下の表を参考にしてほしい(元画像が小さいのでぼやけてしまった)。
なお、CC BY-SA 3.0で公開された創作物は先述した通り、ライセンスに従う限り自由に利用することが可能になるので、作品を利用・活用した利益は、利用者が何らかの便宜を図ることがない限り、一切創作者に還元されない。
要はCCLは、著作権や金銭的な問題に縛られずに創作活動を容易に行える環境を整備することで、クリエイティブな活動を活発化させることを目的としたライセンスなのである。もしあなたが、印税でウハウハ見たいなことを考えているのであれば、SCPFは不向きであるだろうし、あるいは修練場として割り切って使うのがいいだろう。
あなたの嗜好と「SCP財団」
さて、ここまで創作サイト・コミュニティとしてのSCP財団について解説してきて興味をもった物書きさんもいることだろう。あるいはこのnoteを開いている以上、SCP財団のファンで、執筆に挑戦したいという人も多いだろう。
ここで注意しておきたいのは、評価の高い記事は読み物として最高に面白いだけで、あなたの執筆の参考にはならないということである。ここでいう「評価の高い記事」というのは、ウィキ上にある「評価の高い記事」ページの上部にある記事であったり、ネットでネットミームとしての市民権をある程度得た記事をひっくるめたものである。
評価の高い記事は、往々にして現在の流行から大昔にいる「古典」であったり、記事の面白さの大半がアイデアで占められている複雑でない(読解負荷が軽い)記事であったり、そもそも唯一無二の何かを持っている記事だ。
こうした記事を「面白い」の基準として執筆を行うということは、既にその記事を生み出すために散々掘り返された場所で、現在の流行に沿う、あるいは傍流なれど確かな存在感をみせるアイデアを見つけ、創作を行うという相当の苦行を強いられる。古典フォロワーが高評価を得る例(ex: 怪奇部門)は確かにあるけれども、これを初心者が狙って興すというのはあまりにも険しい道のりだ。
では何を読む・手本とすべきか。私としては、最近のコンテスト参加作品の「佳作」を手本とすることをおすすめする。
繰り返しになるが、とびぬけて評価の良い作品というものは、唯一無二とまではいかなくともその作品にしか適用できないような何か(アイデアなど)を持ち合わせている。これを真似しようというのは土台無理な話だが、一方で佳作ならば参考にすることが可能な要素がまだ見えてくるものだからだ。
あるいは、カノン・連作といった既存のシリーズの中に参入することも一つの手である。
カノン・連作とは、分かりやすく言えば「スピンオフシリーズ」である。特殊な、あるいは一部の作品のみで共有されている設定を基に構築された作品の集合体/世界観である(版権もので言えば、別視点での世界の描き出しから、学園ものや日常ものへのリメイクまで幅広い)。一般的にカノンは新たな執筆者を条件なしに受け入れており、シリーズの場合は設置者の希望によっている。
カノン・連作には、ほかの記事には見られない独自の特色がある。カノン・シリーズの独自性は流行に左右されずらいし(半面読者も限られる)、あなたの趣味嗜好にあったテーマであれば、参考作品を読み漁るのも苦にならないし筆も進むというものだ。また、JP発祥のカノンで識者が活動中であれば他の執筆者からの支援を受けやすいのも魅力である。
おわりに
さて、ここまで創作サイト・コミュニティとしての「SCP財団」を紹介してきた。このnoteは「なぜSCP-JPは筆者にとって過ごしやすい場所であるか」を創作コミュニティとしての側面から再確認するという裏テーマがあったが、SCPの裏にはそれをかいている人々がいて、彼らが創作コミュニティを形成して活動していることが実感を伴って読者に伝わっていると幸いである。
ボランティアとしてスタッフ(モデレーター)の活動をしている以上、その活動を紹介したい節もあるが、それはまたの機会とする。